72、試験結果
※主人視点
私の体の精密検査も無事に終わり、退院することが出来た今日この頃。
事件も一段落ついたところで、私たち学生の本分といえば勉強である。生徒が大勢いなくなったことでグレードウォール学園は学園閉鎖状態に追いやられ、残った生徒は寮の自室で待機させられていたらしい。しかし行方不明者が無事に帰ってきて聖騎士団によるヒアリングが終了したこともあり、本日からはまた普通に登校して勉強する日々が始まる。
そうそうそういえば、みんなが忘れていたであろう中間試験は本来とっくに行われている予定だったのだが、そんなことも言ってられずに延期となっていたため、改めて来週に行われることになった。試験一週間前なのでサークル活動や、生徒会活動はもちろん行われない。
私も自分自身の勉強に時間を費やすため、勉強を教えていたソフィアやディランに断りを入れて放課後は一人で自室にこもっている。図書館にでも行こうかと思っていたのだが、試験前の図書館は人で溢れて座れそうになかったから仕方ない。それに今回は必ず一位を取らなければならないというプレッシャーがあるのだ。もし一位になれなかったら面倒臭いあの約束を実行する羽目になるからだ。
一週間という時間は思っていたよりも一瞬で過ぎ去り、試験当日を迎えてしまう。あーあ、もう少し勉強したかったのに…。そんな後悔の念を抱きながらも全力で挑ませて頂いた。そして試験から更に一週間後、エントランスに順位表が張り出された。うぅ…どうなったんだろう。不安を抱きながらも顔を上げてそれを凝視した。
「………。」
「やったぁアイリス!!見てみて!!私の名前、七位の所にあるよ!!!こんなに高い順位初めて!アイリスのおかげだよ!!」
「そっか!それは良かった!!でもそれはソフィアが頑張ったからだよ、おめでとう!」
「えへへありがとう!アイリスはどうだったの?」
「………。」
純粋な問いかけに詰まる私の様子を見て何か察したのか、ソフィアは再び順位表に目をやり私の順位を確認し始めた。
「…あ、そういうことか…。でもでも!十分に高い順位と点数だよね!!そんなに落ち込まないで!」
私の名前は一番上にあるはずなのに、それがなかった。ということは一位は誰かって?ルーク・センシア、500点満点中500点。栄えある第一位の座はルークが手にしたのだ。
…ホントに勘弁して…!!
ちなみに私は498点で二位である。まさかそんなことがあるなんて。たった一問の差で勝敗を決したと思うと無性に悔しくなってくる。
すると後ろから私たちに近づく集団がいた。もしかしなくても彼らだろうけど。
「やあアイリスさん、順位表は見たかな?今回は僕が勝たせて貰ったよ。こんなに試験勉強に必死になったのは初めてだったけど、意外と僕ってやればできるんだね」
「そうだね…。まさか私が負けるなんて。悔しいけど認めるよ。おめでとう」
「しかし二位でも点数で見たらほぼ大差ないかと。アイリスさんは私やソフィアさんの勉強を見てくれていましたし、それでこの点数は賞賛すべき結果です。それにほら、見てください。私も三位という順位に落ち着くことが出来ました」
「そうそう、そんな気を落とすなって!!俺なんて十位だぜ。それに比べたらみんなすごいからな!」
…うう、みんなの優しいフォローが逆に胸に来るんだけど。ルークなんていつも以上にニコニコとしていて気持ち悪いくらい。そんなに嬉しいもんですかね、一位になれて。
「アイリスさんの健闘は讃えるべきだけど、あの約束、忘れてないよね?」
「うん、そりゃあ、まあね」
「それなら良かった!約束は約束だからしっかりと守ってもらうよ。ということで来週の土曜日、空けといてね。少し着いてきて欲しい所があるんだ。外出申請は僕がしておくよ」
「分かった…」
私の返事に満足したのだろう、ルークたち三人組はそれだけ伝えると大勢の生徒で賑わうエントランスから離れていった。
「ねえねえアイリス。ルーク様が連れていきたい所ってどこなんだろうね?…もしかして、デートのお誘いだったり!?」
女子という生き物は恋バナが好き、というのは全世界の共通点であるらしい。ソフィアもその例に漏れずに、愛らしいピンク色の瞳をキラキラとさせて勝手に盛り上がっている。
「ないない!!それはないってば!!」
「そんなの分からないじゃん?でもそういうことなら私全力で応援するよ!」
「本当にそんなんじゃないと思うけど」
「えぇぇ?なんだつまんないのー。でも実際問題アイリス的にはどうなの?ルーク様のこと」
どうって言われも…。私はそもそも恋愛とかするつもりはないからなぁ。だけどどうして?と尋ねられたら明確に答えられる自信はないし。私にそういう気持ちはよく分からない。しかしこの状況で誤魔化したりした方が勘ぐられて厄介なことになるだろう。ここは正直に伝えた方が良さそうだ。
「うーん。素敵だとは思うけどね。王子様だし容姿は綺麗だし、頭も良い。それだけ見たら完璧なんだけど…」
「けど?」
「なーんかルークって読めないところがあるというか、腹の底が見えないというか?そういう部分が引っかかるんだよね」
「ふーん。アイリスから見たらそうなんだ。でもその気持ち少し分かるかも。初めのうちは気づかなかったけど、生徒会として親しくなり始めてからは特に、ちょっと他人と線を引いてる感じがあるよね」
私の返答に納得したのか、ソフィアはそれ以上の追求はしてこなかった。しかしそれで確信した。ソフィアから見てもそう感じるということは、ルークが他人と少し距離を置いていることは間違いない。
まあ私には関係ないんだけどね。




