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TASさんが帝国を旅立つようです

ちょっと短めになってしまった。


 会議のあった翌日。

 私とお姉ちゃんは荷物整理をしていました。

 二人のメイドさんにも手伝って貰っています。

 何故かって言われると、私にもよく分かりません。

 お姉ちゃんが唐突に言ったんですよ。


「アルタ、出掛ける準備をして」


 って。

 ほら、分からないでしょ?

 お姉ちゃんが何を考えているのか全然把握できていません。


「何で?」

「今からすぐ出発する。シェール公国を経てゲパルト王国に戻るからだ」

「ふーん、今から……今から!?」


 もう少し報告とかあった方が良いんじゃないかな!?

 昨日にでも言ってくれてたら……そう言えば、会議の後でグロッキーになってたんだった。

 いや、それでも一言くらい伝えてくれても良いんじゃない?


「もう帝国で私達がやれる事はない。明日には宣戦布告が為されるから、今のうちに帝国を離れるよ」

「そ、そうなの?」

「やるべき事は皇帝に伝えておいた。あとは上手くやるだろう」


 お姉ちゃんはそう言いました。

 うーん、ここでの生活は居心地がとても良かったけど……

 どうして、今じゃないと駄目なのだろうか。

 他にも聞きたい事はある。


「その、私達ってお姫様なんだよね?」

「そうだね」

「だったら、護衛とか……」

「必要ないから断った」


 えぇ……?


「……無駄だけど、首肯すると盛大にしてくれるからな」

「何か言った?」

「いいや」


 最近お姉ちゃんは独り言が多い気がします。

 あと、聞きたい事……


「なんでシェール公国を経由するの?」

「そっち方面に会うべき人がいる」

「それって誰?」

「私の叔父だ」

「お、叔父!?」

「母の方の兄だよ」


 居たのそんな人!?

 その人の正確な場所を把握している事についてはもう何も言わない。

 つまり、その人は私の血縁者だよね……ほぼ、唯一の。


「会いたい?」

「それは、そうだけど」

「じゃあ早く準備しないと」

「……うん、分かった」


 何だかお姉ちゃんが最近強引な気がします。

 私に隠してる事もあるだろうに、ちょっと傷付きました。

 むむむ……

 いつか、この意識の差を埋めたいものです。


 それからは黙々と作業を続けました。

 とは言っても、大して時間は掛かってません。

 私はお洋服を畳んだりくらいしかしてないですし。


「じゃあ、行くよ」

「うん。ところで、またワイバーン便を使うの?」

「途中まではそうだけど、国境を出てからは馬車を使う」

「馬車?」


 ワイバーン便ですらジッとしていると脂汗が浮き出るようになって来たお姉ちゃんが馬車?

 どう言う風の吹き回しなのかな……


「ワイバーン便だと合流できないから」

「その、叔父さんに?」

「ええ。でも……道中暇ね」


 あ、お姉ちゃんの目から光がっ……

 乗る前からグロッキーになってるー!?

 どれだけ嫌いになったの……やっぱり車酔いも克服出来てないんじゃない?


「……えと、出発する前に何か暇潰しのおもちゃでも買う?」


 幸い、皇帝陛下がお金を沢山くださったので金銭面で困る事は少ないと思う。

 これだけあれば、しばらくは絶対困らないよね。

 お姉ちゃんがおもちゃを欲しがった時なんて、一度も記憶がないけど。


「……暇潰し、か」


 お姉ちゃんが何やら立ち止まって考え込んじゃいました。

 ぶつぶつと何やら溢していますが、上手く聞き取れません。

 単純とか長続きとか、そんな単語がチラホラと出て来たのは分かりましたけど。

 えぇ、そこまで深刻にならなくても……

 外の後ろへ流れて行く景色を見ているだけで、時間なんて過ぎて行くと思うけどなぁ。


「……今はいい。また今度考えよう」

「そっか」


 お姉ちゃんが歩き出しました。

 私はその背後に付いて歩いて行きます。


 いつか後ろを追従するだけじゃなくて……一緒に横を歩いて行きたいな。

 昔はよく横に並んで歩いてたから、余計そう思っちゃうや。




◆ ◆ ◆




 あっという間に国境付近の街に到着しました。

 お姉ちゃんはどうやら無表情になる事で道中を耐え抜いたみたい。

 顔がお人形さんみたいになっています。

 ほんと、変なお姉ちゃんですね。


「それで、この街からは馬車で行くんだっけ?」

「ああ」


 ここは、スマイリーさんと出会ったあの街です。

 この街は二つの国の境目に位置しているようですね。

 とは言え、大森林が間に挟まっているからあまりそんな気はしませんけど。


「まずは傭兵ギルドに行くよ」

「え?」


 傭兵と言うのは、所謂何でも屋に近い人達の事です。

 報酬のお金さえ出せば、非合法な事以外は大抵やってくれるんだとか。

 街の外に出て魔物の駆除をしたりとか、そんな感じ。


 そう言えば、傭兵の中には行商人の護衛を専門にする人達もいるらしいですね。

 旅には危険が付き物なので、高額の報酬を払ってでも雇う商人が多いそうです。


「もしかして護衛を雇うの?」

「全然違うけど、大体そんな感じね」

「……全然違うのにそんな感じって?」

「ああ」


 お姉ちゃんは会話を切り上げていつの間にか到着していたらしい傭兵ギルドの建物の中に入って行きます。

 何ですか、今の会話は?

 ……お姉ちゃん、説明が段々適当になっている気がします。




 傭兵ギルドの中は、結構騒がしいご様子。

 酒場も兼ねているのか、お酒を飲んでいる人達が大勢いました。

 受付嬢っぽい人は呆れ顔でお酒を運んでいます。

 まだ昼間なのに……あ、つまみに美味しそうな串焼きみっけ。

 うう、見ただけでお腹が空いてきました。


 お姉ちゃんは一直線に受付らしき所に向かいました。

 後でここでご飯を食べてもいいか聞いてみよう。


「いらっしゃいませ」

「依頼したい事がある。とあるパーティを指名したい」


 お姉ちゃんは袖の下から何かを取り出すと、それを受付の人に見せました。

 普通はポケットにしまおうよ……

 取り出した物を見ると、それは何かの紋様が刻まれた金属の円でした。

 何処かで見た事があるような、無いような。


 それを見た受付の人は、驚いた様子で声を張り上げます。


「えっ!? そ、それは……」

「早く。急いでいる」

「わ、分かりました……ご依頼の内容は?」

「シェール公国までの護衛任務だ。あのパーティを指名する」


 お姉ちゃんは視線を一つのテーブルに座る四人組に向けました。


 長剣を腰に差している、長身で細身な男の人。

 巨大な槌を隣に置き、お酒をガブガブ飲んでいる大柄の男の人。

 大きなメイスを杖代わりにして、テーブルに顎を乗せて寝ている女の人。

 弓と矢を背負っている、目深にフードを被った女の人。


 そんな四人組です。


「彼等ですか。今は丁度手が空いているようなので、構いませんよ」

「では仕事の話をしてくる」


 そう言いつつ、お姉ちゃんは四人組の座っているテーブルへと向かいます。

 しかし……その途中。

 顔を赤くした男の人が、足を伸ばして行く手を阻みました。

 完全に酔っ払ってる様子です。


「おいあんたらぁ、護衛いらいならぁ、俺の方がぁ……んあ?」


 お姉ちゃんは何故かその場歩きをしていました。

 前に歩いている筈なのに、全く進んでいません。

 それ、一体どうやるのか気になります。


「……???」


 酔った男の人は、お姉ちゃんの不思議な動きを見て理解出来ない物を見たような反応をしました。

 足を戻して目をコスコスと擦ります。

 その隙にお姉ちゃんと私はさっさと通り抜けました。


「……なんだあいつ」


 背後から聞こえた声は気にしない事にしましょう。


「失礼、少し良いだろうか」


 お姉ちゃんが四人組に話し掛けます。

 すると、長身の男の人が応えてくれました。


「話は聞いてたよ。詳しい話を聞いてからになるが、私達はその依頼を受けても吝かではないよ。ところで、さっきの動きはどうやったんだい?」


 あ、見られてました……何だか恥ずかしいです。


「受けてくれる気があるなら、幾つか注意事項や報酬金の話をして早速行くつもりだ」

「中々せっかちだね。まあ、僕らはそれでも構わないかな。だよね皆?」


 長身の男の人のその言葉に、三人が返答します。


「俺は別にいいぜ。ここの酒は俺にはちょっと度数が足りねぇぜ」

「私は別にー?」

「……構わない」


 うん、何だか緩い雰囲気の人達ですね。

 堅いのは苦手なのでちょっと好感が持てます。


次回の更新は少し遅れます。

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