第七話:『クエスト、順調進行中』
ギルドの中と言えば、殷賑かつ盛大な雰囲気そのものであった。
ダンテの知るものは空気の悪い張りつめた職場だったが…それは此処には無い。
「おぉ…」
と感嘆の声を漏らしつつ、カウンターに立つ職員さんに向かう。
いろいろ気になるが、まずは手続きを優先だ。
「すいません、ギルドに登録したいんですが…」
「はい!冒険者登録で構いませんか?」
「それでよろしくお願いいたします!」
茶髪を束ねた年下の職員が、スラスラ手続きを終えていく。
過去の所属があれば出来ないが、幸いその契約はとっくに破棄されていた為
問題なくこのままロゴス所属の冒険者になれた。
「ではダンテ・シュタイン様、ロゴスでの活動を期待しております
クエスト受付等あれば再びこちらにどうぞ」
「ありがとうございます、よろしくお願いいたします」
礼をしつつ、ダンテはクエストボードに目を向けた。
そこにはいくつもの依頼があった、しかしダンテの目的は勿論。
「…狙いはミニトレントだな」
植物の魔物、ミニトレントの討伐依頼。
本来特段稼ぎが言い訳でも効率が言い訳でもない、だが。
「植物には太陽光を魔力に変換する機能がある…
それを分析できれば、更に安定した供給を得られるな」
ということで、今回ダンテが選んだ依頼はソレだった。
ミニトレントの討伐、数は5から。
「ミニトレントによる任務中の盗難は多いですからね
ランクは低いですが大事な仕事です、よろしくお願いいたします」
目的は違うが、頑張るのは変わらない。
ダンテは奮ってギルドを飛び出したのだった。
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そうして、支給された装備を整えた上で森に到着した。
この森はロゴスの貿易の道によく使われる他、クエストの舞台にもなる立派なロゴスの財産だ。
「ミニトレントは、油断してる相手以外の前には出ない…」
ただまぁ、それらは人間の都合だ。
ダンテにはダンテのいい見分け方があるワケで。
手を開き、そのまま木に接触すれば。
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名:ポプラ 学名:ポプルス
[解析項目]
肉体:×
能力:×
精神:×
???:×
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「外れだな、とはいえ見分けられるな」
手を離して、隣の木に、さらに隣に。
"分析"を活かして姿を現していないミニトレントを探す。
何度も何度も繰り返し、ついに。
「…よし」
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名:ミニトレント 学名:シーフマイクロウッドモドキ
[解析項目]
肉体:〇
能力:〇
精神:×
???:×
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「見つけた!」
目の前に静止している木に触れた手が、しっかり魔物だと教えて。
ダンテはそのまま左腕に意識を集中させる。
それはスライムを貫いた時、無意識に行っていた行為である。
「組織、硬質化…うらぁ!」
一見するとそのままの左腕を叩きつければ。
木片が砕けて幹が割れていく、スライムなら貫かれるが木ならこんなものだ。
「ピギイイッ」
「不意打ちされ慣れてないだろうな!」
悲鳴を上げるミニトレントを、更に左腕で叩きまわして。
その内静かになっていく。
「…よし、仕留めたな」
無惨に砕けた木の幹を眺めつつ、ダンテは息を吐く。
しかしダンテにとってはここからが本番だ。
「トレント、頂きます」
木片を手にとり、ダンテは呟いた────
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