表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第四章、追憶

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/93

61、魔物の集落

 翌朝。といっても時計もないし、日の光の当たらない檻の中では朝が来た事を確認する術はないのだが、カイルによって起こされた私である。


「おい、起きろ。朝だぞ」


「…ふわあぁ…。もう朝か。はやいねカイル、おはよう」


 こんな固い床で寝られる訳はないと思っていたのだが、昨日は疲れがたまっていたのか思ったよりすんなりと眠ることが出来た。

 それにしても昨日の夢は一体…?ぼんやりとした頭で考えても答えは見つからない。それを寝ぼけていると勘違いした彼は、私に水を差しだしてきた。


「ほら、飲めよ。まだぼーっとしてるのか?今日からアイリスもバリバリ働くことになるんだからな。そんなんじゃこれから先持たないぜ」


「ありがとう…」


 水の入った容器を受け取り口をつける。その冷たい水で体がぶるっと震え、頭がだんだんシャキッとしてきた。水分補給をして容器をカイルに返すと、なんと彼はそのまま容器に口をつけて水を飲み始めたではないか!こんな時にこんなことを言っている場合ではないのは分かっている。だが、それって…。


「…うん?なに、どうかしたか?」


「…いいや、なんでも…」


 どっからどう見ても間接キス、じゃない!?当の本人は涼しい顔をしているのだから、私が意識しすぎてるってことだよね。…うん、まあ、カイルが気にしないのならいいんだけど!


 すると起床早々になにやらこの檻に近づく何者かの足音が聞こえてきた。カイルに目配せをすると、視線で分かっている、と返されて静かにその時を待つ。


 姿を現したのは、カイルの情報にあった通り二足歩行で歩く魔物だ。…本当にいたんだ。もしこれが世に知られたら国中大パニックになるに違いない。それくらいあり得ないことなのだ。その魔物は私たちを檻から出すと、逃げられないように腰回りに縄をつけ、


「ツイテ、コイ」


 とだけ言った。大人しくついていき辿り着いたのは鬱蒼とした森の中で少し開けた場所だった。発展途上の集落らしい光景に目が離せなくなる。地面はその辺り一体だけ平らに馴らされ、作りかけであろう簡素な木製の家に、簡易的ではあるが井戸まである。

 なんか思ったよりもちゃんと街づくりをしているみたい。私たちよりも先に働いていた人間は年齢も見た感じ同い年くらいだから消えた生徒たちで間違いないだろう。そしてそれを監督するようにまた別の人型魔物が仁王立ちで立っている。


 なるほどね。ここでは人間が奴隷で魔物の方が立場が上なんだな。数多くいる生徒に対し魔物の数は少なく、この集落を作るのに魔物だけでは労働力が足りないないんだろう。単純に考えれば魔物のほうが体力があって街づくりに向いていそうだが、私たちはグレードウォール学園の生徒。つまり誰しもが少なからずの魔法を使える。そのため魔物たちは自分たちで汗水たらして働くよりも生徒に働かせた方が楽が出来るってわけだ。

 実際そこで働いている生徒は物を浮かせて運んだり、穴を掘るため水魔法を地面に放ったりと、多くの魔法を駆使している。隅々まで観察をしていると私たちを連れてきた魔物が何やら服を渡してきた。


「コレ、ヤル」


 確かに今の私はベッドからそのままここに直行しているからルームウェアのままだった。動くってなれば着替えは必要だろう。でもここで着替えるのか…。更衣室なんかあるわけもないし仕方ないんだけど。躊躇う私に気付いたカイルは顔を赤くしながら、


「俺後ろ向いてるからっ!」


 と背中を向けた。まあ別にいいんだけどね。私には魔法があるからさ。服を着替えるのだって魔法で一発だ。こういう日常生活で使うしょうもない魔法はライファと一緒に遊んでいた時に習得したもので普段は使うことがないんだが、まさかこんな時に役に立つなんてね。指をパチンと鳴らして魔法を使う。


("チェンジ・エクスト")


 すると一瞬で私のルームウェアと渡された洋服が入れ替わり着替えが終了した。着替え終わったら今度は労働の時間だ。魔物に指示される通りに土を運んだり、穴を掘ったり、木を伐採してカットしたり…。魔法がなかったらさぞ大変であろう作業を続けること数時間が経った。お昼になると魔物が木の実やら果物やらの食料を配給しに来て休息をとる。十分な休息を取ったらまた作業の続きだ。


 こうして一日が終わり、私や他の生徒はそれぞれ担当の魔物に連れられて元の檻へ戻された。戻される最中、他の生徒の檻の場所を把握しながら帰る。他の生徒たちは皆比較的入り口に近い檻の中に入れられているのだが、私たちの檻は少し奥まったところにある。これが意味するところとはなんだ?


 他にも色々調べたいことは山のようにあるが、囚われの身としてはライファが到着するまで何も出来ないんだから歯がゆいことこの上ない。私がヤキモキしているところにタイミングよく待ち望んでいたライファが到着した。


 〈お待たせお待たせ〜!ちょっと遠かったから手こずっちゃった!アイリス、元気?〉


「元気?じゃないよ!遅かったね、ライファ。久しぶりの大仕事で腕が鈍ってたんじゃない?」


 〈もう!なんでそんな意地悪なこと言うのさ!そんなこと言うんなら協力してあげないからね!〉


「ごめんごめん、ちょっと言いすぎたかも。じゃあ早速だけどここがどこなのか教えてくれる?」


 ライファの話によれば、ここは学園からかなり離れたところに位置する森で、名前をタルアメリの森という。この森は魔物が多く住んでいるとされている場所で普段から人の出入りは全くない。まさかそんなところにいるなんて、これは救助を待つにしても相当時間がかかりそうだ。


「それならどうにかして脱出する作戦を立てた方がいいかな」


「いや、脱出するにしてもここにいる生徒たち全員を連れての脱出はかなり危険でリスクが大きい。それよりも救助を待って合流した方が安全だ。それにこちらの場所は分かってるんだ。ライファにこちらと学園側のパイプ役になって貰えばより早く救助が来る」


 〈ええー?めんどくさーい!!なんで僕がそんな下っ端みたいなことしないといけないの?〉


「ごめんねライファ。私からもお願いしていいかな?こちらの情報をルーク様たちに伝えてくれる?これが終わったらご褒美に私の手作りケーキを作ってあげるから!」


 〈…アイリス、僕がお菓子の話を出せば食いつくと思ってない?まあ、いいけどさ〉


 ライファの承諾を得た私は、現在の状況を事細かに伝えてライファを送り出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ