第九話:『ひっどい出会い』
スキルというのは使いよう、魔物の体は工夫次第。
分析した後《掠め取り》を利用して致命打を与える。
ミニトレントの中核を絞り上げて奪えば、無駄な消耗も少ない。
「ミニトレントの中核って…なんか気持ち悪いな」
さっきは叩き潰してたが、今度は狙って引っ張り出したのもあり。
そこには松ぼっくりから無数の根っこを広げているような気味の悪い器官だ。
「まぁいいか、これで五つ、まぁ任務達成扱いだろ」
幸い大きな器官ではないし、念のため討伐証拠としてひっつけておく。
そうそう疑われるものでも無いが、初心者ってのは常々怪しく見られるものだ。
登録の時も念を入れてミーシャ対策にスキルを隠していたから尚更。
まぁ問題なくこのまま帰還だ、そう思いつつ帰路につくと…。
「そこだっ!」
瞬間、眼前に刃が迫り、ダンテは間一髪下がれば。
はらりと前髪が切れる…凄まじい切れ味だ。
「…躱しましたか、珍しい」
目の前には、瞳を包帯で隠す細身の刃を構えた女。
冒険者のマークを付けている…えっ、なんで狙われた!?。
「待ってくれ!?俺も冒険者だぞ!?」
「…え?」
「ミニトレントじゃねぇ!俺も同じ依頼帰りだって!」
わたわたとダンテは弁明する、確かにさっきミニトレントを取り込んだが。
自分自身がミニトレントになった記憶は一切ない。
このままぶった切られるのは絶対勘弁だ!。
「…いや、アレ?でも気配が…いや」
「俺はダンテ!ダンテ・シュタイン!冒険者成り立てのルーキー!」
「あ、あわわわわ…」
わなわなと、目の前の女は困惑し、そして。
「すいませんーーッ!!!」
躊躇うことなく、土下座をかました…
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「あ~…まぁ、多分俺の持ってる中核器官で勘違いしたんだろ」
「…ええ、恐らくは」
「君の名前は?」
「私は…ステラ・ユキノセです」
盲目の女剣士は名乗り、正座で向かい合っている。
「でも、そもそもどうやって見分けてんだ?
その…目が、だし」
「ああ、いえお気遣いなく…私のスキルによるものです」
「スキル?」
「『魂眼スキル』というもので、ユニークに分類されるものです」
「ユニーク?」
「この世に一つ、です」
ああ…そういえば俺の遺伝子スキルもそう言うんだしな、と思いつつ。
それが何で盲目につながるか、も気になる。
「どうして目が?」
「私は魂でモノを見て判断しますので、魂に目を与える代わりに視力を失っているのです
とはいえ常に発動は厳しく、いつもは耳で判断してます」
「あ~~…」
スキルのデメリットか、無いものでも無い。
普通のスキルでもたまにある。
「まぁその、なので稀に…こういう、勘違いも」
「いやいいですけど、その」
「…はい」
どことなく落ち込んでいる
「……まぁ、何かした方が納まりもいいですよね」
「…はい!」
今度は嬉しそうだ、責任感強いな。
「…じゃ~~」
とはいえ何するのが良いんだ?
「ああそうだ、なら」
「…?」
「ミニトレントは良いんで、他の依頼の時手伝ってくれません?」
「手伝い…パーティーですか?」
「ああそうか、そうそうパーティー」
まぁ、実際助けになる、俺は一人でやるには経験不足だし。
だから彼女みたいに剣士出来る人が居ると助かる。
「把握しました!では私のカードと登録しましょう!」
「登録…?」
「ええ、そうすれば連絡もいつでも出来ますので」
「…成程、じゃあよろしくお願いします」
そう言ってカードを取り出し、ステラの名前を刻む。
…経緯は兎も角、初めての仲間が出来上がった、のだろうか。
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