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第三話:『ダンテの始まり』

「ハッ…ハァ…!」


息を荒く、足は冷えて、泥を草が跳ねて、男は草原を駆ける。

雨の勢いが強いからか、幸運にも獣は男を見つけていない、が。


「キッツ…俺、死ぬんじゃねーの…マジで!」


本来無駄に消耗の激しい[遺伝子(ゲノム)スキル]を常用してるツケか。

俺は内外ボロボロで、維持もおぼつかなくなり体は冷えている。


つまり、人は死ぬのだ、この男は死に瀕している。


「……クソ、クッソ…って、グアッ!?」


その不運に付け入るように、体に重い物がぶつかる。

半透明の砲弾、そう。


「スライム、かぁ!?」


液体の体を丸めて、ダンテを弾き飛ばしたソレの名はスライム。

魔物の中では弱いが、その液体故に雨の日はむしろ鋭い感覚を得る。

だがそれは。

「強い魔物から逃げる為の癖に…もしかして、ああ…そうか」

そう、スライムは気づいていた、この男は…間違いなく。


「"今の"俺は"体のいい獲物"だって思ってんのか!?」


鳴き声などスライムは上げない、だが。

それを肯定するかのようにスライムは体をぶつける為に跳ね上がる。


「畜生…畜生!」


ダンテは呻き、また悲鳴を上げる。

スライムなどダンテ"ですら"本来苦戦しない相手、無才でも負けぬ無能、しかし。

今のダンテに出来ることは無様に足搔く事だけだ、何もないのだ。


「俺は、俺は…!こんなになのか!?」

ダンテは叫んだ。


「俺はこんな死に方でいいのか!?」

ダンテは驚いた。


「もっと、もっとマシな人生じゃないのか!?」

ダンテは泣いた。


「高望みなんてしなかった、のに…!」

ダンテは怒った。


そして、幾度となく繰り返した感情の発露の末。

気が狂ったとすら思えるダンテは、声にならない叫びと共に。


「俺は嫌だああああああッ!!!」


棒切れのような腕でスライムを掴み

そのまま、泥まみれの牙をスライムに突き立てた。


それが、ダンテの二度の始まりになった。

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