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TASさんVS教会の手先③


「——か! 陛下、ご無事ですか!」

「うぅ、いってぇ……」


 俺の目が覚めたのは、痛みのお陰だった。

 頭が割れるように痛むな……これは鈍器か何かで殴られたか?

 手で触れてみると、僅かにだが血が流れていた。


 フラフラしながらも何とか立ち上がって周囲を確認する。

 左右にはスマイリー直属の兵士が立っていた。

 

 俺はたしか、ついさっきに何をして……


「そうだ、アルタはどうした!?」


 ああっ、くそ。

 思い出した。



 どうやら俺は気絶させられてしまったらしい。

 そして、その間にまんまとアルタを誘拐された。

 日の沈み具合的には、そこまで時間は経ってないと思いたいが……


「今、TASさんが捜索中との事です。何やら手紙を受け取ったので向かうと聞いております!」

「手紙?」

「はい。内容を確認してみた所、脅迫状のようでした!」

「具体的にはどんな文面だ?」


 手紙の内容を要約するとこうだ。


・アルタは街の片隅にある倉庫にいる

・返して欲しくば一人で来い

・日付が変わるまでに来なければ殺す

・一人で来なかった場合も殺す


 と、言う事らしい。

 なるほどな、たしかにこれは完全に脅迫状だ。

 文面から鑑みるに、まだアルタは無事だと思うが……心配だ。


「一人で来い、か。誘っているのは、あいつか」

「ええ。おっしゃる通りです」

「じゃあ、俺も行く」

「えっ」


 あいつの事だ。

 どうせ、俺がこうする事は把握しているだろう。

 人の感情なんて二の次だと思ってそうな奴だが、それだけは何となく確信出来る。


「でも、一人で来なければアルタさんを殺すって」

「分かってる。ジッとしてるのが嫌なだけだよ」


 何もしないままでいると、気が狂いそうだ。

 どうせ、教会の連中の事だ。

 一人で行こうが行かまいが殺す事に変わりはない、とか考えてるだろう、

 それならいっそ、行ってしまった方が良いだろう。


 ……或いは既にアルタは殺されていて、ただあいつを誘き出す為にこんな文を書いたとか。

 流石にそれは無いと信じたいが、考えられない訳じゃないだろう。


「場所は何処だ?」

「手紙と一緒に送られていた地図によると、たしか……」


 兵士の話を聞く限りだと、それは俺達が馬車を降りてから馬車が向かった方向にあった。

 あいつ、まさか手紙を受け取った瞬間向かったんじゃないだろうな……?

 まあ、今はそんな事はどうでも良いな。


「とにかく、急ぐぞ!」

「お供しましょう」

「スマイリー、お前今まで何処に居たんだ?」


 俺が背を預けていた建物の屋根の上からスマイリーが飛び降りる。

 俺もこいつとは長い付き合いだ、この程度の事ではもう驚かないぜ。

 それよりも、こいつがさっきまで何処に居たのかが問題だ。


「姉の方に『お前が居ると警戒されて誘拐されない』と言われたので、この街の外に待機しておりました」

「ああ、うん。納得だわ」


 スマイリーは優秀な軍人にして殺し屋だ。

 その勇名……いや、悪名は国の外にまで広がっていた。

 皇帝である俺よりも顔が知られている筈だ。

 そりゃあ誰だってそうするよな。

 俺だってそうする。


「よし、行くぞ!」

「その前に傷の手当てを」

「……それもそうだな」


 思い出すとまた痛くなってきやがった。

 ……でも、やはり大人しくしてはいられないんだよな。

 例え、無事に救出されると言う結末を知っていたとしても。


 


⬛︎ ⬛︎ ⬛︎




 兵士から教えられた建物の前まで到着した。

 どうやらこの建物は古いらしく、かなり老朽化しているようだ。

 しかし、デカい建物だな……三階建てか?

 この辺りは人通りが殆ど無いし、監禁場所には持ってこいの場所だな。


 この中にアルタとその姉……TASさんがいるのか。

 うん、やはり友人の娘にさん付けするの慣れないな。

 そんなにさん付けされたいのかあいつは。


「……ん?」


 建物の近くにある側溝……そこに、俺は見覚えのある物が捨てられているのを見つけた。

 これは、たしかあいつの持っていた魔銃だ。

 体良く武装解除されたっぽいな。


「……とにかく、入るぞ」

「はっ」


 一応これは回収しておくか。

 俺はドアの取手を掴み、思い切り引いた。

 びくともしなかった。


「……鍵を掛けられているらしいな」

「ここはお任せを」

「お、もしかして鍵でも持ってるのか?」

「ええ」


 スマイリーが俺に代わってドアの取手を掴んで引く。

 バキン、と。

 何かが壊れる音がしてドアは開いた。


 マスターキー(物理)じゃねぇか……鍵開けの技術くらい知ってるだろうに。


「まあいい。入るぞ」


 中は意外にも明るくて埃っぽくもなかった。

 しかし、明らかに異常な部分が一つある。

 それは……


「……おい、死んでるんじゃないかコイツら?」

「いえ、辛うじて息はあるようで」

「そうか」


 廊下にて壁を背にして倒れている男達が、ざっと数えて十数人程。

 壁に血痕がベッタリついている……頭をぶつけられたのか?

 そして、顔に靴の跡がある。

 ……いや、絶対死んでるだろこれ。


「これはあいつの仕業か」

「おそらく」

「……あいつの【異能】がおかしくても、この人数の大人の男を相手にこうまで出来るモンなのか?」


 いくら未来予知出来ようが、あいつの肉体は幼女だぞ?

 こんな事までは流石に出来る訳がないだろ。

 ……出来ないよな?


「陛下はご存知ないのでしたね」

「ん、どう言う事だ?」

「彼女は毎日訓練をしていました」

「ああ、アルタが言っていたな……よく分からない事をしているとか」

「私としても、正直彼女の行動原理は分かりませんね」


 スマイリーも分からないのか。

 割と似た者同士だと思っていたから少し意外だ。


「私が課した訓練以外も、彼女は色々とやっていましたよ」

「と言うと?」

「よくある筋トレを……スタミナが完全に0になっても続けてましたな」

「0になってもって、流石にそれは逆効果だろ」

 

 適切な運動量を熟さないと筋肉は付かないだろ。

 ……って、昔スマイリーが言ってた。


「「ケガ率が100%じゃないから問題ない」とか何とか……」

「いやどう言う事だよ」

「あと、トレーニングをする度に蜻蛉が飛んでましたな」

「何でだよ……って、今はそんな事言ってる場合じゃないな」


 とっとと行かなければ。

 廊下は二手に別れているが、幸い方向は分かる。

 倒れている奴がいる方へと歩いて行けば良い。


 それにしても……死屍累々だな。

 絶対死人出てるだろこれ。


「どうやら上に続いているようですな」

「行くぞ」


 俺達は階段を上へと登って行く。

 やがて、俺達は一番上の階の部屋まで辿り着いた。

 部屋の中からは何やら激しい物音がする。


 悩んでいる暇はない、か。

 俺は考えるよりも先に扉を蹴り開けた。


「どらぁ!」


 バァンと景気の良い音を立てて扉は吹っ飛んだ。

 俺だって一応自衛の訓練はしているから、これくらいは出来る。


 部屋の中では、TASさんが徒手空拳で戦っていた。

 その相手は四人の男達なのだが……妙だな。

 全員同じ格好で同じナイフを所持しているが、それだけじゃない。

 身長から顔まで何から何も全員同じなのだ。


 TASさんは俺を一瞥しただけで、特に反応はしていない。

 やはり、想定通りらしいな。


「ちっ、お仲間まで来たか」

「面倒な事になったな?」

「思ってたよりは、手強いな」


 相手の男共……声色まで同じだと?

 双子とかそんなレベルではない……まさか【異能】か?

 だとしたら、自分の分身を作る能力ってところか。


 そして、部屋の奥に……アルタが縄で吊るされていた。


「アルタ!」

「む、お前……よく見たら皇帝か?」

「やれやれ、帝国で笑いながら屍山血河を創り上げた原因の二人が揃い踏みとはのぉ?」

「しかし、これは不味い状況だな」

「早いところケリを付けんと、な」


 ええい、同じ声で話すなややこしい!


「助太刀は必要か、姉の」

「要らない」


 いつも通りに、平然と、そっけない様子で。

 あいつはそう答えた。


「ほう、折角来てくれたと言うのに助けを求めないとは」

「ええ度胸しているじゃないか、お?」

「もう手加減はせんぞ。本気で行かせてもらおうか」

「覚悟しろ」


 相手四人が同時に、息を合わせてあいつに襲いかかる。

 分身だとしたら、ここまで見事に連携出来るのも納得が行く。

 しかし……それは、TASさんの相手としては不足していたらしい。


「ぎゃあ!」

「へぶっ!」

「ぐわっ!」


 最初に襲いかかった一人目は胸倉を掴まれ、その勢いのまま壁に頭を激突させられた。

 倒れ伏した後、頭を思い切り踏み抜かれて骨がゴギっと音を立てた。

 これは死んだな……


 次の相手は一人目が持っていたナイフで腹を刺されて、悲鳴を上げながら倒れた。

 三人目も同様だ。

 ああ、また死人が……


「ヒャハハ、久しぶりに血湧き踊る喧嘩相手やないか」


 残った一人が舌舐めずりをしながら、あいつを見つめている。

 獲物を見つけた猛獣……いや、遊び相手を見つけた鬼みたいな表情だ。

 どうやらこいつは、根っからの戦闘狂のようだな。

 少しスマイリーに似ているかもしれん。


「おらぁ!」

「……」


 TASさんは攻撃を楽々と回避する。

 最小限の無駄のない動きで、迷いもない。

 しかし、それは相手も同じだ。

 どっちも人間辞めてるだろこれ……


「これでどうだ!」

「……それを待っていた」

「なっ!」


 ほんの一瞬……俺なら見逃してしまうような僅かな隙を付いて相手の頭を掴んだ。

 そして、TASさんは懐から何かを取り出した。

 一体何を隠し持って……待て、あれはまさか!?


「食らえ」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!?」


 間違いない、あれは——







 ——食卓塩だ。



 急にギャグにするなよ……



最近暑くなり過ぎて色々と大変なのです……

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