第8話 洞窟の中で
数時間経ったあと、気づけば、俺は壁の中にある小さな洞穴の中にうずくまっていた。
辺りには凶悪な魔物がうじゃうじゃ歩き回っている。
時間が経つにつれ、最初は全然いなかった魔物が、こちら側に現れ始めたのだ。
最初の1匹を見た時、俺には絶望しか無かった。
どうみたって勝てる相手じゃない。
俺はろくに右手を動かせないし、貧血の状態だ。
しかも、戦闘スキルをひとつも持っていない。
もし、やつに襲われたら、俺は2秒とも掛からずに殺されるだろう。
でも、おれだって人だ。生き物だ。
死にたくはない。
だから、まず俺はカバンの下を噛んだ。
そして、カバンの布に付着したポーションの液体を啜った。
おかげで、傷は完治していないが、痛みと出血量は減った。
次に、俺は周りを観察した。
どこかに隠れられそうな場所はないかと。
そして、魔物に気づかれないよう、静かに少しずつ動いた。
結果、1箇所小さい洞穴を見つけることに成功した。
今はその穴の中にいる状態だ。
しかし、状況はあまり変わらない。
このままでは、俺は餓死して死んでしまう。
そう、俺は一時的に安全を確保したのにすぎないのだ。
「ったく。何やってんだろうな?俺。こんな危険な場所に来て、1人で取り残されて...。お母さんが知ったらどう思うんだろうなぁ?」
俺は腹が減りながらも必死に我慢して嘆いた。
助けは来ない。
冒険者がたまたま通りかかるだなんてことも、ありえないだろう。
本当の孤独。
死を待つのみの時間。
俺はとても恐ろしかった。
〜昔、冒険者になりたいと言った時、周りからは冷たい目で見られた。
当たり前だ。治安も悪くて、常に命懸けの仕事に就きたい人なんて、あまりいない。
まぁ、成り行きでなる人は多いのだが、そんなことは関係ない。
そもそもスキルを得られない分際で、冒険者になろうだなんて、頭おかしいのだ。
俺は周りから軽蔑された。
でも、お母さんだけは、こんな俺を応援してくれた。
彼女は俺に、なりたいものになりなさいと言ってくれた。
当時、俺にはあこがれがいたのだ。
俺をピンチに救ってくれたSSランクの冒険者が1人。
彼は俺にある言葉を残してくれた。
「冒険者ってのは、冒険してなんぼだろ?」
俺はこの言葉に感銘を受けた。
とくに魅力的な部分なんてない。
しかし、とても印象に残ったのだ。
当時、周りから物としてしか扱われなかった俺は冒険がしたかったのかもしれない。
自由な旅がしたかったのかもしれない。
とにかく、俺はこの言葉を聞いて、冒険者になりたくなった。
そして、お母さんはこんな俺を応援してくれたのだ〜
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