戦士の大樹。巨人軍への殴り込み。不意打ちすら素手で粉砕する怪力娘の勇姿
カミーユは王宮の大樹を離れた。
歩むカミーユの両側には巨人の衛兵が立ち、カミーユを先導している。
カミーユは巨大な豆の蔓の階段を飛び跳ねて降り、中空に伸びた豆の蔓の橋をわたる。
そして、幾つかの橋をわたり、二十分ほど歩いた頃。一つの大樹にたどり着いた。
その大樹には、小さな窓が幾つも設けられており、どうやら多数の小部屋を持つ大樹であるようだった。
「これは戦士の大樹と申します。ここに逗留いただきます。騎士カミーユ」
衛兵たちは大樹の中へカミーユを案内した。
カミーユは衛兵たちから不穏な気配を感じた。カミーユの身を案じているような。哀れむような気配だ。
「案内、ありがとうございます」
カミーユは二人の衛兵に礼を言う。
「私どもはここまでとなります。騎士カミーユのお部屋などは、中のものにお尋ねください」
そう言い残すと、衛兵たちは戦士の大樹の大きな門の前にカミーユを残し、去っていった。
カミーユは一人取り残され、戦士の大樹と呼ばれた木の、大きな門に触れる。
その門は当然巨人用に作られており、その高さはカミーユが見上げるほどであった。
「御免下さい。どなたかいらっしゃいませんか」
カミーユは門の前で声を張る。
暫し待つが、中から返事がある様子はなかった。
カミーユは仕方なく、門を開けることにした。
見たところ門にノブはなく、取っ手の吊り輪が付いたシンプルなもののようであった。
カミーユは頭上の吊り輪を掴み、手前に引いた。
重い。
カミーユが引いてみたところ、門は動かなかった。
カミーユは再度門を確認する。
やはりこの門は引く構造となっているとしか思えない。
カミーユは自らに流れる竜の血から魔力を汲み上げる。
全身に力が行き渡り、筋肉が隆起する。
そして、カミーユが門の吊り輪を引くと、門は擦れるように響く音を出して開いた。
門の中は薄暗くなっていた。
しかし、カミーユの目には明るく映った。
これは自らの竜の血に由来する生まれつきのものだ。
眼の前には、棍棒を持った四人の巨人たちが立っていた。
「新入りは人間か。珍しいが、それがどうした。ここでの立場を教えてやるぜ」
巨人たちはカミーユに向かい、棍棒で殴りかかってきた。
カミーユは神速をもって、中央の巨人に向かって踏み込んだ。
巨人の膝に触れるほどの距離まで接近し、急激にかがみ込む。
その勢いをもって脛を背で払う。
カミーユに躓いた巨人は前に倒れ込み、そこに残りの三人の棍棒が振り下ろされ、それらに打たれることとなった。
カミーユは続いて、残る三人の巨人のうち、左側のものの股の間を駆け抜ける。
駆け抜けざまに膝裏を手で打ち払い、巨人を後方に倒す。
巨人は後頭部を打ち、悶絶した。
カミーユは、残る二人の体勢が整うことを待つ気はなかった。
残る二人のうちの一方に駆け寄り、巨人の足の親指と人差指の間を踏みつけた。
急所を踏まれた巨人はかがみ込むが、カミーユの掌で顎を打ち上げられ、昏倒する。
最後に残った巨人に対して、カミーユは他の巨人が取り落とした棍棒を拾い、投げつけた。
回転しつつ側頭部に命中した棍棒は、巨人の意識を絶つ。
あたりには、倒れた巨人たちが放つうめき声のみが残った。
カミーユは落ちている棍棒を拾う。
「この襲撃を手筈したのはあなたですか」
カミーユは、柱の影にある心音をとらえ、巨人語で話す。
その言葉に応えて、柱の影の人物が歩み出る。
この者もまた、当然ながら巨人であった。
巨人はカミーユに向かって、両手の平を突き出しながら近づいてきた。
「待て待て待て。人間の戦士よ。お前の実力はわかった」
カミーユは拾っていた棍棒を足元に置き、答える。
「待ちましょう。私は人間の騎士カミーユ。あなたの名は」
「戦士ブルガ。今のはちょっとしたお遊びだ。新人の歓迎のようなものだ。許してくれよ」
戦士ブルガは、今まで見た巨人の中で、最も軟弱な態度でカミーユに謝罪した。
カミーユはこの戦士に対して怒る気になれず、詳しい事情を聞くことにした。
「わかりました。戦士ブルガ。まず、この大樹が何であるか教えて下さい」
カミーユは、戦士ブルガに歩み寄りながら尋ねた。許しはしたが、逃す気はなかった。
「わかった。話す。この大樹は戦士の大樹だ。我々戦士はここで共に暮らし、互いに技を競い合う。競い合う中で、序列をつけることになる。強い順に、千人戦士、百人戦士、十人戦士、戦士だ。千人戦士は一人しかいない。俺の兄、ダノンだ」
カミーユは、戦士ブルガのよく回る舌に感心した。
「あなたは戦士ダノンの弟だったのですね。戦士ダノンには先ごろ助けていただきました」
戦士ブルガは額に手を置き喋る。
「兄の知り合いだったのか。道理で強いわけだ。人間の騎士カミーユ。歓迎を無傷でくぐり抜けたお前は、十人戦士を名乗れる。十人戦士となったお前は、百人戦士に挑むことになる。もしもそれにも勝てば、お前は百人戦士だ。そして、千人戦士である俺の兄ダノンに挑むことになる」
カミーユは、情報を整理する。
「つまり、私はまた戦う必要があるということでしょうか」
戦士ブルガは大きく頷く。
「その通りだ。もう夜が遅い、試練は明日行われることになるだろう。十人戦士には個室が与えられる。案内しよう」
こうして、カミーユは、戦士ブルガの案内で、戦士の大樹の個室へと案内された。




