66、救出成功?
カイルの声に魔物と応戦中の会長が振り返り、私たちのピンピンした姿を目視したのか、
「仕方ない、ここは私たち3年生が時間を稼ぐ。他の者は急いで脱出だ!」
そうテキパキと指示を出した。流石会長。状況判断がこの上なく速い。
「ありがとうございます!先輩たちもどうかご無事で!」
「おっと、その前に。これ、ちゃーんと持っていってね!」
オーネット先輩がカチャカチャと音がする何かを放り投げてこちらへ渡してきた。見ると先行隊がこっそりと手に入れるはずだった檻の鍵だ。よかった、これで余計な魔力を使わないで済む。
急いでその場から離れた私たちは、久しぶりの再会を喜び合うまもなく、無我夢中で走り出した。
「アイリス〜!!ごめんね、こんなことになって…!」
「ソフィアのせいじゃないから大丈夫だよ。でも助けに来てくれてありがとう!」
「二人とも話してる余裕はないよ!とにかくまずは生徒の救出を!二手に別れよう!」
エリック先輩のその一声で、事前に決めておいた2チームに分かれて行動を開始する。私は、ルーク様とディランと一緒のチームで東側の檻を担当することに。走りながらもなんでこんな状況になっているか、二人に説明を求めた。
「今聞くことではないと思いますが、なぜ戦闘になったのですか?魔物がまだ寝ていなかったとか?」
「いいや、魔物はアイリスさんたちの情報通り確かに寝ていた。しかし、鍵を取ろうとした瞬間、大きな音が鳴ってね」
「おそらくですが、保護魔法の一種がかけられていたのでしょう。そのせいで魔物が目を覚ましたのです」
…なるほど。確かにそれならどうしようもないか。とはいえ保護魔法を鍵にかけておくだなんて、なんて用心深い魔物だろう。
走り続けるとようやく生徒たちが囚われている東側の檻へ到着した。皆先程の騒ぎで目を覚ましているのか、不安げな顔をして檻の中で体を寄せ合っている。
「さあ、みんな!僕たちが来たからにはもう大丈夫!今からこの洞窟を抜け出すからみんなはぐれないようにしっかりとついてきて!!」
ルーク様が安心させるようにそう言うと、囚われていた生徒たちは口々に安堵の声を漏らす。
「…よかった!私たち助かるのね!」
「本当にありがとう!もうダメかと思った!」
東側の生徒全員を檻から救出すると、皆で出入り口へと急いだ。出入り口には見張りで立っていたであろう魔物が地べたに転がっているのが見える。もしかしなくても会長たちがやったのだろう。有り難くそのまま魔物の横を素通りして脱出を果たすと、次いでエリック先輩たち西側の生徒たちもそこに合流する。
「よし、全員無事だね。じゃあ早速だけど村を目指して走ろう!皆、僕たちについてきて!」
エリック先輩の合図で生徒たちは一塊になって再び一斉に走り出した。その隙に私は急いでライファを呼び出すと、会長たちへの伝言を頼む。
「ライファ、生徒たちは全員脱出して村を目指していることを会長たちに伝えてくれる?いいタイミングで戦闘から離脱出来るように援助もお願い」
〈りょーかい!それがアイリスの頼みなら!〉
村までの最短ルートを知っているであろう、エリック先輩やルーク様を先頭にして、中盤にはディランとソフィア。最後尾には私とカイルがついて生徒たちを囲むように進んで行く。追っ手などは会長たちが引き留めてくれているおかげで全くなく、たまに遭遇する野生の魔獣や魔物を薙ぎ倒しながら順調に森を走る。夜空には満天の星と明るい月が浮かんでおり、夜だというのに少し明るい。
どのくらい走ったのだろうか、東の山から朝日が登り、空の色が徐々に変わっていくのを見た。
「…もう無理!走れない…」
とある生徒がその場で崩れ落ちたのをきっかけに私たちは近場で一息つくことにした。ただでさえ十分な食事も取れずに弱っていたのだ。ここまで走ることが出来ただけでも奇跡といえよう。
私たち一同は魔物から身を隠すことが出来そうな草木が生い茂った場所を探して移動した。
「それじゃあみんな!とりあえずここで休憩するよ!睡眠は交代で行い、夜にはまた出発するからそれまでは各自で休んでおいて。今から食糧を配るから奪い合わないように」
エリック先輩って普段はキャンキャンと吠える子犬みたいだと思っていたけれど、意外とリーダーシップがあるんだな。こんな時でも冷静だし、その落ち着きぶりのおかげで生徒たちの不安が少し和らいでいるのが分かる。それに面倒見がいい一面もあるし。そんな風に感心していると、隣にルーク様がやって来た。
「アイリスさん、今更だけど大丈夫?怪我とかはしてないよね?」
「お気遣いありがとうございます。私は大丈夫ですわ。私より他の生徒の方が気になります。かなり魔力と体力を消耗してるはずですし…」
「アイリスさんだって危険な目に遭ったって言うのに、こんな時まで他人の心配?もっと自分の身を大切にしなよ。僕はこれでもアイリスさんとカイルのこと、とても心配したんだよ。ちゃんと他の人に心配かけさせてた自覚を持ってよね」




