第5話 無能なスキル
俺は『スキルプレート』という、自身のスキルが全て書かれている板をみんなに見せた。
「本当に何もスキルがないんだ。」
「馬鹿なァァァァ!」
ルンゼとガルドはとても興味深そうに俺のスキルプレートを眺めた。
スキル『スキルプレート』。
それは誰しもが持っているスキルである。
どれだけ素晴らしいスキルを持っている人でも、どれだけ微妙なスキルを持ってる人でも、この『スキルプレート』は、皆が関係なく持っている。
というか、唯一皆に平等に配られるスキル、それが『スキルプレート』なのだ。
これを使えば、自分が持っているスキルを確認したり、他人にスキルを見せることが出来る。
ロックは俺の隣で言う。
「というか何だこのスキル『不明』って。見た事も聞いたことも無いぞ。」
俺のスキルを見て驚いている2人の横で、ロックは酒を飲みながら優雅に食事を食べていた。
彼の質問に俺はただしんみりと答える。
「さぁ?俺にもわかりません。俺がいくら努力してもスキルを得られないのは、多分これが原因なんですけど...」
生まれてから初めてスキルを獲得した時、俺の親は大喜びだったらしい。
スキル『不明』。それは今までに誰も聞いた事がないスキルだったからだ。
これで、俺の両親も貧乏な生活から抜け出せるかもしれない。
そう俺の親達は考えていたようだ。
まぁ、俺はそんな昔の事覚えてないのだが...
俺が5歳の頃、親はかなり貯めたお金を使って、鑑定士に依頼し、俺のスキル『不明』を鑑定してもらった。
結果は最悪。
なんと鑑定士にもスキル『不明』は鑑定できなかったそうだ。
ちなみに『鑑定』とは、スキルの詳細を調べるスキルの事であり、この鑑定スキルを持っている人のことを鑑定士という。
そんなスキルだから、普通は鑑定不可なんてないそうだが、俺はあまりにも例外すぎた。
結果、今も、スキル『不明』の正体はわからず、俺は落ちこぼれ扱い。
更にはほかのスキルすらも手に入らないという始末だ。
「失望しましたか?スキルを得られない冒険者なんて...」
俺は、他の3人に聞く。
そもそもロックさんは、弱い俺に同情して、戦い方を教えてあげるために、俺をパーティーに誘ったのだ。
だが、実は俺はスキルを得ることが出来ない。
いくら努力しても強くはなれないのだ。
3人は複雑な表情で俺を眺める。
とても怖い数秒間だった。
もしかしたら、また俺は見捨てられるのではないか?
しばらくしてロックが口を開けた。
「まぁ正直失望はしたな。だが、きっとスキル以外にも実力を上げる方法はあるかもしれない。
なぁ、ディアロ。お前が冒険者として生計を立てて行けるようになるまで俺らに面倒を見させてくれねぇか?こんな話を聞いて、俺はお前をほっとけねぇ。」
隣に座っていた2人も、ロックの言葉に頷く。
なんていい人達なんだろう。
今まで辛い思いをして、辛い思いをして...
ずっと酷い扱いを受けていて...
ただ悪いスキルを持って生まれてきただけなのに...
望んでそのスキルを手に入れたわけじゃないのに...
気づけば、俺の目には涙が浮かんでいた。
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