表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヨッシーのショートshort「耳人(みみびと)」

作者: ヨッシー@

ヨッシーのショートshort「耳人(みみびと)


ふわぁ〜、

変なアクビがでた。


眠い、

昨日の徹夜が効いたのか?

頭を振ってみる。

カラン、カラン、何か音がした。

何だ?

耳垢でも溜まっているのかな?

久しぶりに耳掻きでもするか、

私は、引き出しの奥にある耳掻き棒を取り出した。

耳掻きをする。

ガサッ、ガリ、ガリ、ガリ、

気持ちいい。

コロン、

何だ?

何か大きいものが出た。

取り出す。

中から、小さなパンのような物が出て来た。

つまんで見てみる。

茶色い生地、丸い形、香ばしい匂い。どっからどう見てもパンだ。

不思議なことがあるものだ、パンに似た耳垢。

私は、少々変に思ったが、耳掻きを続けた。

ガサッ、ガリ、ガリ、ガリ、

コロン、

何だ?

何か大きいものが出た。

取り出す。

中から、小さな皿のような物が出て来た。

つまんで見てみる。

陶の材質、平たい形、白い色、どっからどう見ても皿だ。

不思議なことがあるものだ、皿に似た耳垢。

私は、少々変に思ったが、耳掻きを続けた。

ガサッ、ガリ、ガリ、ガリ、

コロン、

何だ?

何か大きいものが出た。

取り出す。

中から、小さなスプーンのような物が出て来た。

つまんで見てみる。

金属の材質、平たい楕円形の先、長い持ち手。どっからどう見てもスプーンだ。

不思議なことがあるものだ、スプーンに似た耳垢。

パンに皿にスプーン、まるで食事だな。

私は、少々変に思ったが、耳掻きを続けした。

ガサッ、ガリ、ガリ、ガリ、

コロン、

何だ?

今度は、かなり大きいものが出た。

取り出す。

中からは、小さな人のような物が出て来た。

つまんで見てみる。

手足があり、ズボンを履き、シャツを着ている。どっからどう見ても人だ。

不思議なことがあるものだ、人に似た耳垢。

すると、

「おい」

何だ?

「おい、お前だよ」

小さな人が話しかけてきた。

「さっきから、俺の食事の邪魔ばかりしやがって」

小さな人は怒っていた。

「俺が食事をしている時、耳掻き棒でガリガリとかき回し、挙げ句の果てに、パンを持っていった」

「そして、黙っていたら、今度は皿とスプーンもだ」

「どういうつもりなんだ」

「えっ?」

私は、突然の状況に理解が出来なかった。

「あなたは、誰ですか?」

「知らないのか、耳人だよ」

「耳人?」

「耳人ってのはな、お前が生まれた時から耳の中に住んでいるんだよ」

「ええっ、私が生まれた時から?」

「そうだよ、生まれた時からな」

「どうやって?」

「知らないのか?」

「はは〜ん、学校で教わってないな。人間はな、みんな生まれた時に、耳一つずつに俺たちみたいな耳人が入るんだよ」

「し、知りませんでした」

「まったく、お前は無知だな〜」

「あなたは、私の耳の中で何をしているのですか?」

「知らないのか?」

「お前の耳に入ってくる音を振り分けているんだよ」

「振り分けている?」

「そうさ、必要な音、必要で無い音、それを俺が振り分けているんだ。いわゆるミキシングだな」

「そうだったのですか、いつも有難うございます」

「まあな、仕事だからな」

「俺たちが居ないと大変だぞ。何でも聞こえてしまって、頭がパニックになってしまうぞ」

「そうだったのですか。いつもありがとうございます」

「まあな」

「そう言えば、たまに、キーンという耳鳴りが鳴る時がありますが、あれは何ですか?」

「悪い悪い、あれはミキサーの調整でな、ハウリング現象だ」

「そうだったのですか」

「しかし、補聴器をしている人はどうしているのですか?」

「ああ、補聴器をしている人はな、俺たちみたいな耳人が死んでしまって、ミキシングできなくなった人が着けるんだ」

「死んでしまって?」

「そうさ、俺たちも食事をとらないと死んでしまうからな」

「死んでしまうと、ミキシングができくなってしまうんだろ。だから、補聴器で補うんだ」

「大変ですね」

「ああ、大変だ。だったら気をつけてくれ」

「解りました。気をつけます」

「これからはな、耳掻きをする時はちゃんと連絡をとってから耳掻きをしてくれ」

「解りました。しかし、どうやって?」

「スマホに電話してくれ、LINEでもいいぞ、ほい、連絡先」

連絡先を渡す耳人。

「解りました。必ず電話します」

「解ったら、悪いが、俺とパンと皿とスプーンを元に戻してくれないか。食事の途中だったからな」

「はい、解りました」

私は、そーっと彼らを耳の中に戻した。

そして、彼は最後に一言言った。

「反対側にはな、別の耳人が住んでいるからな」


えっ!誰だろう?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] すごくおもしろかったです! オチも完璧!
2023/05/24 00:45 退会済み
管理
[一言] 個人的に、こういう話好き♪ ヲチに、もう一文欲しかった。いきなり終わった感が残念でした。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ