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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
爆速出世街道!蛮族を屠り、陰謀を砕き、巨人の王に認められるまで
3/80

王都からの使者。ただの怪力娘が、世界に見出される瞬間

 騎士カミーユは北方辺境のクリン村を治める領主である。


 十を数える前には戰場に出て、蛮族の首を持ち帰る。早熟の戦士であった。


 それから数年、日々、神に祈りを捧げ、蛮族を討伐する日々を過ごし、実績を積み重ねた。


 先ごろ、カミーユが蛮族の族長を討ち取ったことで、彼らの反乱もほとんど起きなくなっていた。


 カミーユの体には隔世遺伝で現れた竜の血が流れている。


 その血から汲み上げた魔力によって、驚異的な筋力や、刃も通さぬ皮膚、人知を超えた五感、熱と火を扱う力。

 それと、その力を他者に分け与えることで、傷を癒やすこともできた。


 そんなカミーユの元、クリン村に、使いの者が現れたのは、カミーユが十六才の誕生日を迎えた、雪が溶け始める春先のことだった。


 カミーユの小さな館の前には、立派な馬と、典雅な礼服を着た使者が立っている。


 騎士カミーユの従者の少女、フローラが応対する。


 フローラは、自らの茶色の癖毛を撫でつけながら、扉を開けた。

「あの、どちら様でしょうか」

 眼の前の見事な装飾の服を見て、フローラは恐る恐る尋ねる。


「偉大なる王、ゲオルグ・アレクセイ・プラソール陛下の御心を伝える者である。騎士カミーユはおられるか」

 慇懃な使者の言葉が周囲に響いた。


「はい。います。おります。い、今呼びますので、どうぞこちらへ」

 フローラは慌てて使者を応接室に招き入れ、暖炉の火が消えていないことを確認すると、主人であるカミーユを呼びに、裏庭へ走った。


 ビュウ、ビュウと、フローラの耳に風を切る音がフローラに聞こえる。

 カミーユがすぐ側に居ることを感じたフローラは、胸をなでおろし、裏庭にでる。


 主人、騎士カミーユは庭で日課の素振りを行っていた。

 手に握るのは鉄塊のような鍛錬用の大剣。


 以前、フローラが庭にあるその鉄塊を持ち上げようとしたとき、それはびくともしなかった。


「何用ですフローラ。少し落ち着きなさい」

 カミーユは、右手に持つ鉄塊を地面に置く。


 ズシンと、地面が揺れ、庭木の残雪が枝からドサリと落ちた。


「こ、国王様の御使者が、カミーユ様を尋ねていらっしゃっています」

 カミーユは掛けていた手拭いで汗を拭き、思いを巡らせる。


 はて、国王陛下が辺境の騎士に何のようであろうかと。


 フローラは、何度見ても見飽きない、立派な主人の姿に見惚れていた。

 それに比べ、カミーユと同い年である、自身の姿をかえりみて、気落ちしてしまう。


「分かりました。私は着替えて向かいます。フローラ、あなたはお茶をお出ししなさい」

「はい、かしこまりました」

 主人の言葉を聞き、フローラは駆け出した。


 カミーユは庭先に置く、水を溜めていた桶を頭から被り、汗を流した。


 ややあって、カミーユは男装の礼服に着替え、使者の待つ応接室へ入り、立礼をする。

「おまたせして、大変申し訳無い。私がカミーユです」


 使者も立ち上がり、手に持った巻物を広げる。

「騎士カミーユに偉大なる国王陛下のお言葉を告げる」

 カミーユは片膝をつき、頭を垂れた。


「過日の騎士カミーユの戦働き、誠に見事である。その武勇をもって、褒賞を与える。直ちに王宮へ出仕すること」

 使者は胸を張り、カミーユを見下ろす。


「もったいなき御言葉、深く感謝いたします」

 カミーユは頭を垂れたまま応えた。


「お言葉は以上である。直ちに準備し、出立されるがよかろう」

 使者はそう告げると、自身もまた、すぐに部屋を出て、馬に乗り、館を離れた。


「カミーユ様。王都へゆかれるのですか」

 フローラは落ち着かない様子で、主人に尋ねる。


「ええ、王都モスカウへ向かいます。私が留守の間はヘブナーに任せます。ヘブナーをここへ」

 カミーユは、自身の副官を呼ぶように、フローラに命じた。


「それと、フローラ、あなたは私に付いてきなさい。すぐに準備を」

 フローラは、主人の言葉に驚く。

「私を王都にですか。私は未だ礼法も身につかぬ。昧者でございます」


 そんな従者を見つめ、カミーユはあらためて命じる。

「従者フローラ。王都への旅路において、あなたに私の側使えを命じます。この経験でより多くを学び、成長しなさい」

 フローラは膝を立てて頭を垂れ、主人の命を受け入れる。


「はい。必ずやお勤めを果たしてみせます」

 フローラは緊張した様子で答えた。

 しかし、その内心は、主人に付いて行けると思い、幸せであった。


 こうして、騎士カミーユと従者フローラは、王都モスカウに向かう事となった。


 そこに恐ろしい陰謀が渦巻くことを、まだ二人は知ることはなかった。

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