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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第六章、助っ人

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92、アクシデント

 舞台本番まで残りわずかとなったため、体育館での練習は終わりになり、お次は本番の舞台での練習を残すのみとなった。舞台セットは学園側で運んでくれたみたいで今日からの二日間はなんと学園を休んで練習に励むことになる。運動サークルの生徒が大会出場のために前日くらいから学園を休む様子を見たことはあるが、まさかサークルに所属すらしていない自分がそれを経験することになろうとは。


 これまでの練習と同じようにみんなで舞台へ大道具のセットを行い、軽く一度通しで演じることになった。体育館でも広いと思っていたのに本番の舞台はさらに大きく、観客席もそれなりに多いためどこか萎縮してしまう。


 ここはドリア大聖堂という昔からある古き良き大聖堂だ。現在は新しい大聖堂が他に建てられたためこちらの建物はこういった公演を行ったりするのが一般的になったらしい。年季が入ってはいるものの、内装は演劇などの公演用に改修工事がされているため、照明や迫力のある音響設備は最新のものが導入されている。


「リリアン先輩!ちょっといい?」


「どうかしましたか?エリック」


「せっかくなら衣装を着てより本番らしく練習した方がいいと思うけど」


「確かに言われてみれば…。分かりましたわ!それでは今から衣装を渡しますので皆更衣室で着替えてくるように!」


 先輩はそう言うと一人ずつ役者に衣装を手渡していった。私の衣装はというと一番最初に見たあの真紅のドレスだ。実はあの後、何回かエリック先輩に呼び出されてちょくちょくサイズのお直しをしてるから既に何回か着てるんだけどね。でもやっぱり何回着ても素敵なドレスは着るたびに心が弾むのだから不思議だ。


 ドレスを身に纏ってお芝居をすると、私が演じるヒロインが乗り移ったかのようにスラスラと言葉が出て来て感情を揺さぶられる。


「アイリス様!!その調子ですわ!!」


 やった!珍しくリリアン先輩にも褒められた。服の力ってすごいな。着る服によってこうも気分が変わるのだから。私だけでなく他のメンバーたちもノッてきたらしく、いつも以上に熱い演技で世界観に全員が没頭していた、その時だった。ヒロインの恋人役であるトーマス先輩が、刺客との決闘の演技中にバルコニーのセットから足を滑らせて転落したのだ。


「危ないっ!!!」


 近くにいたメンバーが駆け寄ったのだが少し遅かったため受け止めきれずに先輩はそのまま足を強打してしまう。


「…くっ!!!!」


「トーマス!!」

「大丈夫ですか!?」

「すごく腫れてる…早く冷やさないと!」


 それからの私たちの動きはとても素早かった。練習をすぐさま中断し、トーマス先輩を近くの病院まで連れて行く係、舞台セットの修復と見直しを行う係に別れた。先輩はこのくらいなんてことないと笑って言ったけど、そんな訳はない。ある程度高さのある場所から落ちた上になんのクッション性もない床に足をぶつけたのだから。


 先輩が連れて行かれた後にセットをよく見てみると、お芝居をしながらみんなが流した汗で床が滑りやすくなっていることが判明した。次いで壊れた箇所をどうにかして応急処置で治したのだが、それでおしまいという訳にはいかない。なぜなら足の怪我の具合によってはトーマス先輩は舞台に立つことが出来ないからだ。というか多分無理だろうな、足を引きずっている様子からして。


「修復は完了しましたが、どうしましょう?」

「流石のトーマス先輩でもあの足じゃ…」

「せっかくここまで頑張って来たのに」

「そんなこと言うなよっ!仕方ないだろ?きっと先輩が一番悔しい思いをしてるはずだ」

「残念だけど、今回の舞台は見送るしかないね」


 サークルメンバーのどこか諦めたかのような雰囲気に私は何も言えなかった。メンバーの気持ちは痛いくらい分かるし、それ以上にトーマス先輩は今頃酷く気に病んでいるに違いないから。そんな重い空気が漂う中、エリック先輩がポツリと言葉を漏らした。


「…まだ終わりじゃないよ」


「「「「え??」」」」」


「だから!まだ終わりじゃないって言ってるの!」


「先輩、どういう意味ですか?」


「トーマス先輩が舞台に上がれないなら僕が立つよ」


 その言葉におそらくこの場にいる全員が目を合わせて疑問符を浮かべた。確かに先輩は舞台に映える容姿をしているけれど、先輩は衣装係だ。お芝居をしている姿を見たことがないし普通に考えて残り二日で舞台に立つなんて正気の沙汰ではない。


「何を言い出すかと思えば…。あのなぁエリック。トーマスの役はメインヒーローだぞ?いくらお前が顔が良いと言っても残り二日しかないんだから無理に決まってる。二日でセリフを覚えて芝居をするなんて」


 エリック先輩を嗜めるようにサークルメンバーの年上組がそう言うと、先輩はそれを鼻で笑い飛ばした。


「何言ってるの?誰が二日でセリフを覚えるって?そんなの既にここに入ってるってば」


 エリック先輩の話によれば、先輩は衣装作りをするため他のメンバーより一足先にリリアン先輩から台本を受け取っていたみたい。何回も何回も繰り返し読んで衣装のイメージを膨らませてデザインを書き起こしたり、実際にメンバーがセリフを読んでいる場面を見に行って衣装の修正を行なっていたらしいのだ。そのおかげで嫌でも台本が頭に入っていると本人は主張した。


()()()!せっかく僕が作った衣装が大衆の面前でお披露目されないなんてあり得ない!いい!?リリアン先輩やトーマス先輩たちが帰ってくる前に一度芝居を通すからね!それで僕が代役になれるかどうか判断して!」


 鼻息荒く屈伸運動や発声練習を始めたエリック先輩に気押された私たちは言われるがままに芝居の準備に取り掛かったのだった。

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