第14話 最強の魔物
「我の敷地に何の用だ? 人間。」
しばらくの沈黙の後、突然ドラゴンは喋り始める。
「え? ドラゴンって喋れるのか!?」
俺は咄嗟にそう言ってしまった。
それを聞いたドラゴンは腹を立てて鬼の形相で俺を見る。
「質問は答えで返すものだ。人間。もう一度聞く。我の敷地に何の用だ?」
最強の魔獣と呼ばれるだけあって、なんという威厳だろうか?
俺は手に汗握りながら答える。
「用なんかないよ。ただ俺は地上に帰りたいだけだ。」
青く、宝石のように輝く鱗に、エメラルドのような緑色の目。
俺は、凶悪そうな反面、とても綺麗な外見をしたその魔獣に違和感を覚えた。
ドラゴンは頭を突き出して、俺に反論する。
「地上に帰りたいだけ? その為にわざわざこんなところに来たのか? 魔物がいないということは、そこには強力な魔物がいるということ。それは人間もよくわかっているはずだ。それなのに、お前はここに侵入してきた。その理由が地上に帰りたい? 嘘をつくのは大概にしろ。あまり我を舐めるなよ。もう一度聞くぞ。目的を言え。分かりきっていることだがな。」
「だから言ってるだろ。俺は地上に出るための道を探しているだけだ。それに、このエリアに入ったのは、俺が完全に油断していただけで、なにか目的があってきたのでは無い。」
ドラゴンの反論に対して、俺はさらに反論する。
しかし、やつは聞く耳を持たない。
「ほざくな小僧。貴様が我に害をなそうとしているのはわかっている。そもそもこんな深い層まで来るような冒険者は、からなずダンジョンの地図を持っているから、迷うことなどありえんのだ!」
いやいや絶対に迷子になることはありえないっていうのはさすがに言い過ぎだろ。
地図を持っているからって迷う時は迷うだろうし。
俺はつい心の中で突っ込んでしまった。
っていうか、このドラゴン妙に冒険者について詳しくないか?
しばらくしてドラゴンは俺に近づいてきた。
そして、ふぅぅぅうう、と鼻息を吹きかける。
正直もの凄い風圧だ。
まるで、竜巻のど真ん中にたっているような、そんな感覚を覚えた。
次の瞬間、やつは口を大きく開けて、俺を食うように襲いかかる。
俺は間一髪で避けたのだが、それからすぐ、足に再び違和感を感じた。
「まさか今の攻撃を避けられるとは、驚いた。」
ドラゴンは上からじっと俺を見下ろして言った。
やつの顔を見ると、本当に驚いた表情を見せていた。
まさか、最強の魔物と呼ばれているドラゴンに褒められる日が来るとは、夢にも思っていなかった。
だが、今の俺に無駄口を叩く余裕が無い。
俺はただ静かにやつを睨み続けた。
良かったらブックマークと高評価をお願いします!




