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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第四章、追憶

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59、聞き込み調査

 ケイティから話を聞くことに成功した私たちは、現在生徒会室に戻ってその情報をまとめている。


 彼女の話によれば、失踪前日もいつも通りアネッサと一緒に寮へと戻ったらしい。次の日、登校するため彼女の部屋を訪れたが返答がなく、その日は一人で登校したのだとか。次の日も次の日も、何度尋ねても部屋から出てこないアネッサを不審に思い、担任へと報告。同じく不審に思っていた担任が、寮のマスターキーを使って扉を開けるとそこには誰もいなかった。つまりアネッサの部屋は完全密室状態で、本人だけがいなくなったということだ。学園側は物的証拠もなく部屋が荒らされた様子もないため、完全お手上げ状態ということ。


 こんなん私たちの出る幕じゃなくないか?大人しく聖騎士団に任せるべきだ。犯人がいるとしたらなぜ密室状態を作り出せたのか疑問が残る。それよりも生徒自身が人に見られないタイミングで部屋から抜け出し鍵をかけ、自らいなくなったと見る方が自然だ。だとしても生徒自身にそんなことをする動機がない。人間関係に悩んでいた様子もないし家庭関係も良好のため、その線もどこかチグハグしている。


 この不可解な事件において、学園は憶測だけで動けないというのもあるが、周りの評判を気にしているところがあるからちゃんとした捜査は行われていない。



 翌日も別の失踪者近辺の人間に聞き込みを行ったが、どれも同じようなことしか聞けなかった。誰一人として人間関係に問題もなく、部屋も普段通りの状態、さらに全員の部屋にはきちんと鍵がかかっていた。失踪した状況は全員同じなのだが、被害者の共通点はまるでない。性別も年齢も学科も学年も、本当に無作為なのだ。一体どういうことなのだろうか?



 なんの進展もないまま、被害者が増え続ける一方でまた本日新たな被害者が出た。その被害者というのは…私たちのクラスメイトであり、友達のカイルだ。その知らせを聞いた時のルーク様やディランの取り乱しようと言ったらなかった。


「…嘘、でしょ?まさかカイルまで…。そんな、あり得ない!!!」


「これは流石に看過できません!!今すぐ聖騎士団に報告を!!!」


 カイルが失踪した日を境に学園には厳重な警備がしかれ、何人もの聖騎士団員が学園に出入りするようになった。登校から下校はもちろん、移動教室の間も常に誰かが側にいる。


 そりゃあそうだ、元聖騎士団長の息子がいなくなったんだからそれくらいするだろう。このように騎士団が本腰を上げて捜査に取り掛かっているものの、被害者は出続ける一方だ。

 ついには非常時以外の魔法の使用が禁止されていた学園だが、生徒の魔法使用を許可するようになった。理由は明白。自分の身を自分で守れるように、だろう。


 それ以来私は自分の契約精霊のライファを堂々と連れ回すことができるようになった訳だが。


「ねぇ、ライファ。今回の事件について、ライファはどう思う?」


 〈どうって言われてもねー?明らかに何者かによる誘拐事件じゃない?一人や二人ならともかくこうも大勢の人が急にいなくなるなんて、おかしいでしょ?〉


「まあ、そう考えるのが妥当だよね。だとしても犯人の動機は?手口は?部屋が荒らされていないっていうのが引っかかるよね。もし犯人がいるのなら、生徒自身の抵抗にあってもおかしくないのに」


 〈それに密室っていうのも変だよね?どうやって生徒を部屋から連れ出したんだろう〉


 寮の部屋の鍵は生徒自身が管理をしているはずだ。どこにあるかも分からない部屋の鍵を、犯人がわざわざ探し出して施錠するだろうか?


 聖騎士団が調査を進め出したために私たち生徒会の仕事はもう何もない。ここ最近はサークル活動や生徒会の活動は禁止されており、部屋でぼーっと今回の事件について考えることくらいしかやることがないのだ。まあ時間ならいくらでもあるからね。


 〈ねえ、アイリスはあの男のこと心配?〉


「カイルのこと?そりゃあもちろん心配に決まってるよ!友達なんだし当たり前でしょ?」


 〈ふーん、友達ね。そーなんだ。本当にそれだけ?〉


「それだけって…それ以外に何があるの?」


 〈べっつにー?なんでもなーい〉




 その日の夜のことだ。いつものように電気を消して布団に潜り込み、私は深い眠りについた、はずだった。突然凄まじく大きな魔力を感じて目が覚めた。瞬時に周りを見渡すも特別変わったこともなく、その強大な魔力のみを感じ取ったらしい。不審に思った私はすぐさまライファを呼び出した。


(ライファ、いる?)


 心の中で念をとばすと、


 〈もちろんいるよ。アイリスも気づいてるよね?この魔力…なんだか怪しいね〉


 すぐ側で見張ってくれていたらしいライファが姿を現した。ライファもこう言うんだから緊急事態であることは間違いない。

 落ち着け、私…!これから起きることをしっかりと記憶するんだ。覚悟を決めてから、なんでもないことのようにまた布団へと潜り込み寝たふりをした。


(ライファ、視界借りていいかな?)


 〈そうくると思った!いいよ!僕も今から何が起こるか気になるしね〉


 ライファの許可を得た私は魔力を集中させ、精霊術を発動させる。


("マッチ・ザ・ワールド")


 次の瞬間視界がぐわんと高くなり、ライファの目を借りれたことを実感する。うう…ここ最近使っていなかったからちょっと気持ち悪いかも…。

 そのまま天空から私の体を見下ろすこと数分。すると私の体周辺に光り輝く魔法陣が出現したではないか!!

 その瞬間私の本体がその場から綺麗さっぱりと消え去ってしまった。まずい!どこへ行ったんだろう!


(ライファ、ごめんだけど私は本体に戻るから、私の魔力を追跡してくれるかな?)


 〈オッケー!じゃあそれまで無事でいてね!〉




 急いで術を解除した私が目にしたのは急な暗闇。視界が慣れずにしばらくそのままの状態でいると徐々に目が慣れてくる。低めの天井に灯りがない殺風景な部屋、というか檻、みたい。鉄格子がはめられたそこはまるで牢獄のようだ。意識が戻るとなんだか体が痛い気がしてきた。たまらなくなってそのまま体を起こすと、私が横たわっていた床は冷たく固かった。そんな私に気づいたのか、暗闇の奥からする気配が声をかけてきた。


「誰か、そこにいるのか?」

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