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第四話:『気づき』

その日の雨は酷く、例えダンテ一人が息絶えても誰も気が付く事は無いだろう。

その姿、その声、その匂いすらかき消してしまう予定だった…が。


スライムを成していた薄膜が弾けて、パチンと崩れる。

どろりと体液をブチ撒けてそして、静かになっていた。

理由は単純、スライムの体が素早く貫かれたからだ。

他でもない、この男ダンテの手によって。


「…これは?」


ダンテは、いくつもの謎と困惑に溢れていた。

死に掛けていた体はやけに元気で、寒さは気にならない。


なにより…。


「…雨が強まったのかな、すげーうるさいな」


その"耳"には激しく音が注がれて、痺れてしまいそうだったからだ。

そんな異常を感じつつ、このまま歩を進めようとしたその時。


「…あ?」


異様な感覚、足は動かずしかし前に進む。

麻痺でもしたかと体を見れば。


────その体はスライムのように透けて溶けている。


「おわぁあああ~~~!?!?!」


転げて、水の音が響く。

ダンテの体に夜空が透けている、雨は浸透していく。


「うっそだろ…えっ、何だこりゃあ!?」


体に触れて確かめる手も溶けて、しかし手先だった場所から感じ取る物

それは…。


「…俺の、[遺伝子(ゲノム)スキル]…?」


無意識か、当初発動していたものか。

体の芯まで自身の能力の影響を感じる、それも深く結びつくように。


「噓だろ、こんな効果…あったか?」


思い出しても、下位互換能力にすぐガス欠の技能だった筈のソレは。

自分ですら信じられないが、この体を"スライム"に変えているのだ。


「…そういや、俺の身体を作り替えるスキルだってのは…昔聞いたな

でも、こんなに変えるなんて効率悪すぎて無理じゃ…?」


しかし、ふと視界に写る半透明の身体で、昔得ていた知識が

偶然か必然か、ダンテの疑問を説明して見せた。


「スライムは自然の魔力を、水を通して引き出せる…?」


雨水を無尽蔵に吸いつくすこの体と。

本来半透明どころか変形すら厳しい魔力消費。

その答えは、恐らく。


「…"スライムの身体に無理やりスキルで変わったお陰で雨から魔力を得て回復した"訳か…?」


そうとしか言えない、尤もスライムの身体をイメージする知識等無かった…

「いや」

ふと思い出す、先程の瞬間。

スライムの身体を嚙みちぎるその時だ。

脳が弾けるような感覚と、この勝利。


「…まさか?」


手で、先程始末したスライムを掬い上げてずず、と啜れば。

────────────────────

名:スライム 学名:アオトロケゴケ

[解析項目]

肉体:〇

能力:〇

精神:×

???:×

 ⁝

────────────────────

と、脳に励起する情報群が確かにスライムの"知識"を映し出す。


「マジか、ハハ」


こんなことするわけない、なんて悪態つく。

魔物なんて食う文化は無かったのだ、気づける訳も無い…だが。


「俺」

「無才じゃねーじゃん」


雨の中、雲の隙間に

ダンテは確かに光明を見出した。



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