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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第五章、平穏が一番

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83/93

83、イタズラ

※テオドール視点

  それからの俺はアイリスちゃんの体になっていることを利用して後輩君たちの反応を心ゆくまで楽しむことに専念した。


 例えば、俺の隣の席に座って真面目に授業を受けているルーク君にはわざと消しゴムを落として拾わせてみたり。


「…あっ!」


 もちろん優しい彼は自分の足元に転がったそれを拾おうと体勢をかがめた。その瞬間を狙って俺も一緒に拾おうとする素振りを見せ、俺の手とルーク君の手が重なるように微調整する。驚いたルーク君がこっちを見ると同時に、


「ごめんね?」


 と、謝りながらじっとその目を見つめた。友達よりも近いその距離感で想い人に見つめられドキドキしない男がいる訳がない。ルーク君は俺の期待通りに、心の揺らぎを悟られないよう精一杯取り繕いながら、


「ああ、これくらい全然」


 と、なんて事ないように笑った。普通の人ならそれで騙せるかもだけど、俺にはぜーんぶ分かってるよ?ホント可愛いんだから。


 彼自身も心の中では様々な葛藤を抱えているに違いない。体はアイリスちゃん本人でも実際は俺だからね。かわいそーに…!



 次のターゲットはディラン君。彼は他の男子二人と比べると想いの大きさは少し違うみたい。本人もあまり自覚なしって感じだし。でも特別な想いがあるのは確かだろう。…よし、それならちょっと試してみよっか。


  授業が終わると移動教室のため支度を始める生徒たち。そんな中俺はソフィアちゃんに近づいてそっと耳打ちした。


「ねぇねぇ、ディラン君のネクタイ少し曲がってるよね?直してあげた方がいいんじゃない?」


「え?それなら先輩が言ってあげれば、」


「チッチッチッ…分かってないなぁソフィアちゃんは。完璧主義なディラン君のことだから先輩の俺から注意されるの恥ずかしいと思うな〜。それに手元に鏡もないしソフィアちゃんがサッと直してあげたらいいじゃない。今なら俺、気付かないふりしてあげるけど?」


 確かに…と、いやでも…という二つの考えで行ったり来たりしているソフィアちゃん。そんな彼女の背中をポンっと押すと、彼ら三人の前にソフィアちゃんが飛び出てきた形になった。


「どうしたの?ソフィアさん」


「用がないならどいてもらえますか?邪魔なので」


 ここまで来たらもう覚悟を決めたのか、ソフィアちゃんはディラン君の前に立つと、


「えっと…その!ネクタイ、少し曲がってますよ。良かったら私が直しましょうか?」


 彼女は勇気をだして一歩踏み込みながらそう言ったのだが、彼の態度はとても素っ気ないものだった。スっと身を引いて距離を取ったかと思うとポケットから手鏡を取り出し自分の手でそれを直したのだ。


「お気遣いありがとうございます。ですが自分のことは自分で出来ますのでお構いなく」


 なるほどなるほど…。ソフィアちゃんにはそういう感じね。じゃあこれならどうかな?


「あれ?ディラン…」


 今度は(アイリスちゃん)のターンだ。俺は先程のソフィアちゃんと同様に彼に近づいて、下から眉一つ動かさない綺麗な顔を覗き込んだ。


「まつ毛、顔についてるよ?」


 指摘するのと同じタイミングで手を伸ばしてそっと顔に触れてみる。拒絶されることも考えたけどどうやらそれはないみたいだね。ソフィアちゃんの時は過剰に距離を取ったというのに今度はどうだ。彼は俺にされるがまま、その場で固まっているではないか。


 堅物なディラン君にもそれなりに思春期の男の子っぽい所があったんだなぁ。お兄さん、少し安心しちゃったかも。彼みたいに恋愛に興味ありません、みたいな顔してる奴の方が意外とむっつりだったりすることはよくあるし、彼もそのうちの一人ってことね。こういう子の焦った顔を見るのが俺の楽しみでもあるんだけど、それはもう少し先になりそう。今回の件で色々意識とかしてくれるとからかいがいがあって今後楽しめそうなんだけど。


「ほら、取れたっ!」


「…ありがとうございます」


「さあさ、こんなことしてたら移動が間に合わなくなっちゃう!みんな急ごうか」


 次の授業は化学なので実験室へと足早に向かう。班分けは自由だったみたいで俺らはやっぱり同じ班らしい。一つの班で一つの長い机に向かい合うようにして座ると俺の目の前はちょうどカイル君だった。


 先生の話を聞きながらも俺は机の下で自分の足をわざとカイル君の足にぶつけたり、つついたりしてみる。すると彼はこちらを咎めるような視線を向けてきた。それでも俺はいたずらっぽい笑みを浮かべながら足でちょっかいをかけ続けて、様子を伺った。


 しばらくすると彼は口元を覆うように手で顔を隠しだした。彼の耳がほんのりと赤くなっており、照れ隠しなんだということは一目見て分かる。俺とカイル君しか知らない机の下の遊びに少しの背徳感とアイリスちゃんの意外な一面を見れたことの嬉しさが混ざっている、といったところか…。でもざんねーん!君の想ってる彼女じゃあないんだけどねー!




  こうして午前中の授業が終わる頃には、俺の正体を知っているルーク君、ディラン君、ソフィアちゃんの顔はとてもげっそりとしていて面白かった。あれからも彼らには色んなことを仕掛けたし、せっかくならということで他のクラスメイトにも積極的に関わりに行ったからねぇ。でも反省はしていない。アイリスちゃんと入れ替わるのがこんなに楽しいなんて、案外入れ替わりもいいもんだね。

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