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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第六章、助っ人

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86、意外な才能

「すみませんが、私と先輩は何処かでお会いしたことがありましたか?」


 本当の本当に心当たりがない。それにこんな強烈なキャラの人、出会ってたら忘れるわけないだろう。


「いいえ、有りません!私が一方的に存じ上げていただけなのでお気になさらず」


 それを聞いてはい、そうですかなんて納得出来る人物がいるだろうか?なんならその言葉を聞いて余計に怖くなってしまったのだが?


「えっと…タリンタ先輩は、」


「リリアンと呼んでくださいませ!」


「…リリアン先輩。事情はよく分かりませんけどひとまず私たちを付け回すようなことをするのは辞めて頂けますか?アイリスもきっと怖い思いをしたはずです」


「それはそれは大変申し訳ありません…。ではこれからは堂々と話かけに行ってもよろしいということで?」


 ソフィアは勢いが凄いリリアン先輩に困ったように、眉を下げてこちらに助けを求めてきた。うん、私にはその気持ちがよく分かるよ…。今まで私たちの周りにいなかったタイプだもんね。先輩の提案を却下してもいいのだけど、それでは結局この状態が続いてストレスだしいっそ目の届く範囲にいてもらった方がいいのかもしれない。


「…今度からは普通に話しかけて下さい。もし御用があるのなら」


「用、ですか…。それなら私、アイリス様と仲良くなりたいですわ!」


「それはちょっと難しいかもしれないですけど」


「えぇ!?そんな酷い!!アイリス様は私のことお嫌いですか?」


「嫌いも何も…私は先輩のこと何も知りませんし」


「それならこれからいくらでも教えて差し上げます!さあ早速ですが私の所属するサークルにご案内致します。どうぞこちらに」


 リリアン先輩の勢いは留まることを知らず、押しに弱い私たちはあれやこれやと言い含められると腕をむんずっと掴まれてとある空き教室へと連れていかれた。

 少し埃っぽい教室には数名の生徒が机をくっつけ大きなテーブルを作り、そこに円を描くように椅子を並べて談笑しあっている。よくよく見ると何やら本のような冊子を広げているみたい。


「皆さん本日はお客様を連れて来ました!」


 先輩の大きな声でそこにいた生徒たち全員の視線がこちらへと集まる。一瞬静まった教室だったが次の瞬間にはわっと皆が口々に喋りだしてやかましくなった。


「先輩が誰かを招くなんて、一体何があったんですか?」


「無理やり連れてきた訳じゃないですよね」


「いやぁさすがの先輩もそんなことしないってー」


「……。」


 無言を貫くリリアン先輩の様子を見て察したのか、彼らの中の一人が代表してこちらへ深々と頭を下げてきた。


「うちのサークル長がすみません…。彼女は少し強引な所があって、こちらからキツく叱っておきますので」


「…別に無理強いなんて」


「貴女は黙っていて下さい!後で詳しく話を聞かせてもらいます」


 小声で抗議する先輩をピシャリと窘めた生徒は先輩と同じ紺色のネクタイをしている。つまりこの方も三年生か。


「改めて歓迎致します。僕たちは演劇サークルに所属していて、僕はトーマス・スカラーと申します。今はちょうど次の劇の台本の読み合わせをしていまして…良かったら見学なさっていって下さい。あ、今お茶をお持ちしますね」


 そこまで丁寧な挨拶をされるとこちらもリリアン先輩のことを怒るに怒れない。そもそも演劇サークルの方々は何も悪いことをしてないだから謝罪されると何処か居心地が悪く感じてしまった。


「アイリス・アルベルンと申します。こちらはソフィア・ミッチェルですわ」


「ソフィア・ミッチェルです。お気遣いありがとうございます」


 軽く自己紹介を済ませると先輩が用意してくれた椅子に腰をかけて辺りを見渡す。確かに演劇サークルらしく壁沿いにはヒラヒラとした綺麗な衣装がズラリと並んでおり、暗幕が一面に張られていて日光を遮断しているようだった。埃っぽく感じたのはきっとそのためだろう。物珍しさにキョロキョロしているのに気づいたのか、リリアン先輩が話しかけてきた。


「その衣装とても素敵でしょう?ここにある多くの衣装は代々の先輩方から受け継いできたものなのですが、最近は衣装を自分たちで手作りしているんですのよ」


「そうなんですか?こんな綺麗な洋服を作れるなんて相当腕が良い方がいらっしゃるんですね」


 綺麗な衣装の一つに近付いてそっと触れてみると、相当良い生地を使っているのか肌触りが滑らかで、ドレス部分には幾重にも重なったチュールがふわっと裾に向けて広がっている。袖口にもキラキラと光るビーズが縫い付けてあったりと細部までにこだわりを感じさせる衣装だ。洋服に詳しくない私でも一目見ただけでこの衣装が真心を込めて丁寧に作られていることが分かる。これがステージの上でスポットライトを当てられたらキラキラと輝いて見えるのだろう。


 こんな素敵な衣装を作れる人物がこの学園にいるなんて。普段はドレスなんて動きづらくて着たくないのだけど、これなら着てみたいと思ってしまった。どんな人が作っているのかな、なんならオーダーメイドで注文したいくらいだ。


「ええ、ええ!本当にその通りなんです!彼の作る衣装はどんなステージに立ってもよく映えて、最近はその衣装を見に来るお客様もいらっしゃるくらいで」


 そんな私たちの会話を遮るかのようにガラガラっと教室のドアが開く音がした。


「せんぱーい、頼まれてた衣装仕上がったからチェックしてもらえるー?」


「え?」


 聞き覚えのありすぎる美声に振り返るとその人物とバッチリと目が合ってしまう。


「うげっ!!!なんで君たちがここにいるのさ!!」


「それはこっちのセリフですよ!エリック先輩!!」


 そこには天使、もとい生徒会でもお世話になっている二年のエリック先輩が立っていた。しかもさっきの発言、私の聞き間違いだろうか?衣装がどうたらこうたらって…。


「あら、アイリス様たちお知り合いだったのですね?それなら改めて紹介する必要もないかもしれませんが、我らが演劇サークルの縁の下の力持ち、衣装作りを担当しているエリック・ホーシンですわ!」


「「ええ!?」」


 あまりの衝撃にソフィアと綺麗に悲鳴が重なった。だって先輩は生徒会のメンバーだ。サークルに入らなくてもいいはずなのにどうして?疑問がそのまま顔に出ていたのか、先輩はため息をつきながら面倒臭そうに説明をしてくれた。


「君たちうるさいよ。それに驚くことじゃないでしょ。生徒会に入ってたって、サークルに入っちゃダメっていう決まりはないし。僕は衣装を作るだけだし他のメンバーより顔を出す頻度は少ないからね。生徒会にも支障が出てないでしょ?」

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