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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第三章、生徒会のお仕事

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43/58

43、お前もか

 そうして私は再び救護班の席に戻ると、借り物競走の続きを傍観し続けた。


 中には、好きな人、なんていうお題もあったらしく、その紙を引いた生徒は顔を真っ赤にしながら想い人に公開告白をしていた。


 あの先輩が考えそうなお題だよ、ほんと。冷やかしを受けながらゴールする様を見て、青春だなぁなんて、達観した目でその生徒たちを見守る。このように続々とレースが続いて、最後の組がスタートラインについた。



 すると突然あり得ないくらいの黄色い声が上がって、思わずそちらに目を向けると、先ほどまで審査員をしていたオーネット先輩が位置についているじゃあないか!


 …何してんの、ホント…。貴方は審査員だったでしょうが!!急いで審査員の位置を確認すると、生徒会長が代わりに立っていた。いやほんとにどうして?


 オーネット先輩はみんな(主に女子)の歓声に応えるように笑顔で手を振っている。レースがスタートして紙を一枚取り出し確認した先輩は、あろうことか迷わずにこちらに向かってきてる、ような気がした。あくまで気がしただけだが。


 なんとなく嫌な予感がした私は、保健医の先生に、


「すみませんっ!お腹が痛くなってしまってお手洗いに行っていいですか!!!」


 と早口で告げると、返事も待たずに急いでその場から立ち去ろうと全力ダッシュで校舎の方へ駆け出した。あろうことか後ろからダッダッダッという地面を蹴る音が聞こえる気がするが無視だ!無視!!


 しかし私はあっけなくその足音の主に捕まってしまった。

 くそぅ…男子の脚力に勝てる訳ないとは思ってたけど、まさかここまでとは…。


「ねぇねぇ、なんで逃げるのかなぁ?君が行くのはそっちじゃなくてこっちだよ!さ、一緒に行こうか!」


 清々しいくらいに爽やかスマイルの先輩ははっきり言って怖すぎる。ついでに周りの女子の視線も怖すぎる…。


「すみません…逃げるつもりはなかったのですが。急に腹痛がしたものですから、私以外の人を連れて行って下さい」


 遠回しに断ったつもりだったのだが、それで引くような先輩ではない。


「あらら〜それは大変だ。じゃあこれが終わったら行っていいよ?腹痛なら仕方ない、走れないよねぇ。じゃあ、…ごめんね?」


 全くごめんと思っていないような口調で先輩はこちらに近づいたかと思うと、私の腰と足に素早く手を回した。急に視界が高くなり、先輩の整った顔が近くなる。


「アイリスちゃんって思った以上に軽いんだねぇ。もっとちゃんと食べないとダメだよ」


 デリカシーのないことを言われたが、私はいまそれどころではない。この状態は…俗に言うお姫様抱っこというやつか!!私が嘘なんかついたばっかりに…。


 お姫様抱っこには人並みに憧れを抱いていた私だが、まさかこんなところで叶うなんて誰が想像出来ただろうか。気恥ずかしさと焦りとで体温が上昇する。

こんな姿他の誰かに見られたら…!ん?他の誰かって…?


「先輩!治りましたわ!自分で歩けますので降ろしてくださ、」


「そんなすぐに治るわけないじゃなーい。アイリスちゃんは無理しなくていいからさ。とりあえず俺の首に手を回せるかい?じゃないと落っことしちゃうかも…?」


 ふざけるなよ、この野郎。そういえばなんでも言うことを聞くと思いやがって!おっと失礼、口がついつい悪くなってしまった。


 私を下ろす気のない先輩に観念し、ならば早く終わってくれという意思を込めて仕方なく自分の手を先輩の首へ回した。


「よしっ!じゃあ行きますか!」


 女生徒の悲鳴に近い声を聞きながら、どうすることも出来ない私は先輩の顔をそっと下から見上げた。スッと通った鼻筋も涼しげな目元を覆う長めのまつ毛も、彼を構成する一つ一つの主張が激しいのにそれが上手い具合でバランスを保っている。


 しっかしこう見ると本当にイケメンというか…相当モテるんだろうな。


 審査員の生徒会長にお題の紙を渡すと、会長は複雑な顔をしながら、


「…まあ、いいだろう。行っていいぞ」


 と言った。


「よかったぁ!じゃあおさきっ!」


 抱き抱えられたままゴールした私たち。先輩はようやく私を下ろすと、


「アイリスちゃんのおかげで一着だったねー!ありがと〜」


 なんてどこかへ行こうとした先輩をなんとか引き止める。私にあんだけ恥をかかせておいて説明なしなんて許せる訳ないだろう。


「あのっ!!先輩のお題は教えてくれないのですか?」


「え〜?そんなに気になるの?まあ、別に隠すことでもないしいっか。俺的には結構役得だったしね。じゃあさ、アイリスちゃん当ててみてよ。何だったと思う?」


 うっわめんどくさっ、さっさと教えてくれればいいのに…なんて口が裂けても言えない。


「…何でしょう?可愛がってる後輩、とかでしょうか?」


「ブッブー!それもまあ間違いではないけど。せ・い・か・い・は〜、好きな人、だよ♡」


 そうかそうか、そういえばこの人はこういう人だったよ。人をからかうのを生き甲斐とするような軽い人だった。この人の言動にいちいち反応してたら疲れてしまう。


「あ、そうですか」


「あれ、反応薄くない??ひどいよアイリスちゃん!そこはこう、ほら、照れたりするのが正解でしょ!?」


「先輩の言動はいちいち軽いんですのよ、それにそのお題、別に異性として好きな人を連れてこいっていう指定はされてないでしょう?」


 ズバリと切り込むと先輩が少し凹んだように、


「頭の良い子はこれだから…、つまんないの〜。でもでも!そんなアイリスちゃんを困惑させることを一つ教えてあげようか。アイリスちゃんはカイル君が引いたお題って何か知りたくない?」


「まぁ、教えてくれるなら知りたいです」


「ホントは言わない方がいいだろうけど、カイル君には内緒だよ?あのお題はね〜」


 気になってる人、だよ。イタズラっぽい笑みでそう言った先輩は明らかにこちらの反応を見て楽しんでいる。しかし私はどんな顔をすればいいのか分からなかった。気になる人って、どういう意味で?まさかとは思うがカイルが私を…?いや、そんなはずはない。




 十面相をした私を存分に見て心ゆくまで楽しんだ先輩が、じゃあね〜と言って帰った後もしばらく私はその場から動けなかった。




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