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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第五章、平穏が一番

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73、初デート(仮)

※ルーク視点

 本日は彼女と約束した土曜日だ。いつになく浮かれていたのか昨日なんか一睡も出来なかったが、眠たい目を擦りながら、なんとか身支度を整えた。いつもの制服姿ではなく私服で出かけるのはとても久しぶりで気恥ずかしさがある。


 事前に考えたデートコースを頭の中で復習しながらも心のどこかで不安に思う自分がいた。なぜなら僕は人生で一度も女性をデートに誘ったことがなかったからだ。王宮で開かれるパーティーや、招待される茶会は多く経験してきたが、女性と二人きりで出かけるなんて初めてでそわそわする。僕は鏡の前に立つと、自分の指でぐいっと口角をあげ、いつもの表情を作った。よし、これでいい。いつも通りいつも通り…。



 約束の時間は午前10時。校門の前で待ち合わせだ。遅れないように早めに到着し、彼女を待つこと数分。まだ時間にもなっていないのに彼女の姿が遠くに見えた。…よかった、早めに着いておいて。

 僕が待っていることに気づいたのか、彼女は慌てた様子でこちらに駆け寄ってくる。その姿が可愛らしくて、緊張で強張っていた体から力が抜けて自然と笑みが溢れた。


「ごめん!待たせちゃったかな!?」


「いや、全然。むしろ早いくらいだよ」


「そう?それならよかった…」


 彼女は乱れた前髪を手で軽く直すと、一息つきながら胸を撫で下ろした。


 それにしても…。今日の彼女はまた一段と可愛らしいというか、可憐な格好をしている。胸元と袖口に大きめのフリルがついた真っ白なブラウスにブローチが光り、落ち着いた紺色のスカートがふわりと広がっている。いつもは下ろしている漆黒の髪の毛もアップスタイルでまとめられており、とても上品でまさに清純といった感じだ。


 初めて見る姿に目が釘付けになり、僕のためにここまで着飾ってくれたのだと思うと純粋に嬉しい。


「あ、あの…何か変?」


 思わず見惚れて黙ってしまった僕を訝しげな様子で見る彼女を見て、ふと我に返った。


「ごめん、なんでもないよ。アイリスさんの私服姿を初めて見たから新鮮で。それによく似合ってる」


「そう?それはありがとう」


「じゃあ早速行こうか、馬車を待たせてあるから」


 二人で馬車に乗り込んで最初に向かった場所は、貴族御用達のジュエリーショップだ。この店は国内最上級の宝石を取り扱う店で、よく僕たち王族もここで贈り物を選ぶことが多い。また既製品だけでなく、オーダーメイドのアクセサリーも作ることが可能なので、貴族のご婦人方に大変人気となっているのだ。


「これはこれはルーク様ではありませんか。ようこそお越しくださいました。何かお気に召すものがございましたらなんなりとお申し付けください」


「久しぶりだね。少し店内を見せてもらえるかい?出来れば人払いもお願いしたいのだけど」


「もちろんですとも。この時間帯は休日でもあまり来客はありませんのでプライベートの時間をお楽しみください。そちらのお嬢様も、何か気になる品があればお声がけくださいね」


「お気遣いありがとうございます。そうさせて頂きますわ」


 そしてオーナーがいなくなると、アイリスさんはふーっと息を吐き出してお嬢様モードを解除した。ついでに僕をじろりと軽く睨んで不機嫌さを表現した。


「もう!こんな高級そうなお店に来るんだったら先に伝えておいてよね。変に緊張しちゃったじゃない!」


「ごめんごめん。でも今日はどうしてもここに来なくちゃいけない用事があってね。実は僕の二つ下の従姉妹(いとこ)がもう直ぐ誕生日なんだ。それでアクセサリーを贈ろうと思っているんだけど、いかんせん年頃の女の子が喜ぶ物が分からなくて。アイリスさんに一緒に選んで欲しいと思ったんだ」


「そうだったの?そういうことなら…まあ仕方ないか。でも私もあまり宝石の良し悪しは分からないけど」


「別に難しく考えなくていいよ。アイリスさんが気になったやつを教えてくれれば。それを参考に選んでみるからさ」


「わかった」


 お気づきかもしれないが、もちろんこれは嘘である。僕に二つ下の従姉妹なんて存在しないし誕生日の贈り物なんて贈る予定はない。なんでそんな嘘をついたのかといえば彼女の趣味嗜好を把握するためだ。もし気に入った物があればそのまま贈ってもいい。

 彼女と親しくなってきているとはいっても、彼女の好みはまるで分からないしそういったプライベートな話をしたことはないという事実に少し落ち込んだ。


 それにしてもアイリスさんが世間知らずで本当に良かった。ここにカイルやディランがいようものなら、僕の先程の苦しい理由を聞いたら、何言ってるんだコイツ、みたいな顔をされていただろう。



 いつになく真剣な様子でガラスケースに入った宝石やらアクセサリーやらを吟味している彼女を、遠くから観察する。しかしこれといって彼女の表情を明るくさせるものは一つもなかった。貴族の女性はみんな宝石が好きなものだと思っていたが彼女は例外みたいだ。


 一通り店内を見終わった彼女は、


「やっぱり私にはよく分かんないかな。どれも綺麗だし美しいって思うけど、こういうのは気持ちの問題だと思う。心から誕生日を祝う気持ちがあって贈られた物ならどれでも嬉しいはずだよ」


 と、元も子もないことを言ってきた。


 …違う。そういうことが聞きたかったんじゃなくて。これでは彼女をここに連れて来た意味がなくなってしまう。全く見当違いなことを言う彼女に少しの苛立ちを覚えたが、ここは我慢だ。落ち着け、僕…。次の手を打たないと。


「それはそうだと僕も思うよ。でも本当に一つも気に入った物はなかったの?それか普段よく身につけるアクセサリーなんかでもいい、教えてくれないとプレゼント選びに困るんだけど」


 すると今度は少し悩む素振りを見せた彼女が口を開いてこう言った。


「それもそうだね。じゃあその子の瞳の色や髪の色と同じ色の宝石ならいいんじゃないかな?ほら、それなら身にまとった時に統一感が出るしアクセントになるでしょ?あと、私がよく身につけるアクセサリーだっけ?これは特にないかなぁ。アクセサリーって可愛いけど、何かと動く時に邪魔になるから普段はあまりしないんだよね」


 確かに瞳や髪の毛と同じ色の宝石は、大切な人に贈る時によく用いられることが多い。その意見はまともなのだが、問題はその後の発言だ。普段から身につけるアクセサリーがないって…。こんなの何を贈ったとしても無駄じゃないか?まあ、今のところ彼女に贈る予定がないのだけど。


 こんな調子で何を尋ねても明確な好みを聞き出すことが出来なかった僕は盛大にため息をついた。この店で得られた情報といえば、アイリスさんは宝石には興味がなく、アクセサリーはつけないということ。


 女の子なら誰でも可愛いアクセサリーに興味があるものだと思っていたけど、可愛らしさと美しさを兼ね備えた彼女は、その容姿と違って中身は結構ドライなんだな。


 確かに普段の学園生活でもこれといったアクセサリーをつけてなかったけどさ!でもアイリスさんならどんな物でもよく似合うだろうし、使いこなせるに違いないのに。本人が興味がないというのならどうしようもない。




 気を取り直して、よし!!次だ!次!!!

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