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違和感

TASさん、今回は出ません(´・ω・`)

よってかなり短めです。


「……あ、れ?」


 眩しい光に目を覚ますと、私は馬車の座席に横たわっていました。

 お布団もかけられています。

 馬車が揺れているので、移動中みたいですが……


「あら、起きたの?」

「よく寝ていたな。気分はどうだ?」

「……」


 ガーベラさんとアザミさんが私の方を見ていました。

 ガーベラさんはともかく、アザミさんまでも心配そうな眼差しです。

 御者席にはピジョンさんとライノさんが座っています。


 ……お姉ちゃんがいない!

 あと、スマイリーさんも見当たらない。


「あの、お姉ちゃんは!?」

「あの子なら昨日、あの後すぐにスマイリー殿とクロバと一緒に先に出発したわ。魔法で馬車の速度を上げてたから、もしかしたらそろそろ公国に到着してるかもね」


 珍しい……お姉ちゃんが私と離れるなんて。


 あの後……って、どの後?


 たしか、盗賊団のリーダーである叔父のエルフを説得する所だった筈。

 あの人の姿を見て、それから……


「っ!」


 思い出した!

 ひ、人の首がぴょーんって……血がぶしゃーって……

 う、あ、あぁ。

 い、あ。


「うえ……おっぷ……」

「大丈夫? 窓開けようか?」

「だ、大丈夫……です……昔、お姉ちゃんが言っていました……嘔吐したら、乙女の尊厳も吐き出しちゃうって……!!」


 私は乙女だと何度も言い聞かせて、何とか吐き気を抑えました。

 良かった、何とか色々な物を守れたよ……

 ……ここ最近で一番酷い目に遭いました。


「……顔色を見るに、あまり大丈夫じゃなさそうだな」

「ちょっと早いけど、お昼休憩にしましょ。ピジョンにライノ、馬車止めて〜」

「おう」


 ガーベラさんの声掛けで、すぐに馬車が止まりました。

 外を見てみると、二台目の馬車がありません。

 ……何が何やら。


「アルタちゃんはもう少し休んでていいわよ。そうだ、水とか欲しい?」

「あ、えっと……一杯だけお願い出来ますか?」

「分かった。少し待っててね」


 ガーベラさんが荷物の中から水筒を取り出してくれました。

 アザミさんは珍しく本を読まずに私を見つめたままです。

 ……私の髪にゴミでも付いてるのかな?


「はい、お水。冷たいのが良かったらアザミが冷やしてくれるよ」

「私の魔法を氷室扱いするな……」

「あはは、そのままで良いです」


 水筒を受け取って中の水を飲みます。

 ……うん、特段美味しくはないけど一息付けた気分になれました。


「私は昼ご飯を作るのを手伝ってくるから、アザミはその子見ててくれる?」

「はいはい、分かったよ……受けた依頼はやり遂げないとな」


 はぁ、と深い溜息を吐きながらアザミさんは座席にもたれ掛かります。

 受けた依頼って、何の事だろう……

 護衛依頼の事じゃないと思うし、私が気絶してた間に話してた事なのかなぁ。


 ……お姉ちゃんが側にいない。

 勿論寂しいけど、それ以上に違和感があります。

 お姉ちゃんは、私が物心付いてからずっと一緒だったから。

 一時も離れた事は無かったのに、なんで今更……


 先に公国に向かった理由が分かりません。

 いや、それ以上に昨日のあれは……


「……色々と考えてるみたいだけどさ」

「う?」

「あんたさ、考えるのが得意な訳じゃないんだろ? それに今はちょっと体調がよくない。大人しく、今は休んでおきな」


 ……意外です。

 アザミさんって、そうやって人を気遣う事も出来るんですね。


「心配してくれてありがとうございます」

「別に心配してない。あいつに……お前の姉に頼まれたからな」

「お姉ちゃんに?」

「ああ……ふんっ、あいつは気に入らん。わざわざ護衛任務を依頼したのは、エルフである私を利用してクロバを誘い出したかっただけらしいからな」


 それ以外に理由はないだとさ、と。

 吐き捨てるようにアザミさんが呟きます。


 ううん……言われてみればただの旗印みたいな扱いですね。

 これは怒られても仕方ないかもしれません。

 ……事前に説明しなかったのは、怒られたくないからとか?

 やっぱり、考えてても分かりません。


「……そうですね。もう少し休ませて貰います。アザミさん、優しいんですね?」

「私がか?」

「はい。何だかんだ気に入らない相手の妹を気遣ってくれますし、その依頼とやらも受け入れてますし」

「むぅ……」

「よく分かったわねアルタちゃん。うちのアザミはツンデレって奴なのよ」

「誰がツンデレだ!?」


 突然話に入って来たガーベラさんの言葉にアザミさんが憤慨しながら振り返りました。

 ツンデレ……つい最近、見た記憶があります。

 たしか……


「普段ツンツンしてるけど、夜の宿に誘われるとデレデレする人ですよね?」

「まあ大体合ってるわね」

「いや、後半おかしいだろ!? そして私はツンデレじゃない! アルタは何処でそんな言葉覚えたんだ!」

「アザミさんが読んでた本をこっそり覗いたら……」

「ちょ、おま!?」


 驚き戸惑っている様子のアザミさんを見て、ガーベラさんはケタケタと笑っています。

 私もそれに倣って笑ってみます。

 少し気分が晴れました。

 

「お・ま・え・らー!!」

「あはは、顔真っ赤で面白ーい!」


「おーい、アザミで遊んでないで手伝ってくれー」


 外からビジョンさんの声が聞こえました。


「私で遊ぶってなぁ!?」

「はいはい、そう怒らないの」

「誰の所為だと思ってやがる!」

「それは置いといて」

「置いとくな!」


 ガーベラさんは、真面目な表情になって私と面と向き合いました。


「アルタちゃんにな、人を見る才能があると思うわ。赤の他人にはツンツンしているアザミの本性も見抜けたんだし」

「そ、そうでしょうか?」

「うん。貴女には才覚を感じる」


 ガーベラさんの表情は真剣その物で、アザミさんと戯れてた時とはまるで違う雰囲気です。

 ……普段からそうしてたら、素直に格好良い人なのに。


「貴女は純真で清らかな心の持ち主よ。私が保証してあげる。だから……」

「お姉ちゃんの事は信じてあげて、ですか?」

「……姉妹が離れちゃうのは、悲しい事よ」


 少しだけ表情を曇らせたガーベラさん。

 ……この人も、昔何かあったんでしょうか。


「お姉ちゃんの事はいつだって信頼しています……だけど、いきなりあんな事されてびっくりしました

「うん、あれは私もびっくりした。あの子、殺し屋の経験でもあるの?」

「そんな物騒な事はしてないですよ!」


 してない……ですよね?


「早速信頼が歪んでないか?」


「「アザミ(さん)は黙ってて(ください)!」


「何故だ……」


 落ち込んでいるアザミさんは一先ず無視して。


 ……うん、よく考えたら違和感があるよね。

 お姉ちゃんはいつでも私の事を第一にしてくれていた。

 私の夢も叶えようとしてくれている。

 それに、アザミさんの破廉恥な姿(想像の中では)を見せないようにしてました。


 ……アザミさんのエッチな姿と首を切り落とす光景。


 何故、お姉ちゃん後者を隠さなかったのか。


 きっと、何か理由がある筈です。

 たしかに今までよく分からない事をしてましたけど。

 私は、まだお姉ちゃんを信じていたいです。


 ……早く、会って話がしたいな。



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