第13話 強敵ドラゴン
「グゥオオオオオオオオ!!!!!!!」
突然近くから振動と共に叫び声が聞こえた。
俺の背筋はものすごい勢いで凍る。
「ああぁ。まずい、これは本当にまずい...」
最近、『魔法創造』を手に入れたことによって、俺は調子に乗っていたのかもしれない。
相当なドジだ。
そもそもダンジョンで魔物がいない場所には近づかないというのは、冒険者の中では常識である。
なぜなら、そんな場所に踏み込んで無傷で生還した冒険者はほとんどいないからだ。
勿論この常識は俺にもある。
だからこそ、俺はここ半日の自分を恨んだ。
呑気に何も考えずに動いていた自分を恨んだ。
もし、もっと俺が注意をしてダンジョン探索に励んでいれば、このような状況には陥らなかったのかもしれない。
俺はかなり険しい顔で前を見る。
そこには1匹の魔物がいたのだ。
たった1匹の、誰もが恐れた魔物…
ドラゴン
「グゥオオオオオオオオ!!!!!!!」
ドラゴンは再び大声で叫び、羽を広げて俺を威嚇した。
その驚異は、崖に落とされてから初めて遭遇した魔物の数百倍、探索中に遭遇したミノタウロスの数十倍はある。
俺の頬に汗が滲み始めていた。
まるで自分が地獄の番人であるとでも言いたそうな形相。
そして、圧倒的な存在感。
「無理だ逃げないと...」
俺は無意識のうちに後ずさりしていた。
何故こんな狭い洞窟の中にいるのかは謎だが、幸いここは天井が浅い。
ドラゴンは最大の武器である飛行が使えないはずだ。
俺は必死に逃げた。
逃げて逃げて逃げ続けた。
ふと後ろを見ると、ドラゴンは居なくなっていた。
俺は不思議に思って周りを見る。
「逃げ切ったのか?」
俺は地面に膝を着いて安堵した。
だが世の中そんなに甘くない。
ここはドラゴンのテリトリーだ。
やつは決して人を見逃すことは無い。
次第に、俺は、足を地面に引きづられるようになった。
今までと比べて、水に含まれる水分が増えたのだ。
気付けば、疲れてもいないのに、俺の息は上がっていた。
はぁ、はぁ。
突然足元から何かが出てくる。
「こ...これは!」
物凄い殺気を感じ、俺は咄嗟にその攻撃を避けた。
ドバアアアアン!!!!!!!
前を見ると、ドラゴンは地面から顔を出していた。
恐らく、泥の中から俺に噛み付こうとしていたのだろう。
奴は不自然な顔で俺を見る。
「土の中を泳げるのか? なんだよそのスキル。」
俺はボソッと文句を言って、やつを睨みつけた。
やつもまた俺を睨む。
しばらくの間、そこには冷たい空気が流れ続けた。
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