勇者だった僕が現代で無双する話
5年前仲間たちと魔王を倒した。
すごい達成感だった。仲間たちと何十年も切磋琢磨し数々の魔法やスキルを獲得して倒した。
この世界は平和になった。
この5年間世界を統治しながらモヤモヤとした退屈を感じ一時は酒池肉林も経験した。
しかし晴れないこの気持ち。
気づけば俺も37歳だ。
ただこのまま死を待つだけなのか?
宇宙にあるブラックホールに身を投じてみるか、そうだ投じてみればいいと俺はある日魔法で身を固め宇宙にあるブラックホールを目指した。
そしてブラックホールは俺を飲み込んだーー
目を開けた。
俺は気を失っていたのか。
火が俺を包んでいる。
これは落下しているのかーー
ドーーン!!
ものすごい水しぶきと共に音が鳴る
海だ。
俺はブラックホールに吐き出され地球に戻されたのか??
とにかく陸地へ行こう。
転移魔法で故郷に帰ろうと魔法を発動するも同じ海へ戻ってくる。
成功だと思った。
一度見た故郷に転移できないはずがない。
できないとなるとここは異世界だ。
ブラックホールが異次元と続いているという説にかけ身を投じてみたがここはやはり異世界だ。
どんな世界だろうか胸を高鳴らせ、ドラゴンを召喚し背に乗る。
陸地だとにかく陸地を目指そう。
俺はしばらくドラゴンに乗っていた。
ドーーン!!
防御魔法になにかが当たり、後ろには2機の飛行物体。
なんだあれは猛スピードで小さい機械が飛んでいる。
魔法で解析をかけると乗っている人が話しているのが聞こえる
「攻撃効きません!まるでモジラです!!こんな生物が現代に存在するとは!!このまま行くと日本のpmz海域に入ります!!我々は撤退する!!」
どこかへ飛び去っていく飛行物体。
なんだあんな乗り物があるなんて意外と科学技術が発展している世界だ!!
俺はすこし怖くなりつつもワクワクが優っていることに気づく。
これだまだ見ぬ世界に飛び出していく気持ち。
陸地が見えたのでドラゴン召喚を解き飛行に切り替える。
さっきの飛行機に乗っていた人がドラゴンに怯えていたのを気にかけていた。
飛行を続けているとわずかに灯りがある村を見つけた。
ひとまずここで宿に入ろう。
この世界にも宿はあるだろうか。。
鉄橋に降りた俺は橋の真ん中で海を見つめる若い女性に声をかけた。
「あのーここらで宿はありますか??」
女性は俺を見てしばし無言だった。
やっと言葉を発した
「コスプレですか??」
俺はコスプレという言葉を知らなかったので聞いてみたが聞き流された。
「ホテルで良いのなら車で乗っけってっても良いけど」
車がわからなかったので聞いてみると実際に見せてくれた。
意外と小さいな馬もないのに動けるのか?どちらにせよこの鎧姿では乗れそうもない。
魔法で動きやすい格好に変えると女性は驚きの表情をみせ言った
「マジシャンの方??」
「マジシャンってなに??」
聞き返すと女性は無表情になりまたもや聞き流した。
不思議かな馬なしで動いた車は猛スピードで動いた
「私の名前はシャエールだ。君の名は??」
「知らない人に名前は言わないことにしてるの」
無表情で言った女性に対しすこし俺は悲しかった。もしかしたらこの世界は良い世界ではないのかもしれない。従属魔法で名前を聞きだし女性を好き放題する案も一瞬浮かんだが、ひとまず宿が先だ。
ーーーーここからチャトさんーーーーーー
車はしばらく海沿いの道を走り、小さな町の中心部に入った。
窓の外では、人々が小さな四角い石板を見つめながら歩いている。不思議な魔道具だ。通信水晶のように思えるが、より薄く、より強力な魔力を感じた。
「それ…なんていう道具?」
「スマホ。知らないの?」
「……スマホ?」
「……本当に田舎から来た人なんだね」
レイと名乗った女性は不審そうに笑ったが、次の瞬間、スマホが一斉に振動し、彼女の顔から笑みが消えた。
【緊急速報:日本全土で爆破コードに類似した信号を確認。スマートフォンの一部機種が遠隔起動式の爆薬に改造された可能性あり。至急、電源を切って避難してください】
周囲の人々が悲鳴を上げ、スマホを投げ捨てて逃げ出す。
中には震えながらスマホを抱え、涙を流す者もいた。
「どういうことだ…!?」
「やばい…まただ、またあの国から…」
レイは肩を震わせ、呟いた。「去年も、100人以上が…」
爆薬を…人々の持つ魔道具に仕込むなんて。そんな陰湿で卑劣な戦術があるのか。
「これはもう“戦争”だな」
俺は車のドアを開けて飛び降りる。空中で魔法陣を展開し、魔力を高める。
《魔導干渉結界》
俺の周囲に広がる見えない結界が、空間の微細な振動と信号の流れを捕らえた。
スマホから漏れる爆破コードの波長を検知し、逆位相の魔力をぶつけて消去していく。
数十秒後、爆破コードの波動は沈黙し、辺りは静まり返った。
「…止まったの?」
レイが言った。
「止めた。…この世界は、俺が守る」
彼女の目が一瞬潤み、俺を見つめた。
「あなた、ほんとに…マジシャンじゃないの?」
「いや、俺は勇者だよ」
「…なにそれ、ちょっとカッコいいじゃん」
俺――シャエールは、結界を解いた後もしばらく空を見上げていた。
この世界には、魔王はいないのに。
それでも人々は、恐怖に支配されていた。爆発する道具、嘘を流す箱、誰も信じられない社会。
「これが…俺が来た世界か」
鉄橋に戻ってきた。さっき、火花のように一瞬見えた命の灯火。
あのとき、あの場所に――。
彼女はまだ、そこにいた。
レイ。海を見つめ、身を投げようとしていた少女。
今はただ、座り込んで震えていた。
「……助かったの?」
「うん。もう大丈夫だよ」
「…なんで?」
「君が生きたいって、少しでも思ったからさ」
レイは、俺をまっすぐ見つめた。
さっきまでの無表情が、わずかに揺れていた。ほんの少し、心が戻ってきたようだった。
「あなた、さっき……何をしたの?」
「魔法を使った」
「……ふふ、そんなバカな」
「でも、助かったろ?」
俺は手を差し出した。彼女はしばらく黙って、それを握った。
手が冷たかった。けど、少しだけ震えが止まっていた。
「レイ。俺はシャエール。少し変わってるけど、ただの旅人さ」
「ただの……ね」
レイの口元がわずかに緩んだ。
「とりあえず、飯でも食おう。腹が減っては、世界も救えない」
「…それ、勇者っぽいセリフね」
「だろ?」
「ここが…“いざかや”? “やかた”に“酒”と書いて“いざかや”……読めん」
「ふつう読めないよ、それは」
レイは、俺の横で小さく笑った。
俺たちは、橋のそばにあった小さな居酒屋に入った。暖簾をくぐると、強い酒と焼けたタレの香りが鼻を刺す。中はざわざわしていて、木造のテーブルと赤い提灯のような灯りが幻想的に揺れていた。
「いらっしゃいませー! 二名様ですかー?」
「はい、カウンターでお願いします」
レイが慣れた口調で応じる。俺は完全に“迷子”だ。
なにせ、椅子の座り方すらわからなかった。
「この木の台、腰の高さしかないのにどうやって食事を……?」
「それがテーブル、これが椅子。もう少し観察力鍛えた方がいいよ、勇者さん」
「この世界の家具の発展、侮れないな」
席に座ると、店員がメニューを持ってきた。まるで古代の巻物のようだが、文字が…読めない。
「……レイ、オススメは?」
「じゃあ、とりあえずたこ焼きと唐揚げ。あとビール」
「たこ? 焼くのか? 野蛮だな」
「黙って食べなよ。きっと感動するから」
数分後、俺の前に置かれた“たこ焼き”からは、香ばしい湯気が立ち昇っていた。
一口かじると――
「うまい……!! これは……高位回復魔法より癒される……!」
店の中で叫んでしまった俺に、レイがくすくす笑う。
「そんなに?」
「ああ。レイ、この世界の料理は、魔法だ」
彼女の表情がやわらかくなる。その笑顔は、どこか寂しげだった。
「…レイ。どうしてあんな所にいた?」
少し間があった。レイは箸を置いて、空を見つめた。
「……親がね、自殺したの。私は、後追いみたいなもん」
「……」
「でも、違うの。愛されなかったわけじゃない。ただ、世界が静かすぎた。朝も夜も、ただ“死にそうなニュース”ばかりでさ。笑うことも、怒ることもできなくなってた」
俺は何も言えなかった。
魔王を倒した世界にも、希望を見失う者はいた。だが、この世界では、敵がいないまま心が蝕まれていく。
「じゃあ、今日から俺が敵になってやるよ」
「は?」
「泣きたい時も、怒りたい時も、俺にぶつければいい。ちゃんと反応してやるから」
レイは目を丸くして、それからふいに吹き出した。
「……なにそれ、へんなの」
それでも、少しだけ潤んだ瞳で、彼女は笑ってくれた。
そのときだった。店のテレビから、けたたましい音が鳴った。
【速報:都内でスマートフォンの暴走による小規模爆発が複数発生。改造された機種の一部は再び遠隔起動が可能となっており、犯人は現在も不明。政府は全国規模での電波制限を検討】
「……またかよ」
「これは…さっきの干渉結界だけじゃ防げないな。何か別の手段を…」
そのとき、俺の脳裏に浮かんだのは、かつて封印した禁術――
《魔核共鳴追跡》
地上すべての魔力…いや、この世界の“電波”を解析し、発信源を割り出す術だ。
「レイ、食事はまた今度だ」
「え、なんで…?」
「この世界の“魔王”は、まだどこかにいる。俺はそいつを探しに行く」
レイは一瞬戸惑ったような顔をして、それでもすぐに言った。
「……じゃあ、私も行く」
「危険だぞ?」
「それでも。あなたに出会って、初めて“死にたい”って気持ちが止まったんだ。だから…生きて確かめたい。あなたがこの世界で何をするのか」
俺は、にやりと笑った。
「そうか。なら、次は“パーティー”として行動開始だな」
「電波の発信源は……この座標。東京都、港区?」
俺は魔法で作った立体地図を前に、眉をひそめた。
レイがのぞき込んでくる。
「そこ、政府関連のビルが多い場所よ」
「“国家”が犯人なのか…?」
だが直感が囁いていた。単純な話じゃない。裏がある――
そのとき、ビル群の上空に黒い影が現れた。
無人の飛行兵器、ドローンが編隊を組んで飛んできたかと思うと、突然一部がこちらへ向けて攻撃態勢を取った。
「やる気か」
俺は手をかざした。
《アブソリュート・ディスペル》
空間ごと攻撃魔法を“キャンセル”する禁術。
瞬時に敵の攻撃は空中で霧散した。
「誰がこんなことを…?」
「コード発信元は、中国製スマホ。国内に数百万台流通している」
レイのスマホから、ニュースが流れてきた。
【“爆発コード”は中国本土から送信されたとの分析も。だが、情報の流出源は日本国内に存在するとの説も……】
「つまり、中国がコードをばら撒き、誰かがそれを国内で使ってる」
「でも、それを報道してるメディアのスポンサー、アメリカ製兵器メーカーばかりだよ」
レイの言葉に、俺はピンときた。
「……これは、誘導だ。混乱を引き起こすための」
それから数時間後、俺たちは港区の地下にある“保護された区域”へと潜入した。
そこでは、アメリカの諜報機関“NSA”に似た機関が、日本の自衛隊に最新兵器のデモンストレーションをしていた。
「なるほど。戦争を仕掛ける口実を、スマホで作ろうって寸法か」
そのときだった。
「……動くな」
背後に、数人の兵士。
俺は即座に魔法障壁を展開し、レイを後ろへ隠した。
「侵入者確保、シャエール・コード認証開始。彼の脅威レベルはS。拘束対象――」
「“認証”? 俺の名前を知ってるのか……?」
俺は目を細めた。これはもうただの諜報戦ではない。
俺の存在は、最初から監視されていた。
「レイ、離れるな。ここからは少し派手になる」
俺は詠唱を開始した。
《アーク・ルーン・エンゲージ:天破陣》
地下全体が光に包まれ、機械の数百倍のスピードで兵士たちの動きを封じた。
銃声が響く。だが全て俺の防壁に弾かれ、無力。
レイが、震える声で言った。
「シャエール……あんた、本当に人間なの?」
「俺は……“かつて人間だった”者かもしれないな」
一瞬、沈黙。そして彼女が、ぽつりと呟いた。
「でも、さっき私を守ったのは、確かに人間だった。ありがとう」
俺は笑った。
「お礼は、世界が平和になってからでいい」
港区の地下施設は、静寂の中に警報だけが響いていた。
制圧は一瞬だった。だが、それは始まりに過ぎなかった。
「この先に、本部があるはずだ」
俺はレイを振り返る。
彼女は少し躊躇いながらも、うなずいた。
「わかった。でも、気をつけて。ここは“普通の世界”じゃない。私たちの倫理や正義が、通じるとは限らない」
「通じなければ、通じさせるだけさ」
俺はそう言って歩き出す。
施設の奥。ガラス越しの会議室には、スーツ姿の男たちがいた。
その中心にいたのは、初老の男――
「Welcome back, Shael. Or should I say… Subject 001 from the other world.」
「俺のことを“被験体”呼ばわりか。お前がこの騒動の黒幕か?」
男は薄く笑った。
「騒動? これは“秩序”だよ。君の力は危険すぎる。君が現れた時点で、我々は“計画”を早めるしかなかった。中国の爆弾コードはトリガーにすぎない。全ては均衡のために」
「戦争を起こして均衡? ふざけるな」
俺は手をかざしかけたが、レイが小さく手を握った。
「シャエール。殺さないで。あんたの正義って、そういうのじゃないでしょ?」
その一言で、俺は踏みとどまる。
「……わかった。俺は世界を“破壊”じゃなく“救う”ためにここにいる」
男はため息をついた。
「では、お前がどこまで通用するか、見せてもらおうか」
突如、部屋全体が光に包まれた。
重力が狂い、空間がねじれる。
「これは…異世界由来のエネルギー!? まさか…」
「我々は“お前の世界”の力を解析し、模倣した。これが、現代の力だ」
《魔力干渉兵器:ゼロ・フィールド》
重力魔法と魔力遮断装置の複合。俺の魔法が――消えた?
「これは…ちょっと面白いな」
俺は笑った。
「俺が無双できない環境――初めて見る“本当の戦い”ってわけだ」
そこからは、剣技と体術、反射神経と判断力だけの戦い。
魔法のない“等身大の自分”が試される。
レイが、必死に戦闘サポートをしながら叫んだ。
「どうしてそこまでして戦えるの!?」
「――だって、幸せになりたいからだよ」
一瞬、男たちの動きが止まる。
俺はその隙を逃さず、中央の制御装置を破壊した。
爆発音とともに、ゼロ・フィールドが消える。
魔力が戻る。
《エターナル・セレスティアル・ブレード》
純白の剣が空から降り、俺の手に収まった。
もう終わりだ。
事件が終わって一週間。世界は混乱から少しずつ回復しはじめていた。
俺とレイは、静かな喫茶店にいた。
「コーヒーって…不思議な味だな」
「舌、焼けてるよ」
「ほう、現代の呪いか……」
レイが吹き出す。
「シャエール、やっぱ変な人だね。でも……あんたがいてくれて、本当によかった」
「……俺も、お前に出会えてよかった。レイ」
少し沈黙が流れる。
そして、彼女がぽつりと呟いた。
「ねえ、これからも一緒にいてくれる?」
「もちろん。お前が望む限り、ずっと」
⸻
世界は救われた。
けれど、本当に救われたのは――俺の心だったのかもしれない。
続き:勇者だった僕が現代で無双する話】
第一章:日常という名の魔法
あの事件から二週間。世界は表向き平静を取り戻していた。
だが、俺にとってはすべてが“未知”だらけの世界。
「シャエール、スーパー行くよ」
「“スーパー”? 超……なんだ?」
「買い物する場所。服とか食べ物とか」
「冒険の補給所か。なるほど」
俺はまだ慣れないこの世界の“平和”に戸惑っていた。
カゴを持ちながら、野菜を選ぶレイ。
「これ、安いね。こっちの方が新鮮かも」
俺は魔力で野菜の水分量を測っていた。
「レイ、これは昨日の収穫。こっちは三日前だ」
「えっ…どこで分かるのそれ」
「魔法だ」
「それズルじゃん…でも助かる」
ふと、通りかかった子どもが俺を指さして言った。
「あの人、コスプレの騎士だー!」
俺はそっとフードをかぶった。
「……この世界で生きるには、目立たぬことが第一か」
レイは笑って、俺の腕を軽くつかんだ。
「でも私はそのコスプレ騎士に命を救われたんだよ」
その言葉が、心に深く染みた。
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第二章:世界の修復と、勇者の外交
日本政府は公式に「テロを未然に防いだヒーロー」の存在を報じなかった。
だが、裏では各国の諜報機関が動いていた。
国連に呼び出された俺は、スーツ姿で演壇に立った。
「私は異世界から来た者、シャエール。目的はこの世界の平和であり、支配ではない」
議場にざわつきが走る。
「我々は、貴公の存在を脅威と見なす可能性もある」
「だが一方で、協力を望む国も少なくない」
アメリカの代表が言った。
「もしあなたが我が国の軍事顧問になってくれれば、世界は安定する」
「中国としては、その力を公平に扱ってもらいたい」
レイがそっと小声で言った。
「選ばないといけないの?」
俺は首を振った。
「俺が選ぶのは、“ひとつの国”じゃない。
この星の“未来”だ」
その発言が話題を呼び、世界各国は“勇者・シャエール”を国連の特別仲裁官として迎え入れる決議を採択した。
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第三章:それでも幸せは近くにある
日が暮れる。
東京の街並みの中、二人きりの帰り道。
「今日はすごかったね。ニュースに出てたよ」
「俺が出ると、また“戦う”ことになりそうで怖い」
「……それでも、あなたは出ていくんでしょ?」
「うん。だって――幸せのために戦えるって、俺にとっては生きる意味だから」
レイがそっと手を握った。
「じゃあ…私も、あなたの幸せの一部でいてもいい?」
「もちろんだ。レイ、お前は俺の“帰る場所”なんだ」
ふと見上げた空には、異世界では見られなかった人工衛星の光。
けれど、どこか暖かく感じた。
第四章:反転召喚と影の勇者
「確認されたのは南太平洋上空。黒い亀裂が…開いたんです」
国連本部のモニターには、空間が裂けるような映像が映っていた。
その空から、異形の“何か”がこぼれ落ちる。
俺は思わず立ち上がった。
「これは…“召喚ゲート”だ。俺がかつて使った魔法と同じ性質を持っている。だが、これは向こうから来ている……!」
「逆に召喚された…?」
レイがつぶやいた。
その通りだった。
俺がブラックホールを通じて“来た”のと同様、向こう側もこちらに手を伸ばしてきたのだ。
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第五章:影の勇者、出現
その夜、日本の横須賀に異変が起きた。
空間が揺れ、禍々しい黒騎士が出現する。
「貴様がシャエールか…かつての“光”の勇者」
「貴様は…!」
「我は“影”の勇者、リグザルト。貴様が世界を去った後、闇を統べるため選ばれた者」
「……違う。勇者は民を守るためにある。支配するためじゃない!」
「ならば力で示せ。どちらが“正義”か!」
その夜、俺とリグザルトの空中戦が始まった。
日本の空を切り裂きながら、魔力がぶつかる。
《ヘヴンズ・バリア vs ダーク・アビス》
《カオス・エクスプロージョン vs スピリット・フレイム》
空中での戦いの最中、リグザルトが言う。
「お前は、この世界の人間どもに利用されているだけだ!」
「違う…この世界の人たちは、傷ついても、助け合おうとする。俺が守りたいのは、その“想い”なんだ!」
リグザルトは一瞬だけ、目を伏せた。
「……ならば、見せてもらおう。お前の“想い”の強さを!」
⸻
第六章:帰る場所と約束
戦いのあと、瀕死で戻ってきた俺を、レイが支えてくれた。
「どうしてそこまでして…」
「だって、あいつにも“俺と同じ孤独”があったんだ。俺は…救いたかったんだ、あいつも」
レイがそっと俺の頬を撫でる。
「あなたが誰かを救おうとするたび、私は怖くなる。でも…それでもそばにいたいって思う」
俺は力なく笑った。
「俺も、お前がいるから立ち上がれる。レイ…一緒にいてくれるか?」
「…うん、ずっと。どんな世界になっても」