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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第五章、平穏が一番

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77、戻ってきた日常

 ルークとのお出かけも無事に終わり、再び穏やかな学園生活が繰り返される。つまり私たち生徒会も活動を再開するということでもある。放課後は生徒たちがサークル活動に精を出すのと同じく私たちも生徒会室に一同が集まった。こうして顔を合わせるのはあの事件以来で久しぶりな感じがする。学園に戻ってすぐに中間試験があったこともあり、クラスメイトのソフィア、ルーク、ディラン以外のメンバーとはそれきりだったからだ。


 かといって今は特に急いで準備する行事がないらしく、全員が集まってはいるのだが各々の過ごし方で生徒会室でまったりしている最中だ。


「ねーねーめっちゃ暇じゃない?みんなで何かして遊ぼうよー」


 テオドール先輩がそう声を上げても、誰も反応しなかった。


「へぇ、なるほど!この公式を使えばいいのか」


「うん、結構簡単でしょ?公式さえ覚えとけば応用はいくらでも効くからね」


 やかましい先輩を横目に私とソフィアは机の端っこで教科書とノートを広げて今日の授業の復習をしていた。中間試験の勉強の時に、普段から復習をしっかりしておいた方がいい、という結論に至ったため、今は二人でマンツーマンの個別指導中である。継続は力なりとはよく言ったもので、試験前に急いで詰め込むものほど身にはつかないのだ。


 その横ではルークとディランはティータイムを楽しんでおり、エリック先輩は読書に集中し、会長とヘンリー先輩は二人で何かしらの書類と睨めっこしている。一人放置されているテオドール先輩は再びみんなの関心を引こうとしたのか、


「ねえってばっ!俺の声聞こえてる!?」


 大きな声を出した。しかしそれと同じタイミングで生徒会のドアがノックされたかと思うと私たちの担任であるワイアット先生が入室してきた。


「おや、皆さんお揃いでしたか。ちょうど良かった。実は生徒会の皆さんにお願いしたいことがありまして…」






 こうして現在、私たちは埃まみれになりながら大掃除をさせられていた。なんでも次回の魔法薬学の授業で使う薬草が切れてしまい、貴重物品倉庫から在庫を取り出そうとしたものの、手入れが行き届いていない埃かぶった倉庫から目当ての薬草を見つけ出すのは至難の業だったらしい。そのためこれを機に倉庫の掃除をすることに決まったとか。


 そんなの先生たちでやればいいと心の中で思ったことは内緒である。雑用を押し付けられたようで複雑な気持ちだが、これといって今の生徒会での仕事がなかったため、断る選択肢がなかったのだ。


「こっちの棚はとりあえず掃除終わったよ。薬品を元通り棚に戻すのを手伝ってくれる?」


「分かった!この作業が終わったら手伝うよ」


 ルークの呼びかけに応えて、一度床磨いていたモップを壁に立てかける。

 それにしてもここには本当に貴重な薬草や薬品が沢山揃っているみたい。教科書に載ってはいるものの実物を見たことがないタルマトの葉っぱや、今や絶滅危惧種に指定されている毒花のアサリリなんかが小瓶にそれぞれ詰められていて、見ているだけでゾッとする。こんな貴重品を扱う倉庫をたかが生徒に任せていいのか。


「みんな〜!見て見て!これ、すっごい綺麗な色してるよ!」


 テオドール先輩が持っている小瓶には、虹色に輝く粒子の細かい砂?のようなものが瓶の縁までぎっしりと詰められている。見た目は綺麗だが見るからに怪しい品だし、薬品名が書かれたラベルが貼られていないので中身がなんなのか見当もつかない。


「へぇ、とても綺麗ですね」


「何に使うものなんでしょうか?」


 勤勉なソフィアやディランはその小瓶に興味を抱いたようで、二人して頭を捻っていた。こんな所でも学習の意欲があるなんて凄いな。私なんか早く掃除が終わればいいのに、とか考えてたよ。


「確かに見ない品だな。私自身もこのような物を見たことがない」


「そうなんだ?オーウェンでも知らないってことは、かなり古いものだったり?」


 他のみんなも掃除に飽きてきたか、手が止まって雑談が始まってしまった。するとテオドール先輩は何かを思いついたかのような顔をしてイタズラっ子の笑みを浮かべると突然おかしな事を言い出した。


「ねえ、この瓶を開けて何に使う物なのか確かめて見ない?」


「いや、危険性があるものかもしれない。迂闊に開けるのは止めた方がいいだろう」


「ケチくさいこと言わないでよ〜。ただでさえやらなくてもいい掃除をさせられてるんだし、これくらいいいでしょ?それに俺だって馬鹿じゃない。少しだけ拝借して試すだけだからさ!」


 会長が制止したにも関わらず、テオドール先輩は瓶の蓋を開けようとした。だが瓶は古いものだったためか、上手く開かない。


「…あれ、開かないな。くっ…!!!」


 ーパカッ!!!!ー


 先輩は蓋を開けるために思いっきり力を加えたためか、勢いよく瓶の中身が盛大に宙を舞った。その近くにいたため被害者となった私とテオドール先輩は全身で砂をかぶってしまい、ゴホッゴホッと咳き込んだ。


 何してくれてるんだこいつ!!危険薬品の一種だったらどうしてくれるんだ!!!


「ちょっと先輩!!気をつけて下さいよっ!全身砂まみれになったじゃないです、か…」


 あれ、おかしいな。私ってこんなに声が低かったんだっけ、、?しかもなんだか先程よりも視界が高くなったような?気のせい、だろうか。いや、気のせいじゃないっ!!だって私より背が高い会長と目の高さが一緒なんて、有り得ないだろう!?


「ごめんごめん…って、ちょっと待って!!!もしかして今、アイリスちゃんが喋ったの!?俺の声そっくり、っていうかそのものすぎる!それに俺の声高くなってない!?」

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