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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第一章、始まり

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9/59

09、ミッション開始

みなさんお待たせいたしました!!本作のメインヒーローの登場です!

 そんなこんなで監禁生活四日目。

 タイムリミットは明日だ。何とかして今日中にここを出なければならない。


<アイリス、そろそろ諦めたら?>

「そうね…これ以上調べる時間がないし残念だけど仕方ない、か」


 出来ればここのアジトを管理しているボスまで突き止めたかったがそれは無理なようだ。ボスさえ分かったら、ここを出た後で騎士団に通報して、このアジトを壊滅させることが出来たかもしれないけど。


 これ以上こんな目に合う子供たちを減らしたいという一心から、脱出の計画に加え、この被害の元凶である黒幕を見つけようと奮闘していたため、タイムリミットギリギリになってしまった。


 ちなみに今日までの探索の成果はというと…


 地図以外の情報は得られなかった。ここは単に子供を収監するためだけに作られたものらしい。あれから男たちの部屋を三人分じっくりと調べたけど、何も出てこなかった。そりゃあそうよね…そんな足がつくような情報をここで管理するわけないか。


 それに加え、私と同じような貴族の少年たちの素性も分からないままだ。


 ライファと様子を見に行った時、彼らの状態はひどいものだった。暴力を振るわれていたのか、見ただけで高価なものとわかる衣服は黒ずんでところどころ破けている。拘束も解いてもらえておらず、目隠しをされていて、体を縛っているロープが脱走防止のためか壁際に鎖で(つな)がれていた。


 随分と派手にやられたものだ。しかし、三人で一部屋を割り当てられていたのは不幸中の幸いか…

 別々だったら助けに行くのに余計時間がかかって脱出が難しくなっていた。


<脱出は今日の夜、作戦通りに。ミスしないでよ?>

「誰に向かって言ってるの、大丈夫よ!ミスしないから」


 なんて言ったって今日が一番の大勝負だ。魔力切れしないように、ちゃんと仮眠をとってあるしライファからも少し魔力を分けてもらっている。


 意気込んでライファに答えると、


<今から気合を入れても意味ないってば。決行はもう少し先なんだから。それより、ちゃんと作戦の手順とここの地図、頭に叩き込んである?>


 ライファが肩をすくめて言った。


「そうね。もう一度確認しておこうかな」


 今日の作戦の大まかな内容はこうだ。


 ・夜、食事を運ぶため熊男が来たタイミングでどうにかして部屋を出る。

 ・そこで何かしらの魔法を使い熊男を閉じ込める。

 ・次に、奥の部屋の少年たちを助ける。

 ・後は檻に入れられている子供たちを助け、地上を目指す。

 ・ライファと協力して街へ帰る。



<ねえ、今更だけどこの作戦、穴がありすぎな気がするんだけど…。何とかして、とか、どうにかして、とか、行き当たりばったり過ぎない?これ、作戦って言っていいのかな。本当に上手くいくのか不安しかない…>


「仕方ないじゃない。調べることに夢中になってて今朝考えたんだから。大丈夫、大丈夫!私にはライファがついてるし」


<今日の夜に脱出するのに今朝考えたんだ!?通りで適当だと思った…>


「適当じゃないってば。私の実力とライファの実力を考慮したうえでこれでいけるって思ったんだから」


<自分の力を過信しすぎると痛い目に合うよって、もう聞いてないし>


 口ではああいったものの、不安がないとは言い切れない。どうしようどうしよう、なんか急に緊張してきた…落ち着け、落ち着け私。こういう時は何をすればいいんだっけ。


「羊が一匹、羊が二匹…」


<それは寝れないときにやるやつでしょ!ダメだ、アイリスが馬鹿になってる…>


 私が羊を2000匹ほど数えたころ、ようやくその時がやってきた。


「起きてるかー、飯の時間だぞ」


 ガチャガチャと音を立てて鍵をあけようとする音が響く。姿を現したのはいつもの熊男。


(今だっ!!)


 男がドアを閉める寸前で私はドアにめがけて体当たりするように走る。男は私の姿を視野に捕らえると、驚愕(きょうがく)し目を見開く。そのまま一時停止していた熊男は、すぐさまはっと我に返り怒号を上げた。


「あ、おい!おま、何してんだ!!それにその髪と目は…!」


 驚くのも無理はない。何せ今の私は本来の姿をしている。急に人一人の髪と目の色が変わっていたら、自分の目を疑いたくなるだろう。それ故に生まれた隙から、部屋の外に出ることに成功したわけだけど。

 今日は他のことでいっぱい魔法を使うからね。変装のためだけに貴重な魔力は使えないのだ。


 間髪入れずに私は詠唱を心の中で唱える。


(‟マウンテン・ロック”)


 開け放たれたドアの隙間を覆いつくすかのように岩が現れ道を塞ぐ。


「なんだよこれ!?クソッ、固くてびくともしねぇ…」


「あなたにはそこで少しの間大人しくしてもらうわ。一日もたてば自然と消えるから。話し相手になってくれてありがとう!」


「まさか、俺をはめやがったのか!クソガキが!」


 岩の向こうでまだ何か言ってるけど、聞こえない聞こえなーい。さあ、早くしないと他の奴らが来ちゃう。それにあのヒョロヒョロのっぽの方は魔法が使えるし、出くわしたらめんどくさいに決まっている。


「ライファ、行くよ!」


<了解!>


 第一関門、突破。






 アジトの地図を頭に浮かべながら先を急ぐ。この奥には貴族の少年たちが捕まっているはずだ。


 でも、なぜ彼らだけこんな最奥の部屋で厳重に管理されているんだろう。貴族の息子だからって、身分が多少高いくらいで他の子となんら変わりないと思うけど。身代金なんかを要求するにしても、あそこまでのきつい拘束はちょっとやりすぎな気がする。



 なんて考え込んでいると、いつの間にかその部屋に到着した。


「げ、何よこれ!!」


 その部屋のドアには強力な保護魔法が何重にもかけられていた。ぱっと見は鍵すらかけられていないドアだというのに。ライファの視点でこの部屋を見た時には、気づかなかった。ってあれ?じゃあ、なんでライファは探索の時この部屋に入れたんだ…?


 嫌な予感がしてライファを横目で見る。


「ねえ、一応聞くけどライファがこの前来た時にもこの魔法がかかっていた、なんてことはないよね…?」


<え、普通にかかってたけど。邪魔だったから解いちゃった!あーでも、この前より少し魔法の強度が増してるかも。なんでだろ?>


 こてんと首をかしげるライファを見て私は一つの答えを導きだした。


 うん、それ、バレちゃってるよね…。勝手に魔法を解いたことで何者かがこの部屋に入ったことバレちゃってるよね!!完全に警戒を強められちゃってるね!!!


「なんで魔法がかかってたこと教えてくれなかったの」


 確かにこの部屋のドアには鍵らしき鍵がかかっていなかった。その時点でおかしいと思うべきだったのだ。ただ単にあのきつい拘束で絶対に外へ出られない自信があるから、ドアの鍵はかけていないのだと思い込んでしまっていた。


<えー、そんな些細な事いちいち報告するのって時間の無駄じゃない?>


「些細な事じゃないわよ!ライファのせいで警戒が強まっちゃったじゃない。どうしてくれるの!」


 それにさっきの熊男との対決(?)で大きい音を出してしまている。他の男たちがここに来るのも時間の問題か。急いでこの魔法を解かないと。でも、保護魔法を壊す魔法なんてあったっけ。


<怒んないでよー。それにこれくらいの魔法だったら何とかなるよ。アイリス、この魔法と同じタイプのより強い保護魔法をかけてみて。出来ればこれよりも広範囲で>


 そうか、無理に解除しようとしなくていいのか。同じ魔法をぶつけあうならより強力の魔法が勝つに決まっている。つまりこれより強い魔力を込めて同じ魔法をかけたら、これを私の魔法に上書きできるってこと。自分の魔法なら自由に出入り可能になるもんね。



「分かった、やってみる」


(‟プロテクト・エリア”)


 特に反応がない。もしかして失敗しちゃった…?不安になって閉じていた目をゆっくり開けると、かすかにピキッという音がした。それを合図に私が使った保護魔法の中でそれ以外がバラバラと崩れる。


<やったね、アイリス!一発で成功するなんて。さすが僕が選んだ相棒だ!>

「やった…やったわ!」


 ライファがとても嬉しそうに笑う顔を見て一息つく。成功してよかった。


<よーし、早速部屋に入ろー!>

「ちょっと待って、ライファ」


 すぐに入ろうとするライファを静止させ、急いで服のフードを目深(まぶか)に被る。せっかく助けに来たのにこの見た目を怖がられては元も子もないしね。私だって怖がられるのに慣れているとはいえ、目の前で怯えられたら傷つくもん。


「行きましょう」


 静かに部屋へ踏み入ると、床に横たわっている三人の少年の姿がある。彼らは、いつもご飯を運んでくる男と様子が違うことに気づいたのだろう。その中の一人が、


「誰だっ!!」


 と険しい声を上げた。警戒心むき出しの声に思わず苦笑してしまう。そりゃあそうよね、今までの男とは違う何者かが来たら、彼らにとって異常事態でしかないのだから。


「しーっ!大きな声を上げないで。奴らに見つかるでしょ」





ほんの一瞬メインヒーローが出てきました!もう少ししゃべらせる予定だったのに…次回に期待!

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