第七話 前途たなん
やっぱりどうしても髪を切りたいフォルトが起こした行動は?
ある日、例によってフォルトが言い出しました。
「だーっ、もう鬱陶しい! 髪を切りたいっ」
定期的に言い出すので、ルフィニアは「またなの?」と呆れ顔です。
「落ち着きなさいよ。それに、嫌ならリボンにすればいいでしょ? シリア先輩みたいに」
シリアとは二人の先輩で、茶色い髪をリボンで結っている女装美人です。
「あれはトクベツ!」
たしかにシリアは普通とはちょっと違うので、たとえに挙げられても困るかもしれません。
フォルトは煮え切り、とうとうこんなことを言い出しました。
「俺は労働組合の発足を宣言する!」
「具体的には何をやるの?」
「……ストライキ?」
しーんという沈黙が痛いです。
そんなやりとりがあった少し後。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
イリスが兄のルーシュを呼んで言いました。
「フォルトがね、『お願いを聞いてくれないと働かない』って、とじこもっちゃったの。クローゼットに」
フォルトは労働組合を作ることは出来なかったので、一人でストライキをすることに決めたようです。
ルーシュは「ほっほー?」と言いながら、フォルトに関する書類を取り出しました。
「さぁて、どこに飛ばそうか?」
「あうぅ、マジかよー」
というわけで、フォルトはルーシュによって別の部署に飛ばされてしまいました。
「しかも飼育係って」
紙切れを手にやってきたのは、コウモリの飼育小屋です。
そこには、ほうきを手に忙しく掃除に勤しむ一人のおばあさんがいました。
「あら、あなたが新しい方?」
「えーと、一応……」
(上司はこのおばあちゃん……!?)
よろしくね、というそのおばあさんはちょっとヨロヨロしていますが、フォルトに仕事道具をくれました。
エプロンにちりとり、バケツや雑巾です。
これからここで過ごすのかと思うと、フォルトは落ち込みましたが、悪いことばかりではありませんでした。
「あぁそうそう、その髪、邪魔になるから切った方がいいわねぇ」
「えっ」
内心、舞い上がりました。そしてその直後、
「けど、血はたくさんありそうねぇ。みんなよろこぶわぁ」
と言われてしまい、みんなって……!? とフォルトは震えるのでした。
第八話に続きます。




