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異世界転移系少女は友達が欲しい  作者: 夢河花奏
第二章、学園

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24/64

24、勧誘

 どの時代どの世界でも女子はイケメンに弱い、というのは共通のようだ。次の男子生徒が立ち上がった途端に嫌な雰囲気があっという間に消え、今度はそれが女子によって黄色い声に変わる。全く、現金な人たちだな…。


「カイル・フレディクト。よろしく」


 先ほどの彼女同様、とても短い自己紹介をする彼。銀髪の涼やかな髪に吸い込まれそうなほどに澄み切った深海を彷彿させるコバルトブルーの瞳。いわずもがなイケメンである。顔面偏差値がインフレしているこの世界の中でも絶対トップクラスに入るだろう顔立ちで硬派な印象を抱かせる。


 お父様やお母様と言った美しい造形の顔を持つ人が身近にいなかったら私もうっとりと見惚れているクラスメイトの女子たちのようになっていたのだろうか…?確かに綺麗だと思うが私にはただそれだけ。それ以上に思うことはないし以下に思うこともない。美形耐性つけといてよかったな。



 そんなこんなで次々と自己紹介が終わっていき、最後に自分の番となった。

 自己紹介って何を話すのが正解なんだろう。急に私みたいなみんなから恐れられてる人間が馴れ馴れし気にいろいろ語っても場がしらけるだけだし。


「アイリス・アルベルンと申します。これからよろしくお願いいたします」


 結局自分の名以外のことを口にすることなく簡単な自己紹介を済ませる。…愛想悪く見えてないといいんだけど。友達作りの道はまだまだ先が長そう。クラスメイトのこちらを観察するような視線を軽く流して席に着く。


 今日は初日なので授業もなく、自己紹介と学校の施設案内だけで一日が終わった。この後の放課後はサークル見学というものがあるらしいのだが、私には無縁の話。サークルに興味がない上に一緒に周るような子もいないし早くかーえろっと。





 寮に帰るとハンナさんが笑顔で出迎えてくれた。


「お帰りなさい、アイリス様。アイリス様宛にお手紙が届いていたから郵便受けの使い方を教えてあげようと思って待っていたんですよ」


「え、手紙ですか?」


「そうです。あんなに沢山のお手紙が送られてくるなんてアイリス様は人気者なんですね」


 人気者?そんなはずはない。だって私の知り合いなんてこの学園に一人もいないのに。どういうことなんだろう。

 首を傾げながらもハンナさんに私の部屋用の郵便受けの使い方を教えてもらう。郵便受けにはハンナさんの言う通り大量の手紙が届いていた。というより詰まっていたの方が正しいかもしれない。

 何だこりゃ。両手いっぱいに手紙を抱え、自室に戻ってからそれらを一つ一つ開けていく。


 それはなんとラブレター♡

 などというピンク色のものではなくサークルへのお誘いの手紙だった。なんだ、サークルへの勧誘を手紙でしないでよ…。勘違いするじゃない。どうせ新入生全員に配ってるんだろうし、ちょっとしたチラシでいいのに。

 そう思いながらも全ての手紙に目を通していく。えっと、なになに?魔法研究サークルに、陸上競技サークル、魔法剣技サークル、馬術サークル…。なんでまたこんな物騒なサークルの勧誘ばっかり。


 だが少し頭をひねれば運動系サークルの勧誘が多いことに思い当たる節はある。多分入学式後の実技試験のせい。あの試験の時は観客席に上級生がいっぱい見に来てたし。私、だいぶ目立ってたっぽいもんなあ。認めたくはないけど…。


 その手紙の山の中にひと際豪華な封筒が目に留まった。一目見ただけで上質なものと分かる封筒には赤い(ろう)が垂らされた封じ目に複雑な形の紋章が押されしっかりと閉じられている。やたら仰々しい手紙に驚きつつ、ペリッと乾いた音を立てさせながら蝋を丁寧に剥がして中身を取り出しそれに目を落とす。


「アイリス・アルベルン様へ。


 この度は突然のお手紙、不躾を承知の上で送らせていただきます。先日の実技試験、とても素晴らしかったです。勝手ながら観客席で新入生を見ていたのですが、貴女の魔法の手さばきは鮮やかでこちらが感嘆するほどでした。


 なんでもアイリス様は魔法の才だけでなく筆記試験でも大変良い成績を修め、学年一位を取られたのだとか。そんな貴女にお願いがあってペンを手に取った所在でございます。もしよろしければ私たちとともにこの学園を良くしていくお手伝いをしていただけないでしょうか。


 申し遅れましたが、私はこの学園の生徒会長を務めさせていただいておりますオーウェン・センシアと申します。生徒会では貴女のような優秀な人材が必要不可欠なのです。貴女に入っていただけたら喜ばしいことこの上ないです。ぜひ一度ご検討宜しくお願い致します。


 少しでも興味が湧きましたらいつでも生徒会室をお訪ねください。生徒会一同、首を長くして貴女の訪れを待っております。


 生徒会長 オーウェン・センシア」


 読み終わると自分の顔が青ざめるのを肌で感じた。


 …これって、生徒会へのお誘いの手紙ってことでオケ?しかも生徒会長様直々に私をご指名だと。いやあまさかね。そんなそんな。


 信じたくなくて達筆な字で書かれた手紙を何度も見返すもその宛先の名前は間違いなく私の名だ。いやいや、でも同性同名さんにあてたものかもしれないし…。


 それに信じたくないことはもう一つある。察しがいい人ならこの差出人の名前だけでピンと来た人もいるだろう。このセンシアという家名。つい最近聞いたよね?ハハハ…。よし、一回病院に行って来よう。幻覚が見える病気なんて治療してもらうしか他に方法はない。


 現実から目を背けた私だったが、この手紙のある一部分が引っかかって再びじっくりと読みかえす。学年一位がどうたらって何のことだ?そもそも順位なんて出てたっけ。私が自分の順位知らないから何とも言えないけど、というかこの生徒会長様はなんで一年の成績順位を知っていらっしゃるのか…?


 まあ考えるだけ無駄だ。きっと学年一位の誰かと私の名前をうっかり間違えてしまったんだろう。(もちろん生徒会長様がそんな単純なミスをするなんて一ミリも思わないけど)そう思いたい…。


 静かに手紙を折り畳んで机の奥底にしまい込む。うん、私は何も見てない知らないワカラナイ。



 ***





 入学してから一週間が経ちました。私はというと…ええもちろん優雅な一人時間を過ごさせていただいておりますとも。一応声をかけようと努力はしてるんだよ。でもみんな私が近づくたびにそそくさと去って行くんだもの。そんなんでどうやって友達とかできるんですか。え?


 その中でも例外はいる。それは隣の席のルーク様とそのお友達のディラン様。基本ルーク様の方から話しかけてきてディラン様はその付き添いみたいな感じで一言二言喋るくらい。しかし私的にあまりルーク様とは関わりを持ちたくない。だって王子だよ?


 少し会話してるだけなのに女子生徒からの視線が痛いのなんのって。だから不用意に仲良くなるよりも素っ気なくするくらいがちょうどいい距離感だと思うんだ私は。

 ルーク様は明るく人柄も良いから女子だけでなく男子生徒からも好かれてるっぽい。


 なんだそれ羨ましいぞコラ。





 話は変わるが一人学園ライフをエンジョイしている私の今の一番の憩いの場は図書館である。この図書館、教室棟から少し離れた場所にあるから人がいつも少なくて安心するのよね。もうなんなら入学してからずっとこの図書館に通い詰めで司書の先生とお知り合いになっちゃったよ。いいもんね、司書の先生可愛いし。


 そんなある日。担任のワイアット先生が爆弾発言をした。それは私にとって死刑宣告に近いもの。


「皆さんが入学してから一週間が経ちました。学園生活にも慣れたことと思います。そこで今日は来週に控える新入生の最初の課外授業についての説明をします」


 全然慣れてないよ。主に交友関係でね…。


「我がグレードウォール学園では一年生のこの時期に課外授業を毎年行っています。課外授業と言ってもあなたたちはまだ入学したばかり。それほど難しいものではありません。内容はペアでの薬草採集です。クラスメイトとの親睦を深めるためにも、ペアで協力して取り組んで下さい」


 マジですか…。ペア、ペアって…。これはあれだ。仲良しな子同士で組んで私みたいな可哀そうな子が余って先生とペアになるとかそういうイベントですか。酷いよ先生。


「ペアはあらかじめ私の方で決めてあるので心配しないでください。女子は女子同士、男子は男子同士で組んでおきました」


 さっすが先生!仕事が早いね!ぼっちに優しい対応をありがとう。


「ペアの組み合わせを記した紙は教室の掲示板に貼っておいたので確認しておくように。以上で連絡は終わりです。帰ってよろしい」


 それを合図に皆が掲示板前に集まってガヤガヤと話に花を咲かせる。


 やった!一緒のペアじゃん。頑張ろうね。おい、お前とかよー。うっせ、お前こそ足を引っ張るなよ! etc…。


 …いいなあ。私もそういう青春っぽい会話を楽しめる人種になりたかったよ。




誤字修正しました。

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