第五話:『ゲノムスキル』
わかってしまえば、そこから先を知るのも難しくないもので。
今度はスライムになった自分自身を齧ってみれば。
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名:ダンテ・シュタイン 学名:ホモ・サポエンス
[解析項目]
肉体:〇 追記:スキルにより変質中
能力:〇
精神:〇
???:〇
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このように、自身の情報群も飛び出て来た。
「意識しなきゃ、起動もしないってワケか」
それもこれも、力を奮ったからこそ…だったワケで。
これまでの活動では"知らない"から"使ってない"ダンテには決して使えないモノだったのだ。
「希少なスキルの欠点、久しく忘れてたな」
前人未到の才覚とも言えるそれらのスキルは、唯一無二故に情報は0のスタート。
それこそミーシャがギルドマスターになっているのは"普遍的なスキル"の中での有用なモノを得て
それらを先人の経験から効率良く扱えるからである。
「それがない俺は、確かに無才だ…でも"さっきまで"だがな」
[遺伝子スキル]の弱点たる体力消費の理由をダンテは理解した。
これは大まかな分析で行うにはその分大きく体力を消費してしまう…しかし
先程スライムに対してその体を取り込み"分析"し、その上で勝手知ったる身体を作り替える過程は。
死に物狂いの覚悟もありギリギリダンテの全てを掛けて引き出せる体力で間に合った。
なら今は違う、スライムの肉体に変った後はダンテは衰弱死するはず"だった"。
「すげえ体力…いや、魔力を感じる…これは」
スライム、それらは水分に溶け込む魔力を吸い上げる力がある。
とはいえ単純な生命体であるスライムには本来それほどの豊富なリソースは要らないが。
「俺に取っちゃ、雨が降っているだけで120%元気になるわけだ…」
命と引き換える様な消費すらお釣りが返ってしまう程の魔力供給をダンテは得た。
この時確かに、ダンテの[遺伝子スキル]の弱点は消え失せた。
「…俺は、なんにでもなれる力を持ってたんだな」
ダンテの何処までも朧げな未来はしっかり形になっていった。
無才なら、これからどんどん力を得て行けばいいんだ、普通には出来ない、だが。
「俺には出来る、俺には出来ちまうんだ!」
ダンテは、自分の"才能"を初めて知った。
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