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大幅に投稿が遅れてしまい申し訳ありません。


こんな遅筆な筆者を見捨てずにいつも読んでくださる読者の方々、

いつもありがとうございます。


長った二章も佳境が近づいてきました。

夏バテなどに負けぬよう書き続けますので、引き続きお付き合いいただければ幸いです。

 各陣営を代表するチームを盛り立てる趣向を凝らした登場プログラムが終了する。

 余程の無能でもない限り、優勝するのはアカギ率いる《ウェット・ファイターズ》かラファエル率いる《グレイブバルチャー》である事はほぼ確定事項であるため、後に続いた二チームの登場にはさしたる注目は集まらず、各陣営もその登場などには大掛かりな演出を挟もうとはせずつつがなくエキシビジョンマッチは進行した。

 そして、イベント後半。

 結果のみを語れば、エキシビジョンマッチのメインイベント、四チームが競い合う勝負は純粋な競技時間だけで言えば十秒未満で終了した。

 決勝へまで響くような深刻なダメージを残さぬよう、イベントでは直接矛を交えないエリア内を動き回るターゲットドローンを全て破壊するまでにかかった時間を競う《タイムアタック》が採用されていた。

 会場内に用意された一辺約100mの正方形ステージは場所ごとに高低差があり遮蔽物も乱立している立体フィールド。ターゲットドローンの数はちょうど百機用意されており、それぞれが別々のアルゴリズムで独自の動きをする。

 ひたすら動き逃げ回る個体、物陰に隠れ潜み動かない個体、内蔵火器で積極的に攻撃を仕掛けてくる個体。

 全く別の動きをするターゲットドローンを全てを捕捉・破壊するとなると非常に骨が折れる工程であり、全機が破壊されるまでに制限時間に達してしまうチームも少なくない。

 難易度の高いこの《タイムアタック》に於いて、関わった試合の全てで未曽有の事態を引き起こしてきたW.F.が参加したためか、ここでも新記録が大会レコードに刻まれた。

 登場した順番に倣い、競技の一番手はG.V.のラファエルが担った。

 記録、約二秒。

 一撃。そそり立つ巨大な『砲』による一撃が、ステージごとターゲット全機を大出力の光線で薙ぎ払い修復どころか残骸を見つける事すら困難なまでに破壊した。

 圧倒的な記録に会場が沸き立つ中、大慌てでステージの入れ替えを行い新たなターゲットドローンを百機用意する運営委員会は、次の番手でまたしても顔を青くする。

 二番手、W.F.のアカギ。

 記録、約三秒。

 一閃。アカギの持つ大剣の刀身に収束された巨大な雷刃が、直近の光景を焼きまわすかのようにステージ上を薙ぎ払い一掃し、全てのドローンを破壊。ステージ自体にも断層のような赤熱する斬撃痕を刻んだ。

 設備も機材も、何もないところから突然出てくるものでは無い。前提としてそこには目に見える予算や人員や時間が投じられた結果、用意されるのだ。

 これ以上の被害を出さないため、他二チームへの観客からの注目度に低さに加え既にG.V.とW.F.のチャレンジで盛り上がったところにお茶を濁す必要もないだろうとの運営委員会の判断により、公式的には設備の不調を理由に《タイムアタック》は極々短時間で終了した。

 残りの時間は、運営委員会が配信している試合動画で視聴回数や評価の高かった映像のハイライトの上映とその解説。

 映像内で協賛企業がスポンサーになっている見目好く華のある人気タレントが素人として聞き手に回り、闘技場に所属している現役Sランク闘士が語り手として試合内容を解説していく内容は、知識の無い初心者でも分かり易く尚且つ本番への期待を煽る。

「エキシビジョンマッチはここまでだ!だけど忘れんなよ、これはあくまでも前菜、前座、前哨戦!本番は、9月30日の決勝のファイナルマッチ!お楽しみは、まだまだ先だ!それじゃあ―――――See you again!」

 最後は、ロビンソン・ヤマモトの締めの言葉と共にエキシビジョンマッチは終了した。

 観客達は決勝本番への期待を胸に宿しながら散っていき、各陣営も決勝へ備えるためにそれぞれの拠点へと帰還していく。

 人口密度を著しく低下させていく会場の通路を、一名を除いてW.F.の面々は覚束ない足取りで歩いていた。

「全員、付いてこれているか?」

 先頭を歩くアカギが、後ろのメンバーへと声を掛ける。イベントを終えても高揚や疲労は見えず、いつも通り平常運転の『戦士』と比べて他四人は幽鬼の如くであった。

 声を出す気力もないのか、あー、うー、などの意味を成さない呻きが返されるのみ。

 誰も彼もが疲労困憊の極致であり、ふらふらと揺れながら歩く満身創痍。身体の至る所にホウセン・ミツル謹製の傷薬が塗布され、これまた謹製の包帯で傷をこれ以上大きくしないよう固定されていた。

 病院から脱走してきた重傷患者だと言われても、疑う者はいないだろう。

 死者の行軍の様相を呈している若者達に、アカギは後頭部をかきながら頭を下げた。

「すまない、加減を間違えた俺の責任だ」

 エマ達がここまで消耗しているのは、エキシビジョンマッチが原因ではない。昨日、漂着惑星での特訓でアカギが他四人を徹底的に叩きのめしたからだ。

 《ヴィンセントヴァルキリーズ》の団長代行ミツルとアカギで知恵を出し合い計画したエマを含めた四人を鍛え上げる『モード:すぺしゃる』は、午前と午後の二部構成となっている。

 午前はミツルを筆頭としたV.V.の団員の中でも育成能力に秀でた者を教師役とした連携行動に於ける座学・講習や基礎能力向上を目的とした基本メニュー。

 午後からは、アカギを相手にした様々な状況下で行う実戦訓練。

 『モード:すぺしゃる』は、全体を通してひとつの目標が設定されている。

 それは、四人の内の誰かがアカギに有効打を一撃叩き込む事。

 手段は問わない。卑怯常套、謀略推奨。如何にして実力差が天と地程もある相手に対し食らい付き、打ち崩すのか。

 過酷な状況に叩き落し、圏外最強と謳われるG.V.を相手にしても、決して折れぬ闘志を、知恵を絞り戦い続ける事の出来る冷静さを鍛え、そして何より協力し合わなければ超える事の出来ない共通の敵を目標に設定する事で否が応でも生まれも育ちもバラバラな四人の意識を統一させる事が一番の目的。

 そして、イベント開始数時間前、アカギはついつい若者達の己を支える自負や自信と言った精神的支柱、技量や身体能力と言った肉体的支柱の悉くを粉微塵に粉砕してしまった。

 アカギは、頑張っている若者――不老の《使徒》基準であるため、百歳以下ならば全員が該当する――に好感を抱きやすい。

 自身が失って久しい熱い感情の鮮烈さを目の当たりにすれば頬を緩め、眩いと目を細める。笑ってしまうのだ、どうしようもなく。

 結果、エマ達は尊さに微笑を浮かべるアカギに蹂躙された。

 困難な状況を打破しようと向かってくる若者達の姿は、アカギの眼には珠玉の如く眩く映り、抑えきれない喜色の感情から『よし、彼等の成長の糧に成るよう自分も頑張らないとな!』と要らぬ老婆心が発揮され奮起。

 手加減一切無しの本気も本気。

 紛れもない純粋な善意による圧倒的暴力。

 アカギが正気を取り戻した時、四人は九割九分死に体。四肢に力なく瞳からも光が失われた無残な姿で転がされていた。

 尚この時、ケビンとハクアは今は亡き武術の師を幻視し、猿は魂だけの状態で故郷を垣間見、エマは会ったこともないフラメル王家の先祖に激励されたと言う。

 臨死体験真っ最中の四人を上級クラスのポーションの治癒力で強引に現世に引き戻し、ボロボロの体を包帯で継ぎ接ぎしてアカギ達はエキシビションマッチに挑んだ。

 表面上こそ派手で余裕のあるパフォーマンスを発揮していたが、それは衣装や演出で取り繕ったに過ぎず、その内実は限界寸前であった。

 イベント終了後、押さえ込んでいた疲労や痛みが一気に噴出し今のような惨状へと陥っていた。

「……本当に、すまなかった。大会優勝を逃すどころか、危うくこの手で君達を殺しかけた。一番年長者の俺が自制心を忘れるとは情けない限りだ。二度と同じ事が起きないよう、目標設定は変更しよう」

 再び深々と頭を下げ謝罪するアカギに、ケビンは鼻を鳴らした。

「けっ、今更謝んなよ」

 太々(ふてぶて)しく言い放ち少年は続ける。

「こうなったのはアンタがやらかしたからじゃねえ、そもそも俺達が未熟で弱かったからだ」

 包帯で固定された己の腕を見つめる目には、悔しさや不甲斐なさが滲んでいた。だが、苦い感情を噛み締めながらも、その瞳は前を向くことを止めない。

「相手は圏外最強のG.V.が率いる五帝陣営。戦う前からメンバーの質と量の両面で負けてる俺達がブチかますには、それこそ死にかける特訓でも越えなきゃ、話にならねえんだよ」

 意気軒昂に立ち上がるケビンに負けじと白髪の少女が続き、氷眼で真っすぐアカギを見据え気勢を吐く。

「無茶を通すつもりなら、それ以上の荒行はもとより覚悟の上」

 凛とした表情から一転しハクアは、にぃと笑う。

「ま、ボクにとっては武の極致を肌身で味わえるなんて、寧ろご褒美!アカギさんとの特訓なら夜通しマンツーマンでも全然OKだよ!」

 やや後方で前二人に続くのは、(マシラ)の名を冠する神職者だ。

「なに、心身の自由を奪われ酷使され続けた《キリングフィールド》にいた頃に比べれば、どうということもない。今の私には、君達に恩を返すという揺るぎない意志がある」

 最後に、イベントでは代表者として演説やするべきことが多く消耗も激しかったエマが立ち上がる。

「手心は不要です。どうぞ、アカギさんの全力をぶつけてください。貴方の力に応えられないようでは、私達は決勝の舞台に肩を並べて立つ資格すらありません。私達は、アカギさんの添え物ではなく、仲間として在りたいんです」

 決して癒えぬ心的外傷(トラウマ)さえ負いかねない蹂躙を経て尚、誰も心を完全には折っていない。その経験さえも糧にして、より前へと進もうとしている。

「まったく、君達はいつもそうだ。容易く俺の想像を超えてくる」

 今を生きている者だけが持つ強さに感嘆の意を漏らし、アカギは頷いた。

「ああ、分かった。こうなった俺も手は抜かない。本気で、君達を倒すべき敵だと認識して戦おう。言っておくが、後で後悔してもしらないからな?」

「はっ、させてみろよ。今度は、こっちがアンタをボコボコにしてやるからな」

「それは頼もしい限りだ」

 四人の闘志が潰えていない事を喜びながら、アカギは直近の問題へと意識を向けた。首元のチョーカー型端末を操作すれば、投影されたのはメイドであった。

「ミツル、状況はどうだ?」

『依然、好転せず。寧ろ悪化しています』

 V.V.団長代行のホウセン・ミツル側の端末から送られてきた情報は、今アカギ達がいるスタジアムの周囲の映像だ。

 溢れかえらんばかりの人波、群衆。

 スタジアム周辺は、決勝進出を決めたファイナリスト達を直接見ようと押しかけた野次馬でひしめき合っていた。

 G.V.を含めた三チームは事前にこうなる事が予想出来ていたのか、運営委員会スタッフを動員して早々に退散している。

 出遅れたのはエマ達が多少歩ける程度まで回復する時間を要したW.F.のみ。野次馬達は、残された最後のチームを逃さないとばかりにスタジアムを包囲してしまっていた。

 ほぼコンウェイの手勢にも等しい運営委員会スタッフが、W.F.を手助けしてくれるはずもなく、アカギ達はスタジアム内で立ち往生していた。

「さて、どうしたものか……」

 アカギが思案していると、その背中を大きな声が叩いた。

「はっははははは!どうやらお困りのようだね、諸君!」

 通路に突然響いたその明瞭かつ陽気な大声に、W.F.の面々は振り向いた。

「お前は……」




 黎明歴425年9月27(・・)日。

 無人惑星N25591。

 不毛の荒野と無骨な岩肌を覗かせる渓谷が広がる過酷なる大地。

 乾燥した空気と直射日光は動植物から貴重な水分を奪う。この惑星に生息する在来種の多くは体の表面積を小さくするため小型化し、日差しの厳しい日中は地中に潜む夜行性の傾向が強い。

 嘗て、この無人惑星N25591にも人類の入植計画があった。

 大気成分や重力負荷、その他様々な要素が人類が生存するための必要最低条件を満たしているため、幾つかの企業や国家が大規模な予算を組んで開拓事業に乗り出したのだ。

 未開拓の惑星への入植事業は、リスクは大きいがリターンも大きい。

 生物が生きるのに適さない宇宙空間に作られた不安定なコロニーと違い、紫外線を遮る大気を持ち揺るがぬ大地の広がる惑星は人類の生物圏として非常に有用かつ稀少。

 幸運に恵まれれば、貴重なレアメタル鉱脈や固有の生物から新たなる新発見に遭遇することもあるだろう。

 だが大抵の場合、開拓事業は失敗する。

 今現在、黎明期に於いて人類が宇宙船で到達できる範囲にはる惑星は、大抵が『ハズレ』なのだ。

 創世期、閉塞期、航海期、黄金期、暗黒期、黎明期と六つある変遷の内、誰もが我先にと宇宙へ漕ぎ出した航海期にて既に人類は到達可能範囲内での入植を終了している。

 文明の利器が《大厄災》で使用不能になり長期の原始的な生活を経たことで、黎明期の時点で既に多くの技術が喪われて久しく、航海期と比較して大幅に劣っている。高性能な宇宙船を建造出来るか否かは、そのまま到達可能範囲に直結し黎明期で人類が探索可能な範囲は過去よりも狭くなっている。

 つまり、現代で見つける事が出来、尚且つ生存条件の整った惑星は、過去何らかの理由で居住が断念された人類にとっての『ハズレ』の惑星なのだ。

 無人惑星N25591、その星はあまりにも痩せ細り乾いていた。

 海は干上がっており、地表の90%以上は砂漠か荒野。根気よく長期的なテラフォーミングを行おうとも、土壌で作物が育たず食料の安定供給を可能にするプラントを設置することが出来ない。

 鉱物資源も無いに等しく、産業を興す事も出来ない。

 場所も圏外圏の辺境に存在するため、純粋な『場所』としての利用価値も低く、経済圏からあまりにも遠すぎるため人の少ない暗所を好む密輸業者などの犯罪者達ですらここには寄り付かない。

 凡そ、人類にとって好まれる要素を持たない無人惑星であるが、数十年前に所有していた開拓事業を失敗した国家からとある組織によって二束三文の捨て値で買い上げられた。

 この無人惑星を買い取った組織こそ、ギルド・アライアンスであり、現在その管理は無差別争覇杯運営委員会に一任されている。

 貴重な鉱脈も有益な資源もなく、位置も悪い。

 一見して今の人類にとって有用性の低い惑星かに思えるが、需要や価値と言うものは意外なところに存在する。

 無人惑星には何もない。保護すべき自然環境も資源も。それは逆説的に、この惑星上であれば誰彼憚ることなく大規模な戦闘行為を行っても問題が無いと言う事でもある。

 今、無人惑星には多くの輸送船が詰めかけていた。

 嘗て入植時に作られ破棄された廃都の宇宙船の離着陸場には食料・建材などの資材を、建築機械を満載した船が往来し、またそれらを扱う業者の数も数百を優に超える。

「急げ!納期はもう目の前だ、作業班の(ケツ)を蹴り上げろ!」

「資材が足りていないぞ、経理部の石頭をぶん殴って予算を吐かせて来い!」

 朽ちた尖塔が墓標の様に立ち並ぶ廃都は、今や多腕多脚の半自律型機械や様々な工作用オプションパーツを追加された多機能防護服を装備した者達の手によって大改造を施されていた。

 再利用できる施設は補強・補修され、根本的に使用不能に陥っているものは破壊・撤去し新たな施設を建築していく。

 行き交う者達の防護服や機械に刻印された所属を表す企業や組織のロゴやエンブレムは数種類あるが、その系列や系譜を遡っていけば元は全てが五帝ザイ・コンウェイ率いる若手組の誰かが率いる企業や組織に行き当たる。

「今までも散々無茶な仕事を受注してきたが、ここまでの特急突貫工事は初めてだな」

 現場での指揮・進行を担当している最高責任者は、AR表示で空中に投影された各班毎の進捗状況を可視化したグラフをチェックしながらぼやく。

 無差別争覇杯の決勝戦で採用されたルール、それは大会の命名由来にもなった『無差別戦』。初めて大会が開催された頃からその名が公式発表のルール一覧に列挙されていたにも関わらず、戦艦だろうが大量破壊兵器だろうが使用可能というあまりにも馬鹿げたレギュレーションであるため、過去に一度しか採用されたことのない特別ルール。

 純粋なまでの、財力、権力、そして兵力をぶつけ合う戦争。

 無人惑星を主戦場とする今回の『無差別戦』では、各チームが試合を開始する位置がある程度決まっている。これは、大会予選の様に互いの射程距離圏内に全員が集まっていると所謂『開幕ぶっぱ』からの大乱戦が発生してしまい折角の一大イベントが早々に終了してしまう可能性を防ぐための措置だ。

 球形である無人惑星は、A~Dの四つのエリアに縦に四分割されている。

 コロニー・ナタに決勝戦のライブ映像を送る送信施設が設置されている地点を基準点とし設定。

 0度から東経90度までをエリアA。

 東経90度から東経180度までをエリアB。

 西経180度から西経90度までをエリアC。

 西経90度から0度までをエリアD。

 ルール上、各チームは試合開始の時点では必ず自身のチームが割り当てられたエリア中央部上にいなければならず、開幕直後はチーム間である程度の距離が離されている。

 そして、自陣エリア内であれば決勝前日までなら陣地の構築も認められる。

 ここでも、陣営ごとの資金力の差が如実に表れる。

「確か相手はどっかの国の姫さん様御一行だったか……コンウェイの旦那を本気にさせるなんて御愁傷様としか言いようがねえな」

 現場の最高責任者は呆れと憐れみが混じった言葉を吐いた。

 朽ちかけの廃都は、今や最新技術と最先端の兵器群を金に糸目を付けずに投入された大規模改修により要塞化、鋼鉄の堅城へと変貌を遂げている。

 『無差別戦』は試合に参戦する全チームには全てのルールを行使する権利が与えられているが、実際にルールを活かせるかどうかは資金力がモノを言う。

 貧乏暇なしを地でいくフラメル王国には、決勝戦の為だけに要塞を建造するなどどうあがいても出来ない芸当だ。

「しかも、特殊技研の第八格納庫まで開けられるとはな……」

 W.F.を迎え撃つ本命は要塞などではない。

 責任者が投影させている映像に表示されている別エリアの光景には、巨大な二つの影が映りこんでいる。

 分解した状態で無人惑星まで運搬されてきたソレは、群れを成した半自律型機械によって再度組み立てられ、専門のスタッフにより調整を受ける事で、元の巨大なる威容を取り戻そうとしていた。

 前時代の『遺物』にして、現代の技術では完全なる再現が不可能な代物。

 現行兵器の殆どが、この『遺物』に使用された技術を劣化複製することで開発されている。

 全て原型にして頂点。

 即ち、W.F.に立ち塞がる敵とは、人類が最も繁栄を謳歌していた時代の痕跡、《黄金期の遺産(ゴールドレガシー)》である。

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