神社で遊んじゃいけない理由
久々の公式ホラー応募作品です。
季節は夏真っ盛りと言わんばかりにセミが五月蠅く鳴く。
空を見上げれば雲一つない快晴、代わりに太陽が主張するように熱気が降り注ぐ。
近くに自販機を見つけ、飲み物を買うと喉を潤さんばかりに勢いよく飲んだ。
火照った体に全身染み渡るのが感じた。
空き缶を捨てると少し落ち着いたからか、周囲一面を見渡す。
「久々に帰ってきたが、懐かしいや」
高校卒業してから地元を離れ、仕事関係上県外へと移っていた。
お盆になって休みがとれたので戻ってきたものの、知り合いは皆忙しいらしく連絡は付かない。
いや、そのうちの何人かは居ないと言われた。
電話番号自体、昔なので電話し間違いかもしれなかったので追及はしなかった。
「ん?」
もういーかい。そう耳に聞こえ、ふとそちらに目を向ける。
公園内で子供達がかくれんぼをしている風景が目に映った。
懐かしい。そう思いながら僕は子供達が楽しそうにかくれんぼで遊んでいるのを眺めていたら、とある事を思い出す。
それは当時は気にせずすぐに忘れてしまったが、今となっては不思議な思い出。
あれは僕が小学生の夏休みの頃だっただろうか。
家の近くにある神社で、複数の男女友達と遊んでいた。
神社は数十段はあろう上り階段が続き、上りきると小さいながらも神社がぽつり。近くには鳥居と巨木が一本。周囲には森林で囲まれていた。
振り返ると、町並みが見渡せるほどの一望できる場所。
普段から人が来ないせいか、よくそこを隠れ家的な事をして遊んだりしていた。
小学生らしく、鬼ごっこ、高オニ、木登り、ドッチボールなど可愛らしい遊び。
毎日のように遅くまで、遊びつくした。
そんなある日、一人がかくれんぼをしたいと言い始めたのだ。
反対する者もいない他愛の無い、子どもらしい、そう子供らしい普通の遊び。
数度、鬼が交代するものの僕は一度も鬼になることはなかった。
そんな時、友達の一人が知らない女の子を連れて来る。
同年代で髪が長く白い服を着た女の子。一緒に遊んでいる子の中にも女子がいたので仲間にして遊ぶ事を反対する者はいなかった。
時間は過ぎ、日も暮れてき始めた。
丁度その髪の長い女子が鬼で、探しているのか姿が見当たらない。
時間も時間なので門限もあり、流石に中断せざるを得なかった。
皆も同感からかその髪の長い女子に終了の合図を言おうとするものの、見つからない。
手分けして探しても存在がなかったかのように見つからなかったのだ。
僕達はその女の子が勝手に帰ったのだろうと思い、現地解散をした。
次の日、梅雨の開始かしばらく雨が降り続いた。
雨が止んだとしてもあの事はすっかり忘れ、神社に行くことがなくなっていた。
「ここだったな」
見上げるは当時と変わらない数十段はあろう上り階段。
懐かしいなと思いながらも一歩一歩階段をかけ上り始める。
「無茶苦茶しんどいな。子供の頃は楽だったのに」
階段を上るにつれ再度、当時の事を思い出し始めていた。
何故思いだすのかよくわからないが、多分心残りだったのだろうと思った。
「懐かしいな。こんな神社だったか」
鳥居とその先には神社が一社。巨木が一本と周囲は森林だらけ。
子供ながらに神社が異質。いや、今でも異質に見えた。
まるで下界と隔離していたようなそんな雰囲気を漂わせる。
「夏なのに少し寒気がするな。汗がのせいか。他よりも高いからか?」
周辺を散策するように神社の周囲を歩き始めた。
何もないただの森林と神社。
「懐かしいな。そういやここら辺で隠れていたっけか……ん? 声?」
女の子の声が遠くで聞こえる。
ここに来る前は子供一人すらいなかったはずなのだが。
今でも子供達の遊び場と言う事だろう。
そろそろ家に戻らないと、そう思いながら鳥居近くに戻ると周囲を見渡した。
「誰も居ないな。気のせいだったか?」
首を傾げながら、鳥居からでようとすると服を引っ張られるのに気づく。
そちらの方向に振り向けば、見知らぬ小学生ぐらいの女の子がそこに立っていた。
知らないはずなのだが、どこか懐かしくも記憶にある。
何か話さなければいけない気持ちになっていた。
「あーえと、どうしたのかな?」
女の子は何も答えない。
「あー、もしかして友達と遊んでたのかな?」
女の子はコクリと頷く。
「そっか、ならその友達の所にいかないとね」
再度女の子はコクリと頷く。
「それじゃお兄さんは行かないといけない所があるから離してくれるかな?」
女の子は服を離さない。
それどころか口元に手を当てて話したい様子だ。
それを聞いちゃいけない気がする。聞いたらきっと後悔するとわかっていた。
ゴクリと唾を飲み、僕は要望通り女の子の口元に耳を近づけた。
みぃーつけた。
これ以上書くと確実にグダりそうなのでここまでで