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プロローグ
このシリーズの本編です。それでは始まり始まり。
むかしむかし、一人の吸血鬼がいました。
本能に従って人の生き血を吸い、若い時の姿のまま長い長い時を生きてきた吸血鬼でした。
その吸血鬼は放浪の末、一人の人間と出会いました。
人間は言いました。
「自分がずっと傍にいるから、ここに留まってほしい」
血のように紅い瞳の吸血鬼は、人間の言葉に頷き、共に暮らすことにしました。
やがて、人間は伴侶を得て子を生み、「家族」が増えていきました。
悲しきは、人間の儚さでした。
吸血鬼は人間の手を握って涙を流します。
その姿は、約束を交わした時とほとんど変わっていませんでした。
そんな吸血鬼の傍らには、立派に成長した人間の子どもたちが寄り添いました。
親に良く似た子の一人が言いました。
「交わした約束は、自分たちが守っていきます」
吸血鬼は頷くと、友と「家族」を連れて地上を捨て、空へと住処を求めました。
未来永劫、約束が破られることのないように――。
第一部より長くなる予定です。よろしくお願いします。