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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第四章、追憶

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58、大黒柱

「…くっ…!」

「…いったぁ…!」


 同時に苦痛で顔を歪ませる二人に、笑顔のままのヘンリー先輩がこう言った。


「二人ともさぁ、自分たちがボクたちのグループに迷惑をかけてること分かってる?テオは遅れてきたんだから言い訳しないでちゃんとみんなに謝って。エリックもだよ。怒る気持ちは理解出来るけど、君たちの喧嘩でただでさえ少ない時間が無くなってることは分かるよね?ほら、もう見回りの時間が終わっちゃったよ」


 …なんというべきか、流石だ。伊達に生徒会メンバーとして仕事してきただけはある。そりゃ優しいだけじゃこの癖が強いメンバーを御しきれないだろうしね。このメンツが上手く調和を保ってきたのはもしかしなくてもヘンリー先輩の手綱の握り方が上手だからなのかも。


 見るからに重い一撃が効いたのか、二人は叱られた子犬みたいになって次々に謝罪の言葉を述べる。


「ごめん、俺が悪かったよ。次から気を付ける」

「僕も冷静になるべきでした。ごめんなさい」


「ならよろしい。じゃあ今日の見回りは今のも含めて二人で報告に行ってね。ボクたちは先に教室へ行ってるから」




 *  *   *   *



「っていうことがあってね。びっくりしちゃった。まさかあの穏やかな先輩からあんな一撃が出るなんて」


「そんなことがあったんだね。なんだか意外かも。体育祭の運営で私と仕事してた時は普通だったよ?でもこれで分かったね。普通の人が生徒会に入れるはずもない、ってことか」


 同じく朝の見回りを終えたソフィアと教室で合流した後早速今朝の出来事を話した。ヘンリー先輩は生徒会メンバーで唯一ソフィアとスムーズにコミュニケーションを取れる人物だ。そのため何かと同じ仕事を任されていたらしく、先輩とソフィアの仲はかなり良好である。そのソフィアがそういうんだから、先輩のああいったことは珍しいのだろう。


「もしかしてあのヘンリー先輩を怒らせたんだ?それはまた怖いもの知らずというか、すごいね君たち」


 いつの間に登校していたルーク様が自然と会話に加わってくる。しかし怒らせたのは私じゃない。自分自身の名誉のためにも声高らかに否定した。


「私じゃあありませんわ!」


「それは言われなくても分かります。大方(おおかた)テオドール先輩あたりが遅刻でもしたのでしょう?」


 ルーク様の背後から声がしてチラリと見ると、ディランが教科書やらなんやらを準備している。

 なんだかこの二人と教室で話すことにも慣れてきてしまった。入学当初は関わらないって決めてたのに今ではどうだ。もう普通の友達みたいに気安くなっているんだから笑うしかない。ここ最近は諦めて普通に接することにした私である。


「よく分かりましたわね。それはそうと、お二人はヘンリー先輩が怒っている様子を見たことがあるのですか?」


「「……。」」


 何気に口にした疑問で、二人は気まずそうに顔をそらした。


 …この感じだと、もしかしなくても二人とも前科あり、か。じゃないと無反応はおかしい。本当に何をやらかしたんだ。


 黙りこくった二人に続きを促すようソフィアと二人して見つめると、ようやく観念したらしいルーク様が口を開いた。


「…昔の話だよ。こう見えて僕たちは子供の頃、結構やんちゃをしてたんだ。その時兄さんの友達だったヘンリー先輩に出会ってね」


「簡単に言えば怒りの鉄槌を食らったことがあるというだけです。今はもうそんなこと恐ろしくてできませんが」


 そう無理やり話を切り上げられた。結局何をしでかしたのかは教えてくれなかったけど、面白い話が聞けたからよしとする。


 ルーク様やディランがやんちゃ…?今の様子からはまるで考えられない。昔というのだから幼馴染であるカイルも一緒になってやんちゃしていたのだろう。…なぜだろう、カイルだけは簡単に想像できるな…。




 一日の授業というのは退屈で、ぼーっとしている間に全てが終わり、もう放課後だ。つまり見回りの時間である。生徒会室にみんなで向かい、集まったグループから見回りを開始する。今回は今朝のこともあり、私たちのグループが先に集まったようだ。



 人通りが多いところを重点的に巡回する私たち。放課後はほとんどの生徒がサークル活動に励んでいるためどこもかしこも賑わっているはずだが、ここ最近はあきらかにいつもよりも静かだ。


「やっぱりみんな自室に籠っているみたいですね」


「そうだね、早く元の生活に戻れるようにしてあげないと。何かいつもと違う点や気になったことがあったら何でも話してくれていいからね」


 そうして注意深く様々なところを見て歩いたが、やはり何も怪しいところはない。そもそも素人の私たちが何か見つけることができる方が変というもの。散々歩き回って疲れたのか、集中力がきれたらしいテオドール先輩が遂に弱音を上げた。


「ねえねえ、こんなことしてても何も見つからないんだから、直接被害者近辺の聞き込みをした方が早くない?消える前の様子、とかさ。それが分かれば今回の事件の糸口もみつかるかもしれないし」


「確かにそれも一理あるか。じゃあ早速だけど被害者の親友あたりから探ってみよう」






 この事件の一番初めの被害者は、アネッサ・フリスト、商業科2年。学科的にも商家の育ちで平民の家庭だ。この生徒がいなくなった時期は約3週間前。

 こちらの生徒はいたって普通の真面目な生徒であり、無断欠席をするような人物ではなかったみたい。担任の話によれば、失踪前日もいつも通りに出席していたらしい。今日はアネッサの親友である、ケイティという生徒の元を訪ねることにした。


「ケイティさん、ですか?アネッサさんのことでお話を伺いたくて」


「はあ、特にお話出来るようなことはないのですけど」


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