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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第六章、助っ人

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89/93

89、痛感

  次の日の放課後からは本格的に演技の指導が始まった。本来なら生徒会の仕事があるはずなのだが最近はそこまで忙しくもないということで私とソフィアはこちらに専念出来ることになったのだ。一日で台本を書き直してきたリリアン先輩は心なしか髪の毛はボサボサで目に少しクマを作りよろよろしながら演技サークルの空き教室に入って来た。


「先輩、大丈夫ですか…?」


「私のことはお気になさらず…!それよりも早速練習を始めましょう!」


 本人が大丈夫というのなら大丈夫なのだろうが…、相当無理をしたんだろう。そんな先輩の努力を踏みにじる訳にはいかないと、よりプレッシャーを感じながらも昨日と同じ発声練習から開始する。それが終わるとひとまず先輩が書き上げた台本に目を通した。おおまかなあらすじはこうだ。


 舞台は二つの名門家が長らく対立するとある王国。そんな名門家に生まれた歳の近い二人の男女がいた。ある日開かれた仮面舞踏会にたまたま参加した二人。お互いの顔と名前も知らないまま出会った二人は初対面ながらもすぐに打ち解け次第に心を通わせるようになった。しかし二人は敵対する家の人間だということが明らかになり決して許されない恋に頭を悩ませた。

 二人の関係はついに互いの家の者にバレてしまう。両家は互いの娘、息子を始末しようと暗殺を試みて…。彼ら恋の行方はどうなるのか、愛を取るか生をとるか、二人が下した決断とは?


 なんかロミオとジュリエットみたいだな。…あれ、なんだロミオとジュリエットって…?聞いたこともないタイトルが急に頭に湧いて出てびっくりする。おかしい…この台本を知らないはずなのに知っているような気がするのだ。モヤモヤした疑問を抱えながらも今はそれどころじゃないと本読みに集中した。


 一通り読み終わると今度は役者全員で声に出して芝居をしてみることに。私以外のメンバーは慣れているため流石と言うべきか、声量も大きく皆のびのびと芝居に熱中している。皆の熱量に押し負けそうになりながらもなんとか通して本を読んでみたのだが…。


「アイリス様、悪くはないんですけれど…。舞台の上の演技というのは自分が思っている何倍も大袈裟にやらないと観客に伝わらないですのよ。もっと表情筋を使って芝居をしてみてもらっても?」


 脚本家兼監督も務めているらしいリリアン先輩のダメ出しが飛ぶ。再び通しでやってみても私の出番が来る度に先輩のストップがかかり練習が止まってしまう。


 うぅ…みんなに迷惑をかけちゃってる…。こんなことなら引き受けなければ良かった…!!しかし後悔をしてももう遅い。今更やっぱり無理でしたなんて言えないしそれこそ多大な迷惑をかけることになるからだ。ええい!!やると決めたからにはやり通すしかない!!!今日の練習は結局私とリリアン先輩で一対一のマンツーマンレッスンの時間となり、他のメンバーは私がいない出番の練習をすることになった。


「違いますわっ!!」


「もっと口角を上げてっ!!」


「そこはトーンを落として前のシーンとの落差をつけましょう!!」


 リリアン先輩の熱血指導のもと、私の体力はもう限界だ。これほど自分の表情筋が普段動かせていないことに驚きつつ、芝居の難しさを痛感した。人前で猫を被ることは時折あるけれど、それとこれとは全くの別物としか言えない。


 こうして本日のレッスンは先輩のオッケーが出ないまま終わってしまった。この状態の私が2週間後には舞台に立ってるって本当か?不安しかないがくよくよしても何も変わらない。


 時間になり寮へと戻ってからも私は鏡の前に立ち、表情筋を動かす練習を続けた。グイッと自分の指で口元を押し上げてみる。不自然な笑みを浮かべた私と目が合って思わずため息が出た。最近はマシになったと思ってたけど、こうして見てみると私ってやっぱりあまり表情が豊かな方じゃないんだな。その時だ、急に頭痛がして頭を押さえてしまう。




 ーザザ、ザーザーザザザー



「お母さん、みてみて!今日のテストで百点だったんだよ!」


「うるさいっ!!私にはなしかけないでっ!!!」


「おかあ、さん…?」


「聞こえなかったの!?本当にうっとおしい!私の前で二度度笑わないで!!!」



 ーザザザザー、ザ、ザザー


 一瞬脳裏に幼い少女とその母親と思われる人物が写ったかと思うと次の瞬間には激しい痛みが伴いそれどころでは無かった。私はフラフラとベッドに向かうとそのままバタンと倒れ意識を手放した。




 * * * *

 



 自室でのトレーニングが効いてきたのか練習を初めて3日目にして先輩に少しだけ褒められるようになった。ここまで来てようやく他のメンバーと合わせられるレベルに持ってくることが出来たのはいいのだが、今度は他の役者との掛け合いに苦戦を強いられる。特に私の役はメインヒロインなのでそのパートナーである敵対する名家の息子役のトーマス先輩との芝居が重要だ。本来ならセリフを覚えてから動きを付けるらしいのだけど、今はあまりにも時間がない。ということで同時に覚えるように言われたのがついさっきの出来事である。


 これが思った以上に大変なのなんのって…。セリフに集中すると動きが小さく固くなるし、動きに集中すると今度はセリフが疎かになるのだ。



 もう無理!!誰か!助けてー!!!!


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