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TASさんが公国で大暴れ その一


 私が起きてから更に三日後、もう少しで公国に到着する所まで来ました。


 この国は帝国や王国と比べると、領土はおよそ半分程度しかない国です。

 しかも、その殆どが荒れている土壌ばかりなので、農地に使える土地となると僅かしか無く。

 その為、食料は他国からの輸入で補っている状態なんだとか。


 ですが、国力自体は他国にも決して負けていません。

 シェール公国は、先進的な技術大国なのです。


 王国だった時代から技術が発展していました。

 鉄や鋼を使って機械って物を作る技術があるそうです。

 また、鉱山などの資源の取れる土地も多く保有しています。

 西は海と面していて、観光地として有名なんだとか。


 現在では、馬車は衰退して機械の車が普及している程です。

 また、兵器の開発にも余念は無いんだとか。

 銃、と言うのがとんでもないらしいです。


 ……と言うのが、皇帝陛下から聞かされていた公国の所感です。

 実際に見た方が説明するよりも早いだろうとの事でした。


「おいおい……これは、どう言う事だ?」

「何か、違うな……」

「……雰囲気がおかしいわね」


 遠目にですが見えて来ました。

 なるほど、あれが公国……






 街の建物が、いくつも盛大に燃えていました。






「たしかにこれは実際に見てみないと絶対分からないですね」

「いやいや、これは明らかに異常事態だろ!?」


 分かっています。

 ちょっと現実逃避をしてみたかっただけですよ……


 なんですかアレは、祭りか何かですか!?

 派手に燃えてるじゃないですか!

 

「私一度来た事あるから分かるけど、精々煙が複数箇所くらいから上がっているのは普通なんだけど……」

「燃え盛る炎がここからでも見えるな……」

「どうした、何かあったのか?」


 今まで読書に集中していたアザミさんが、馬車の外を見ようとします。


「ああうん、見たらびっくりするわよ」

「ふん、私がそう簡単に取り乱す訳がないだろう」


 そう言いつつ、窓から顔を出したアザミさん。


「ななななんだアレは!?」

「取り乱してるじゃないですか!」

「とっととと取り乱してる訳がないだろう! ほら!」


 何が「ほら!」なのか全く分からないです。

 って、今は漫才をしている場合じゃなかった。


「急いでください、お姉ちゃんの事だから無事だとは思いますが……」

「ええ、そうね。どちらかと言うと、あの子は火事を起こしてる側な気がするわ」


 悲しいけど、ガーベラさんの言葉を否定出来ません。

 お姉ちゃんの前科が積み上がっていくのを見ていられません。

 私に何が出来るかは分からないけど、とにかく急いで駆け付けないとっ。


「……」


 あの時……盗賊団と遭遇した夜。

 お姉ちゃんが賊を切ろうとした直前。

 お姉ちゃんは何の感傷も無さそうでした。

 殺した後も。


 そんなお姉ちゃんを、私は信じられるのでしょうか?

 ……迷いは勿論あります。

 だけど、私は妹だから。

 誰よりも姉の事を知っているから。


 お姉ちゃんを心から信じて寄り添える人は、私以外にはいないんです。




 私達は街の門の前に辿り着きましたが、衛兵さん達が忙しそうに走り回っていました。

 普段から、何処の国も入国には手間取るんだなぁと思いますが……

 疲れきった顔をした入国審査官らしき人が、私達に向かって話しかけてきました。


「お前達は……入国希望者か?」

「はい、そうですが……何かあったんですか?」

「いや……その……」


 何故か、この人の口が止まりました。

 そんなに言い難い事なのでしょうか?


 と、私達が足止めを喰らっていると、街の中の方から見知った顔が現れました。

 それは、もう一人の旅のメンバーだった人。


 スマイリーさんです。

 ちょっと不機嫌なのか、眉を顰めています。

 ……いえ、普段からこの人はこんな表情でしたね。


「あの者の言った通りだな……今到着したところか?」

「はい。お姉ちゃんに言われて私達を迎えに来たんですか?」

「そんなところだな」


 よく見ると、この人にも疲労の色が微かに見えました。

 本当に、聞きたい事がたくさんありますね。

 まずは……


「この街で今、何が起こってるんですか?」

「お前の姉が、ご禁制の薬物を溜め込んだ倉庫に片っ端から火を付けたんだ」

「あっ……」


 スマイリーさんの言葉に、入国審査官らしき人は顔を真っ青にしました。

 ……もしかして、その薬とやらの関係者だったりするの?


「ふん、コイツらは密売を賄賂を取って見逃していたからな。その内、牢屋にぶち込まれるだろうな」


 吐き捨てるようにスマイリーさんがそう言うと、泡を吹いて倒れ込みます。

 ……い、一応壁にでも寝かせておいた方がいいかな?

 と、思ってたら静かにピジョンさんがそうしてくれました。

 意外と気が効く人です。


 私は質問に戻らせて貰いましょう。


「お姉ちゃんは今どうしてるんですか?」


 お姉ちゃんの事だから、きっととんでもない事をしてるに違いない。

 賭博場で金庫を空にしてるのか、或いは街中の屋根を走り回ってるか……

 さあ、どれだろう?


「クロバと共に、この街を治める貴族の館に突撃している」


 想像の斜め上を行きました。


 え、何してるの?

 そんな事したら首が飛んじゃう……あ、でも私達の身分を考えるとそうでもないのかな?

 元とは言え、一応王族なんだし。


「一応言っておくが、失敗したらお前の姉は問答無用でその場で抹殺されるだろうな」

「何やってるのお姉ちゃんは!?」


 少しでも甘い妄想をした私が馬鹿でした!

 ええい、お姉ちゃんったらいつもいつも危ない事を平然と行って……

 むぎー!


「なんか腹が立って来ました! いい加減、事前に相談の一つや二つ三つくらいして欲しいですっ!! 今すぐにでも会って色々とお話させてよっ!!」

「気持ちは分からないでもないが……一度落ち着け」


 ポンポンっと頭を軽く撫でられました。

 むむむ……


「……少し取り乱しました。その、貴族の館に突撃しているって話をもう少し詳しくお聞かせください」

「分かった。だが、悠々と立ち話をしている時間はない」


 そう言うと、スマイリーさんはある方向を親指で指差しました。

 そっちを向くと、見慣れない形の車がありました。

 馬車とは違って馬を引いていませんが、どうやって動くのでしょうか?

 屋根もないですし……

 仕組みがちょっと気になるけど、今はそんな事聞いてる暇はなさそうです。


「姉に会いたいのなら、これに乗れ。生憎と四人までしか乗れないが、他に付いて行きたい奴はいるか?」


 私達に向かってそう話すスマイリーさんに、ピジョンさんとライノさんは首を振りました。

 そっか、依頼はシェール公国に到着するまでだったね……

 ですが、ガーベラさんがおずおずと手を挙げました。 


「あの〜……この国の車って、法律で免許証を持ってないと乗れないって定められてるんじゃなかった?」


 え、そうなんですか?

 ……そう言えば、皇帝陛下がそれっぽい事を言ってたような、言ってなかったような。


「安心しろ。TASの運転を見て、ある程度コツは掴んだ」


 何故でしょうか、物凄く嫌な予感がします。

 特に、「お姉ちゃんの運転を見て」の部分が……

 後、結局法律に反してない?


「何、心配するな。今この街の警邏隊は混乱中だ。仮に咎められても私の運転技術で撒ける筈だ」


 寧ろ不安が増えましたし、私も違反の片棒を担いだと思われませんか!?


「最悪、捕まったら蹴散らせばいい」

「思考が完全に犯罪者のそれじゃないですか!」

「行くぞ」


 待って待って!

 私、まだ十三歳なのに犯罪に関わりたくないよ!?

 お姉ちゃんは既に結構な数の前科を抱えてそうだけども!


「アルタ、落ち着いて聞け」

「な、何ですか?」


 神妙な面持ちで、スマイリーさんが静かにこう言いました。


「バレなければ、犯罪ではないんだ」

「いや、犯罪は犯罪でしょ?」

「……そろそろ時間がないから、早く乗るとしよう」


 あ、誤魔化した!?


 ……一刻でも早くお姉ちゃんに会いたいので、今のは聞かなかった事にしましょう。

 仕方無い事ったら仕方無い事なのです。


 世間に揉まれるって、こう言う事かもしれません。

 こんな時ながら、私はそんな事を思いました。


「私はついて行くぞ。お前の姉に頼まれたからな」


 唐突に、アザミさんが話に入って来ました。

 この人、意外と空気が読めないと言うか……


「行くのか……生憎と俺達は行く理由がない。頼まれてなければ金も出ないからな」


 ピジョンさんの言う通り。

 傭兵とは、お金で動く人達なのです。

 ですが、私はそれを軽蔑したりする事はしません。

 ……帝国で贅沢な暮らしをしてた時も、私はお金が気になってましたし。

 それに、私としてもこれ以上お姉ちゃんの大暴れに付き合わせるのも気が引けます。


「そうですね。でも、ここまで助かりました」

「そう言ってくれると嬉しい。だから、君達姉妹の幸運を祈らせてもらうよ」

「……また、会えるといいな」

「今度は、もっとゆっくりお話できる時間があると良いわね」


 ライノさんとガーベラさんはそう言いつつ馬車へと戻って行きます。

 最後にピジョンさんが、アザミさんに話しかけました。


「合流はこの街の宿屋で頼む。気を付けろよ、アザミ」

「ふんっ、私を誰だと思っている?」

「ガーベラのおも……愛人?」

「今おもちゃって言おうとしたか!? それに愛人でもないだろうが!!」


 馬車の中からケラケラとガーベラさんの楽しそうな笑い声が聞こえました。

 ……うん、これがこの人達にとっていつも通りの調子なんですね。

 って、今は急がなくちゃ。


 私とアザミさんは後部の座席に乗り込みました。

 スマイリーさんが運転席へと座りました。


 初めて乗りましたけど、意外と座り心地が良いですね。

 ふかふかのクッションまで付いています。

 右上にはおしゃれな星の装飾まであります。

 

 ……ん?

 ちょっと待ってください。


「この車、かなり高価だと思うんですが、何処で調達したんですか?」

「……よし、二人共乗ったな。出発するぞ!」


 また誤魔化された!?


次回こそTASさん出ます。

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