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剣と竜の世界に生まれて 〜田舎村の怪力娘。強すぎて戦場で武勲を挙げまくる〜  作者: 林美鈴
爆速出世街道!蛮族を屠り、陰謀を砕き、巨人の王に認められるまで
27/80

試練の間。棚から切りとった一本の棒。武器を選ばぬカミーユ、百人戦士を棒切れで圧倒す

 カミーユが戦士ブルガに案内された部屋は、簡素で清潔なものだった。


 寝台と、書き物をするための椅子と机があり、水桶も窓も備えられている。


 しかし、当然のことながら、全てが巨人用の大きさである。


 カミーユは剣帯を外した後、背の高い寝台に飛び乗り、横たわった。


 部屋が高所にあるためか、涼しい風が吹く。


 瞳を閉じて、今日の出来事を思い出す。


 フローラたちは安全に休めているだろうか。

 そのように思いながら、カミーユは眠りについた。


 翌朝、カミーユは日が昇る前に目を覚ました。


 床の上に座り、自らの剣帯を脇に置き、瞑想する。


 しばし、自らと自らの外の世界を同一化させるように目を閉じる。


 部屋の外で足音がしたので、瞑想を終えた。


 剣帯を手繰り寄せ、身につける。

 髪は編み上げたままだったので、水桶の水で顔を洗い、朝の支度は簡単に済む。


「人間の騎士カミーユ。起きているか。食事の時間だ」

 戦士ブルガの声が聞こえる。


「起きています。戦士ブルガ。食事を用意していただけるのですね。ありがとうございます」


 カミーユは、頭上のドアノブを回し、戦士ブルガに相対する。


 巨人の戦士は、カミーユに、付いてくるように促す。


 廊下に出ると、動物の脂の焼ける良い匂いが漂ってくる。


 カミーユは戦士ブルガに付いて歩く。

 匂いのもとにどんどんと近づいている。


「ここだ。人間の騎士カミーユ」

 戦士ブルガは扉を開け、振り返る。


 部屋の中は食堂になっており、獣肉の焼ける良い匂いが押し寄せてきた。


 大勢の戦士たちが食卓に座り、肉を頬張っている。


 戦士ブルガはカミーユを席に案内する。


「ちょっと待っていてくれ」


 カミーユは用意された椅子が高く、そこに飛び乗る。


 その仕草が、我ながら少しはしたないように感じた。


 ブルガは片手に二枚の皿、片手にジョッキを持ち、人混みをかき分けながらカミーユの席にたどり着く。


「芋と肉とエールだ。人間は食べるか」


 すべてが多かった。


 人間であれば、一家族分はあるだろう。


「美味しそうです。ありがとうございます。あの、つかぬことをお尋ねしますが、戦士と、戦士ではない方で、食べる量に差はありますか」


 戦士ブルガは頭を捻る。

「確かに戦士はよく食べる。そうでない者の倍は食べる」


 カミーユの邸宅ではこれの四分の一ほどの量しか出していなかった。


 無理をさせてしまっただろうか。カミーユはエトナ姫に申し訳なく思う。


 次に会った時、謝罪しなければならない。


 カミーユはエトナ姫のことを思いながら、改めて食卓を見る。


 それはやはり高く、丁度カミーユの目線に天板が来ている。


 戦士ブルガに相談し、カミーユの席は、木材を付け加えて座席を高くしてもらった。


 周囲を見ると、どうやら、焼いた肉も蒸した芋も手づかみで食べるようだ。


 神に感謝を捧げた後、カミーユも骨のついた肉を掴み、噛みついた。


 それは思ったよりも柔らかく、口の中で脂が溶け、旨味が広がっていった。


 カミーユの食欲は高まり、骨だけを残して一本平らげてしまった。


 しかし、食卓にはこの肉がまだ、四十本は残っている。


 カミーユは気を取り直し、蒸した大きな芋を手に取り、かぶり付く。


 塩で薄く味付けされているようで、先程の肉の後味と良く合い、口の中でホクホクと踊った。


 カミーユはこれを食べたが、やはり皿の上には芋が四十個は残っている。


 続いてカミーユはエールの入ったジョッキを手に取る。


 小さめの樽ほどの大きさのジョッキは、その縁も分厚く、カミーユは大きく口を開け、エールを口に含んだ。


 麦の香りが口の中に広がり、パンの味を思い起こさせた。


 これもまた、大味ではあるが美味であった。


 カミーユは食事を続けた。


 皿の上の半分を食べたあたりで、流石に限界となり、戦士ブルガに食事を終えることを伝える。


 戦士ブルガはカミーユの少食を気にしたが、無理に勧めることはなかった。


 周囲の戦士たちもカミーユの少食を笑ったが、そこに悪意はなく、ただただ人間の騎士が珍しい様子だった。


 カミーユは、気持ちの良い戦士たちと良い食事を取れたことを、改めて神に感謝した。


 カミーユは部屋の隅の手桶で手と口元を洗い、戦士ブルガを見やる。


「戦士ブルガ、約束の戦いはいつ頃になりますか」


 戦士ブルガも食事を終え、カミーユの隣で手を洗っていた。


「そうだな。皆の食事が終わった頃になるだろう。人間の騎士カミーユ。一度部屋に戻るか」


 戦士ブルガはカミーユに尋ねる。カミーユは自らの意思を伝える。


「良ければ、戦いの場に行きたいと思います。案内してくださいますか」


 戦士ブルガは喜び答える。

「人間の騎士カミーユ。早くも戦いの顔になっているな」


 カミーユは自らの顔を手で触る。戦士たちの気に当てられてしまったのだろうか。


「付いてこい。案内する」


 戦士ブルガは食堂の扉を開け、廊下へ出た。カミーユもそれに続いた。


 廊下を暫く進むと、汗と血が香ってくる。


 通路の先には無骨な木の扉があった。

 扉の上には、試練の間と、巨人語で書かれていた。


「ここだ。人間の騎士カミーユ。ここで今日、お前は戦士と戦うこととなる」

 戦士ブルガは扉を開く。


 ここは大樹の中ではあったが、土が叩かれた床があり、巨人の戦士たちが十分に駆け回れる広さがあった。


 窓からは日が差し込み、明かりの柱が床と空気を照らしていた。

 壁際には大小様々な木剣が置かれていた。


 それらには、血汗で滑らないよう、鍔元に布が巻かれていた。

 ここは明らかに、戦士の為の場所であった。


「戦士ブルガ。ここで待たせてもらってもよろしいですか」

 カミーユは戦士ブルガを見上げた。


「構わんが、少し待つ事になるぞ」

 戦士ブルガはカミーユを見下ろし答えた。


「問題ありません。木剣を見せていただいてもよろしいですか」


 カミーユは試練の間の隅にある棚に掛けられた、木剣たちを指差す。


「構わないさ。じゃあ、俺は百人戦士を呼んでくる。ちょっと時間がかかるだろうが、待っていてくれ」


 そう言うと、戦士ブルガは歩み去った。


 カミーユはそれを見送ると、一礼して、試練の間に入る。


 試練の間の土間を踏むと、心身が引き締まる思いがした。


 カミーユは試練の間の隅に行き、棚の前に立ち、木剣を手に取る。


 巨人たちの為の剣であるため、皆太く、長い。

 握ることはできるが、手の内にしっくりとはしない。


 どうしたものかと思うが、これからの戦いに木剣を使うかどうかはわからないため、カミーユは木剣から手を離し、壁の前に座った。


 時間がありそうだったので、瞑想を行うことにしたのだ。


 一時間ほど瞑想を続けていると、試練の間に向かって、大勢の足音が向かって来た。


 カミーユは目を開け、そちらを見る。


 戦士ブルガと多くの巨人を引き連れて、一人の巨人が歩いてくる。


 カミーユは立ち上がり、その巨人に礼をする。


「騎士カミーユです。あなたが百人戦士の方でしょうか」


 巨人の戦士は、カミーユを見下ろし、尋ねる。


「お前が十人戦士なのか。歓迎を無傷で通り抜けたなど信じられぬな。奴らめ、酒にでも呑まれていたのではあるまいな」


 その言葉は、カミーユを嘲るものであった。


「もう一度問います。あなたが百人戦士の方でしょうか」


 巨人は煩わしそうに答える。


「そうだ。百人戦士グルド。人間、木剣を取れ、最もその矮小な体で持てる剣など、ここにはないかも知れぬがな」


 そう言うと、戦士グルドは辺りを震わせる声で笑った。


「わかりました。戦士ブルガ、申し訳ありませんが、あの棚をいただいてもよろしいでしょうか」


 武器棚を指差し、カミーユは戦士ブルガに頼む。


「構わないが、棚で戦うのか」

 戦士ブルガは不思議そうにカミーユを見た。


「ありがとうございます。では、失礼いたします」


 カミーユは瞬く間に抜刀し、棚の柱の上下を断った。


 断たれた柱の長さはカミーユの片腕ほどの長さで、断面は丸く、カミーユの手によく収まった。


「私はこれでお相手いたします」


 戦士グルドはうってかわって、静かに怒りの声を発する。

 バラけた棚から、ひときわ長い木剣を手にする。


「人間よ。木剣で打たれたとて、死ぬことはある。墓石に刻むゆえ、改めて名を聞こう」


「カミーユ。騎士カミーユ。お相手いたします」


 カミーユの言葉が終わらぬうちに、戦士グルドは木剣を打ち下ろした。


 それは、得物の長さを活かし、カミーユの間合いのはるか外からのものであった。


 カミーユは右手に自作の木剣を持ったまま、左手に躱す。


 グルドの木剣はカミーユがいた空間を打ち抜くと思われた。


 その刹那、木剣が跳ね上がり、カミーユを追い、横薙ぎに振られた。


 戦士グルドの剣がカミーユをとらえ、跳ね飛ばした。


 人間は打ち据えられ、戦士グルドが勝利を宣言する。

 周囲の戦士は誰もがそう思った。


 しかし、カミーユは空中で体勢を整え、着地した。


 足元はしっかりとしており、木剣のダメージは感じられなかった。


 戦士グルドの木剣がカミーユを打つ瞬間、カミーユは跳躍し、木剣の衝撃を受け流したのだ。


 戦士グルドは着地したカミーユに向き直り、構えを取った。


 木剣を持った利き腕を前にし、剣をやや下方に向ける。


 ある巨人が呟く。グルドのやつ、本気になりやがったぞ。


「無礼を詫びる。人間の騎士カミーユ。全力をもって相手となろう」


「戦士グルド、よろしくお願いいたします」


 戦士と騎士は互いに視線を交わした。


 戦士グルドが動く。


 切っ先で鋭くカミーユを突き、間合いに入ることを許さない。


 カミーユの眼前に、幾度も突きが繰り出され、カミーユは頭を振ってこれを躱す。


 それは速さを重視した突きであり、カミーユに近づく隙を与えなかった。


 何度も繰り返される突きは、そのタイミングをカミーユに覚えさせる。


 カミーユは突きの伸び切った点をとらえ、自らの木剣で上方に打ち払う。


 そして、そのまま前方に踏み込んだ。


 戦士グルドはそれを狙っていた。


 後方の蹴り足を一気に突き出し、カミーユの胴に向かって蹴りを放ったのだ。


 カミーユは戦士グルドの殺気を読んでいた。

 剣士ローレンとの稽古のたまものである。


 カミーユは身を屈ませる。戦士グルドの足先が髪をかすめた。


 カミーユは先程の突きと同じように、戦士グルドの蹴り足を、膝裏から打ち上げた。


 バランスを失った戦士グルドの巨体が後方へ回転する。強かに背を打ち付ける戦士グルド。


 カミーユは倒れたグルドの頭部を両足で挟み、その鼻先に木剣を突きつける。


「まだ続けますか。戦士グルド」


「いや、俺の負けだ。人間の騎士カミーユ」


 こうして、カミーユは勝利し、巨人族の百人戦士の位を得た。

 次は、千人戦士との戦いとなる。

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