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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第二章、学園

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25/63

25、友達候補

内容を少し直しました。

 騒がしくなった教室を後にする私。


 今日は日直の仕事があったからいつもより遅くなってしまった。急ぎ足で目指すはもちろん図書館である。学園の図書館はとても広く本の種類が豊富だというのに利用する人が少ないなんて勿体ないと思う。


 人がいないからこそ私みたいな人間が入り浸れるからそれはそれで構わないのだけど。


 借りた本を片手に私のお気に入りの場所に向かう。

 ただでさえ人がいない図書館の中でも最奥も最奥。そこにはひっそりと設置された一人掛けの椅子が誰にも気づかれないように佇んでいる。椅子の目の前には大きな窓があり、太陽の光をいっぱいに取り込んで日当たりが良い。


 いつもの場所に辿り着いた、のだが…今日はすでに先客がいた。

 特徴的な白い髪とピンクの目を持つ女の子が。


 …確か同じクラスのソフィア様、だったよね。私が仲良くなりたいランキングナンバーワンの彼女がその椅子に腰かけて読書をしている。やはり可愛い…。


 しかしどうしたものか。彼女に声をかけたくてうずうずしているけど、読書の邪魔をするのはちょっとよろしくない。私だったら読書中に話しかけられると嫌だしな。


 結局彼女の読書が終わるまで声をかけずにその様子を眺めた。可愛らしい女の子の読書姿をずっと観察する私って相当気持ち悪いかも…。


 やっと本が読み終わったのか顔を上げるソフィア様。


 よし、声をかけるなら今しかない!


「ごきげんよう、ソフィア様」

「…ア、アイリス様…?…ごきげん、よう…」


 か細い声に少し不信感をにじませながら挨拶を返してくれるソフィア様。


「あの、どうして私の名前を知っているのかしら」

「…どうしてって…。アイリス様は…入学以前から有名です、から…」


 なぜだ?入学式後ならともかく以前って。


「有名ってどんな風に?」


 ソフィア様に説明を求めるように促す。それは以下の通りだ。


 アイリス・アルベルン。アルベルン伯爵家の一人娘。社交界の場に一切顔を出さないことで有名。その姿を見た人は誰もおらず、一時はアルベルン家に本当は娘なんていないのではと噂になっていた。その存在不明な少女が学園に入学すると聞いて貴族の中では注目の的。この機会にぜひともお近づきになりたいと考える家が数多くいた。加えて入学時の試験でも学年一位という秀才さを見せつけ、さらに有名になった。


 …らしい。でもさ、お近づきになりたいんなら声かけようよ。私誰にも話しかけられたことないんですけど。私の容姿にビビって遠巻きにするようじゃダメだと思う。


 それを踏まえると私が目立たずに学園生活をおくるのは最初から無理だったってことか。

 それに私の家はちょっと特殊だからなー。騒がれるのは必然ともいえる。お父様とお母様は伯爵という階級を抜きにしてもあることでとんでもなく有名なのだがその説明はまた今度。



 それについては納得した。だがまだ引っ掛かってることがある。だから学年一位って何?あの恐怖の手紙にも書いてあったけど。うう、思い出しただけで背筋が寒くなってきた…。


「…知らないの、ですか…。入学式の次の日のクラス発表…αクラスから順に名前が綴られていたでしょう…?それは名簿順とか試験番号順ではなかったのには気づき、ました?…あれにはちゃんと意味があって…。成績順に上から…名前…書かれて、います…。アイリス様…一番上に名前…あった…ので、一位…は、アイリス様…」


 そういえば名前が見つけすい一番上にあったな。私の名前は家名をとっても下の名前をとっても綴りがAから始まるし、何も不思議に思わなかった。


 …待って待って。それが本当ならあの恐怖の手紙が私に届いたのは間違いでもなんでもなかった?…知りたくないことを知ってしまった。


「…用事がないなら私、失礼します…」


 感情の起伏が少ない顔と小さい声で拒絶の意を示し足早に立ち去ってしまうソフィア様。あーあ、逃げられちゃったか。でもまあいい。初めてルーク様やディラン様以外の子と話すことが出来たんだから。これは大きな一歩だよね。




 次の日の朝早く、私は登校してすぐに教室の掲示板の前に立っていた。昨日先生が言っていたペアとやらを確認するためだ。出来れば仲良くできそうな子だといいな。


 えっと私とペアなのは…ソフィア・ミッチェル!?ありがとう神様…。嬉しすぎてにやにやが止まらない。えへへ。これを機に絶対仲良くなるんだから!


「こんにちはアイリスさん。何かいいことでもあったのかい?」


 でたなっ!この爽やかスマイル王子…。あれ、悪口になってないなそれ。


「いえ、そんなことは」

「確かにいつもより口角が上がっているように感じますね」

「気のせいではないですか?」


 この二人に気づかれる程度には浮かれてるのか、私。でも今の私は機嫌がいいからそんなことはどうだっていいのだ。


「僕もディランに同意だな。そんなご機嫌の君にちょっと頼みごとをしたい。次の休みに開かれるパーティーがあるんだけど…どうしても参加しなくてはいけないめんど、いや大切なものなんだ。よかったら僕と一緒に参加してくれないだろうか?まだパートナーが見つかっていないんだ」


 今確実に面倒って言いかけたな…。


「あら、ルーク様のパートナーになりたい方なら山ほどいらっしゃいますでしょう。大丈夫ですよ、ルーク様ならきっとすぐにお相手が見つかります」


 これ以上話すことはないと席に座る。なんだか少し恨めし気な視線を感じた気がしたが知らない。ルーク様の話を頭の中から追い出すように他のことを考える。


 ふっふっふ…。ソフィア様との仲よし大作戦決行だー!



 放課後を待っていつものように図書館に向かう。昨日出会ったソフィア様は明らかに本を読みにきていたし、こんな場所にある図書館に顔を出すってことは相当な本好きなんだろう。

 それならよくここを利用しているはずだから司書の先生からソフィア様の情報を聞き出せるかもしれない。仲良くなるためにはまず相手のことを知らないと。


「あらアイリスちゃん。今日も来てくれて嬉しいわ」


 おっとりとほほ笑むのはこの図書館の管理人でもあり司書のカリン先生だ。


「こんにちはカリン先生。実は先生に聞きたいことがあって」


「何かしら。私に分かることならなんでも聞いてちょうだいな」


「先生はソフィア・ミッチェル様をご存じですか?」


「もちろん知っているわ。よくこの図書館に来てくれる子よ。それに彼女はアイリスちゃんと同じように有名だもの」


 …初耳なんですけど。私には友達がいないからそういった情報は一切入ってこない。自分で言ってて悲しくなるけど。


「もしかしてアイリスちゃんは知らないのかしら。そうね…教えてあげてもいいんだけど。どうしましょうか…。あっ!いいこと思いついた!アイリスちゃんにこの本を貸してあげるわ。それを読めば全てが分かるから」


 そう言って先生が差し出したのは児童向けの薄い絵本だ。これがソフィア様の秘密につながっているのか。半信半疑で本を受け取る。


「アイリスちゃんはいい子だからきっとソフィアちゃんと仲良くなれるはずよ。ソフィアちゃんも本がとっても大好きなの。今日はまだ来てないけどもう少し待ってみて。いつもなら17時くらいにここへ来るのよ」


 どうやらカリン先生には私がソフィア様と仲良くなりたがってるのがバレていたらしい。さりげなく私とソフィア様の橋渡しをしてくれるなんて…。なんて良い先生なんだ。もうほんと好き。


 先生のアドバイス通りに私はいつもの場所へ行き、ソフィア様を待つべく読書で時間を稼いだ。でも先生が貸してくれたあの本はなぜか今は読む気にはならなかった。


 刻一刻と時間が過ぎる。私が本の世界へ入り込み時間を忘れた頃「あっ…」と息をのむ音がして反射的に顔を上げた。


「ごきげんようソフィア様」

「…ごきげんよう、アイリス様…」


 ソフィア様の表情は硬く、なかなか目が合うことはない。まだ警戒されてるよね。こういう時は別の話題を…。ふと目に留まったのはソフィア様が片手に持つ本。そのタイトルは、


「…『吟遊詩人の休日』」


「…え?」


「私もその本、大好きなのよ。特にその吟遊詩人の個性的なキャラクターが…って、まだ読んでいなかったかしら?」


「…いいえ…。私もこの本が大好きで、何度も読みかえしています…。私は、主人公の伸び伸びした自由な生き方が好きで、」


「分かるわ!!読者を引き込む独特な世界観も素晴らしいと思わない?」


「…アイリス様も本、好きなんですか…?」


「ええ、もちろん好きだわ。例えば『モルカの探偵事件簿』とか、『サドラ島冒険物語』とか!」


「…私も…知ってます。面白い…ですよね…」


 おお!私の愛読書を知っているなんて。ますます仲良くなれそう。


「そうなの!ソフィア様はどんな物語がお好きなの?」


「本ならどんなジャンルでも好き、かもです…。でも今はミステリ小説ばかり読んでます。…謎が解ける爽快感がたまらなくて…」


 そんなこんなで好きな本トークを開始して小一時間。時間が経つのってあっという間だな。相変わらずソフィア様の表情は硬かったけど、好きな本のことを話すソフィア様は少しだけ饒舌になる。これは手ごたえありだな。


「…もうこんな時間だわ。図書館も閉まるし、帰らないと」


「…そうですね…。では、私はこれで…」


「あ、ちょっと待って!…また明日!」


 感情が乏しいそのお人形さんのような顔が初めて人間らしい表情になり、驚きに目が軽く見開かれる。だがソフィア様はそのまま何も言わずにに背を向けて去って行ってしまった。

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