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悠真のカコ

 僕、川野(かわの)悠真(ゆうま)は打ち上げの帰りに昔のことを思い出した。5歳ごろだろうか。パーティーで世結(せゆう)と会った時のことだ。あの時の僕は今の僕からみてはっきり言って最低だ。

「俺は、天田(あまだ)世結(せゆう)。剣術と魔法が得意だよ!」

 彼は自己紹介をしてきた。僕のこと忘れたのだろうか。

「...僕は、川野(かわの)悠真(ゆうま)。魔法は、僕もとくい。」

 この自己紹介のやりとりは二回目だ。以前会ったときもこんな感じであった。

「...世結(せゆう)は、魔法が、すき?」

 僕は大好きだ。だから魔法を学んでいる。

「すきだよ! 友達と一緒によく研究してるんだ! こんどーーー」


 その途端、パーティー会場の中心に人が立っていた。いや、人型のなにかか? だがまちがいなく種族は人間ではなかった。僕の()にそううつった。みんな漠然としている。そしてその人型のなにかが言葉を発する。

「滅びよ、さもなくば天罰が下るぞ。」

 そして一人、血しぶきを立てながら倒れた。あれは確か、世結(せゆう)の兄君じゃなかっただろうか。

 そして僕は察した。あれは"神"だ。本を読んでそこで出てきたことがあるから分かる。だが、実際に存在するものなのだろうか。存在しないおとぎ話の世界の種族である。

「"(めつ)絶臨(ぜつりん)"」

 突然このホール内全体に響く声が聞こえた。誰の声だ? 聞き覚えがない。だがそこには同い年程度の一人の少年が立っていた。人間だ、どっからどう見ても。だがその少年から発せられるオーラや気迫は人間のそれではない。銀髪に殺意に満ちた紅い眼。ここまで特徴的だったら嫌でも記憶に刻み込まれる。次合うことがあればこの事件を思い出しそうだ。

「みんなは無事か!!」

 パーティーの主催者である僕の父が声を上げる。こいつら殺されたらどうするのだ。僕は"一人"でも逃げる。生きたいからだ。だが世結(せゆう)が目の前に立っていた。

「なんでそんなに慌てているのさ」

「なんでって...、あんなばけものそうなやつがきたんだぞ! 逃げたいに決まってる!」

 僕は必死に逃げようとする。

「もしそのばけものがまだここに存在するならば、君はここから出ようとした時点で殺されている」

「ッ!」

 いわれてみればそうだ。.........ん? てことはあのばけものはどうしたんだ?

「あのばけものはどうしたの?」

「銀髪の俺らと同い年ぐらいのこが殺してたね。そしてその子もいつも間にか消えていたんだけどね」

 僕はこのときの世結(せゆう)の難しい顔を覚えている。なぜそんな顔をしているのか。どうすればよいのか。自分で勝手に考えてみた。


1、俺が一人で逃げようとしたから。

  ならば今度からは自分だけ、という思考をやめればいい。

2、俺が世結(せゆう)と違ってコミュニケーションを苦手としているから。

  ならばよく人と話せばよい。


 この二つしかあの悲しい顔の原因は分からない。だから僕はどっちも行うことにした。いま考えるとどっちもいいことである。だから僕はこれからはいい人間になるっと誓った。



 オレ、黒郷(くろざと)蒼穹(そら)はこの日、星を見ていた。窓から見る星。ああ、きれいだ。そんなことを考えていると、そのとき一年ぐらい前のかくれんぼを思い出した。なぜか。あの『世界を滅ぼすことも可能』な力をもったその個体が現れたことを察知した。嫌な予感がする。すぐにそこへ転移した。【転移魔法】瞬間移動(ムービング)を使用したのだが、この転移魔法はオレが作った。そして魔法を作るには名をつけなければいけない。なのでオレの魔法はなんとなくカタカナっぽいやつにしている。

 そして瞬間移動(ムービング)で行ったそこは世結(せゆう)がいた。なぜ、と聞くまでもなかったようだ。どうみても五大戦力の家系のパーティー中だ。そしてなぜかそこには神がいた。

 オレは神を信用している。なぜなら魔法を作るときは必ず大聖堂へ赴き、魔神(まじん)様に祈りを捧げなければならないからだ。そしていちいち大聖堂へ赴くのが面倒で魔神に家からでも祈りを捧げれられる魔法をつくったのだ。その魔法を大聖堂にて祈りを捧げたとき、魔神により神界へと召喚され、この魔法おもしろいね! 的なことを話した記憶がある。そして魔神とはなかがよくなった。だから神がいることは知っている。

 そしてこの神は秩序神だ。神について聞いているときに要注意神としてでてきた神だ。以前であったときに死なせたつもりだったが、そうではなかったようだ。

「死せよ、さもなくば天罰が下るぞ。」

 まずい。秩序神の言ったことは絶対である。これは秩序神がつくった史上最悪の秩序だ。以前魔神に聞いた。そしておそらく自らは死なない。いった秩序もつくっていることだろう。オレは秩序神を睨む。その瞬間、彼がこの世界の速度を遅くした。否、止めた。それと同時にオレはオレの周りの時空を斬った。危なかった。もし切れていなかったらオレの時間はとまり、みんなこの秩序神に殺されていただろう。

「お前の時間をとめるやつ、空気上を波の様に広がってくから切れりゃどうってことはないんだな」

 オレはあえて煽ってみる。これでこいつがどうでるのかをみて闘う。

「また紅眼(こうがん)其方(そなた)か。其方は人間でなぜ紅眼を持っているのか。我らの摂理に当てはまらん存在である。つまり其方は我が死なせなければならない。そして蒙昧(もうまい)な其方に一つ質問だ。其方は我があんな剣一振り程度で死ぬとでも思っているのか?」

 紅眼(こうがん)。それは本来人間が持つことはなく、特殊な血筋の半分人間半分人間ではないなにか、の者に極稀に現れる特殊能力的なものと語られている。ちなみに"僕"は100%の人間である。ではなぜ紅眼を持っているのか、それは自らの眼に魔法陣を描き、疑似千里眼とかできないかな? とか考えていた時、その紅眼が確かに宿ったのだ。つまり紅眼とは、半分人間半分人間ではないなにかの血をもつものに極稀に現れるではなく、一定の魔力を眼に流し込むと発動するものということだ。紅眼をもった人は観測されたなかでも15~20人程度と予測されている。その人たちは眼に魔力を流して眼を良くして生きてきた種族、ということだろう。そしてその者は皆、制御できずに死んでいった。紅眼は眼前においてのあらゆるものを拒絶するという能力だ。極めれば、一睨みで人を殺せる。そんなものだ。

 そして神が"僕"に向けた問いの答えは簡単だ。

「ああ、死ぬさ。実際今のお前にあのときのそれは感じないからね」

 "僕"は相手が仕掛けてこないことを悟り、自分が先制攻撃をしかけることにした。

「"神之雷(イカズチ)"」

 すい、っといとも簡単に避けられてしまう。

「はっはっは! 滑稽だな。ここは我の時空空間ぞ。其方の攻撃なんぞどれだけの速度があってもよけることはたやすーーー」

 刹那、彼の肩に傷がついた。深いわけでもなく、致命傷なわけでもない。なのになぜか神は悶えている。

「...ッ!??」

「治癒は無駄だ。魔神との契約により神へ攻撃した際、神はその傷を癒せん。その契約を魔法術式に変換し、その魔法術式を埋め込んだのがこの剣だからな」

「そこではない! なぜ我を斬れたのか、ということだ!」

 "僕"は不敵に笑った。否、嗤った。

「『ここは我の時空空間ぞ。其方の攻撃なんぞどれだけの速度があってもよけることは』どーのこーの言ってた割には見えなかったんだね、さっきの攻撃」

 "僕"は【上限解放魔法】無限(アンリミット)という魔法を生み出したことを忘れていた。なぜならその魔法は神を媒体(ばいたい)とするためだ。神が近くにいて、なおかつどちらも同じ結界内にいなければつかえないためだ。神と戦おうとしていて偶然思い出したため、自身の速度を無限、剣の速度を無限として攻撃してみた。ここで秩序神が不自然な動きを見せた。大方、その傷を治療でもしようとするための秩序でも作ろうとしているのだろう。無駄なのにな。

「......? 魔神だと? その程度の下級神族との契約で我を止められるとでも思ったのか?」

「【対神族魔法(アンチゴッド・マジック)魔炎(デス・ファイア)

 彼はたった今新たな秩序を誕生させようとしていた。だから【対神族魔法(アンチゴッド・マジック)】にてそれを阻止した。【対神族魔法(アンチゴッド・マジック)】とはその名の通り、神に対してはとても有効な魔法である。これは魔神の協力があったからこそ、完成したものだ。

「治癒はできないっていったでしょ? 【対神族魔法(アンチゴッド・マジック)】の治癒は我にのみ可能? そんな秩序は生まれないよ」

「ッ! 其方、なぜそれを! なぜ我がつくろうとした秩序が理解できる!」

 "僕"は相手を睥睨(へいげい)し、言い放った。

「いつからここがお前の時空空間だと思っていた?」

「なに? だがここは我が時空魔法をつかったことにより作った時空空間のはずだ」

「時空魔法を行使したのは"僕"だ。やり方としてはお前の魔力の動きを妨害してお前の魔法発動の位置付近から時空魔法を発動すればいいだけ。あと一回目の攻撃はわざわざ遅くして放った。それでお前は"僕"の遅い攻撃が遅く見えたことによって自分の空間だと信じて疑わなかった。あたりまえのことをあたりまえに思って満足してたんだよ君は」

「そんなことがあっていいものかー!!!」

 すさまじいオーラだ。だが俺の時空魔法と同時に神殺しの結界を敷いている。魔神はなぜか、神族? そんなの殺しちゃいな。なんて軽いノリで言ってオレにこの結界を教えてくれたものだ。

 そんな神殺しの結界内ではそのオーラも虚しく消えていく。

「終わりにしよう。奥義ノ()"(めつ)絶臨(ぜつりん)"」

 そのひと振りは自らの空間をも切り裂き、秩序神の秩序をも切り裂き、秩序神を死なせた。

 そこで彼は異変に気が付いた。『神殺しの結界にかかったやつがもう一人いる』。つまり五大戦力の家系のだれかが神族であることである。魔神のようにきさくな神だといいな、と考えるが、その可能性は極めて低い。なぜなら、感知はたやすいがそれが誰なのかが全く分からないからである。つまり自分が神であることを隠さなければならない。もしくは自分が神だと思っていない、か。

 あ、あと秩序神の最初の言葉、『死ね』だったか。あれは言葉を神殺しの結界に封じ込めたことでなんとかなったが一人守れなかった。みると世結(せゆう)の兄だ。オレもよくされてたっけか。だからついでに蘇生をしておいた。そして近くの公園へと駆けた。


 あれは、見たことがある。当時の俺、天田(あまだ)世結(せゆう)はそう思った。一年前のかくれんぼが脳内にフラッシュバックする。突如現れた強大な圧、その姿形をたった今初めてみた。とても落ち着きがある顔で、大人げな雰囲気がある。碧く澄んだ髪は彼の大人げな雰囲気をさらにかきだしている。だがその眼が、殺気に満ちており、その穏やかさをかき消している。

 そのとき、瞬間移動(ムービング)を感知した。俺は蒼穹(そら)から様々な魔法を教わっていたため蒼穹(そら)が魔法を使うとだいたい彼がどんな魔法を使用したのかがわかるようになった。ちゃんと隠していた場合はわからなかったけど。

 蒼穹(そら)がいつのまにか中央に立っていた。彼は時空空間を展開していた。なぜか俺を巻き込まずに。だから俺はそのままの体制を崩さないようにしておいた。

「お前の時間をとめるやつ、空気上を波の様に広がってくから切れりゃどうってことはないんだな」

 あれ、この時空空間って蒼穹(そら)のじゃないのか? と思ったが、よく考えれば蒼穹(そら)が相手の部分から時空空間を広げていたのは確実のため、おそらく秩序神が展開したと錯覚させたいのだろう。そこから蒼穹(そら)は魔法をゆっくり投げたり、話をしていた。

 どうやら魔神と契約を結んだらしい。魔神のところへ遊びに行くときは、よく連れて行ってもらっていた。だが契約のときはちょっとごめんねと断られた。契約の内容も気になるが、その一つは『神へ攻撃した際、神はその傷を癒せん』なのだろうが、少々気になる。契約は3の条件までを提示できる、というのがこの世界での神との契約らしい。そのうち一つをこんなことに使うだろうか? それぐらいなら『一瞥すると神を滅ぼせる』のほうがよほどマシであろう。だが、まず気になるのはどうして魔神は神が壊滅しかねないこの契約を結んだのか、ということだ。どんな利点を提示されても自分が死ぬ可能性があるなら絶対にそんな契約は結ばない。もしや自分は殺さないでねっていう条件つきだったかもしれない。

 だが考えてもしかたがない。そんなことを考えていたら戦いが終わったようだ。悠真(ゆうま)の父がみんなの生存確認をする。みんな無事か、と。だがそこでなぜか悠真(ゆうま)が逃げ出そうとしていた。

「なんでそんなに慌てているのさ」

 そういいながら俺は彼の進路をふさぐ。どうやら殺されたくないそうだ。だから言ってやる。

「もしそのばけものがまだここに存在するならば、君はここから出ようとした時点で殺されている」

 と。まあそんなことより俺は蒼穹(そら)がなぜ瞬間移動(ムービング)を使わず走ってでていったのか、という点だ。彼は足が速いなんて次元じゃないから俺が意識してみていて精々起動が見える程度だ。だからこっちきてくれ、というメッセージとしか感じられない。でもどうしてだろうか、今回の神の件? だとしたらパーティーが終わった後でいいはず。つまり違う目的? 瞬間移動(ムービング)が使えなくなるほど魔力がなくなるなんてことはありえない。だから意図があって走って去っていったはずだ。行った方向になにかあるのか、はたまた今すぐでなければいけない用事があるのかどうか。

 俺は急いで彼が向かった方向、おそらく近くの公園へと向かうことにした。そのとき悠真(ゆうま)

「僕は...!」

 と、何か言いたそうだったが、蒼穹(そら)がなにしでかすか分からない以上、彼のもとへ行くしかないと思いそこへ向かった。

今回は悠真は自分のことしか考えてなかったけど勘違いをきっかけに他人のことも少しは考えられるような人になったんだよ、ということが書きたかったのですが...。なぜか戦いの方に力が入っちゃいました...。

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