第19話 doragonic redo⑤
やつの口から放たれたブレスは、ものすごい勢いで俺に向かってきた。
もの凄い魔力密度。
肌でも感じられる程のエネルギー。
俺は地面に膝を着いて、そのブレスを眺めた。
そして思った。
1秒が何時間にでも感じる。
屈辱、挫折、復讐心。
何かわからないが、何かが頭を駆け巡る。
行き場のない何かが、そっと自分自身に語り掛ける。
ドラゴンは言う。
「さらばだ人間。」
俺は黙る。
地下深くのダンジョンで。
一体俺はどれだけ深いところに落とされたのだろうか?
どれだけの間、落下していたのだろうか?
あぁ、心が痛い。魂が痛い。胸が痛い。
馬鹿みたいな人生だった。
憧れに近づきたくて...
あの人のようになりたくて...
ただそれだけの理由で冒険者になって...
夢物語だったんだなと、今になって自覚する。
スキルを持っていない人が、スキルを持っている人と同じような人生を歩むなんて不可能な事だったんだ。
最初からわかっていた。
わかっていたけど諦められなかった。
目の前には俺に殺気を向けているドラゴンが居る。
超絶格上相手だ。
俺が戦ってかなう訳がない。
攻撃をひとつ受けたら即死だ。
これはどうしようもない現実。
決して抗うことの出来ない世界の理不尽。
「ほんとにバカみたいだ...」
俺は、迫り来るブレスの前で、そっと呟いた。
「ごめん、お母さん。」
次の瞬間俺の体はドラゴンブレスによって粉々にされた。
パラパラ...
体は散り散りになって散ってゆく。
ドラゴンは無言でディアロの死体を見つめ、背を向けた。
ーしかしー
『条件が達成したことにより、スキル『生存』を入手しました。スキル『生存』により、ディアロ・ボロスを復活します。』
とつぜん強力な闇が俺のチリの上に現れる。
そして闇は、俺の塵になった体を、瞬く間に復活させた。
「なっ!?これは...!」
ドラゴンは復活した俺を見て叫ぶ。
一方俺はドラゴンに向かって手をかざした。
そして、
「ファイアーブースト!」
『スキル『魔法創造』により、魔法『ファイアーブースト』を作成しました。魔法『ファイアーブースト』はスキル『魔法』と統合されました。』
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