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PV15000&ユニーク4500突破!


読んでいただけた方々、誠にありがとうございます。


皆さんのPV数やブックマーク数、評価などは、私の励みになります!

 運営委員会主催の無料公開のエキシビジョンマッチには、延期となった決勝戦の損失を補填する役割も勿論あるが、それよりも寧ろ広報や宣伝と言った意味合い多く含まれている。

 約半年前までは連盟傘下の無数にある小国の一つでしかなく、圏外での実績は0に等しい知名度皆無、今後の事を視野に入れ名を売り実力を広く喧伝したいフラメル王国陣営。

 小国がなんとか開発に漕ぎつけた新機軸宇宙船《ノイマン》を手に入れるのは五帝と言う立場による職権乱用、強権発動での弱者からの略奪ではないと知らしめたいコンウェイ陣営。

 両陣営の政治的思惑、利害の一致により、エキシビジョンマッチのシナリオは『賭博勝負が行われるに至った理由』、『勝負自体の正当性』、『両陣営の実力の高さ』、などがクローズアップされた構成となっており、ショー仕立てで公表されていく。

 ロビンソン・ヤマモトのエマへの突撃インタビューから始まる一連の流れもまた仕込みであり、両者の方針や力量を示すための演出。

 会場の中央の巨大な鋼鬼とその両肩両肘に乗った《グレイブバルチャー》の登場で観衆の視線、撮影用ドローンのカメラが自身から外れたことを確認したコンウェイは、息を軽く吐く。

「立ち上がりは良し……」

 大舞台であればあるほど、可能な個所では適度に緊張の糸は緩めておいた方がより高いパフォーマンスを発揮出来る事を五帝若手筆頭は経験則から知り得ている。

 《グレイブバルチャー》のリーダー、ラファエル・レーヴィトとザイ・コンウェイは同郷の出身である。互いに棒にも端にも掛からない青二才の時分からの旧知であり、お互い利用し合いながら今日までの付き合いを続けてきた。

 コンウェイがARモニターを見ると、そこに大きく描画されているのはラファエルの鉄面皮だ。

 年齢は脂の乗った壮年期。人生の半分以上の時間を戦場に身を置くことで磨かれた屈強かつ柔軟性を持つ体躯は綿密な設計の元に生み出された戦闘兵器の様に機能美に溢れ、まるで隙が無い。

 顔立に派手さは無いが不屈の意思を秘めた青の瞳は強壮、笑うなどの柔らかな感情(イロ)を表現すれば初対面の人間にも好感を与えやすい偉丈夫の相貌ながら、一枚の鉄板を金鎚で叩いて成型した鉄仮面の如く変化がない。

 加えて一切の無駄な装飾を排した無機質かつ実用的なネイビーブルーの可変式外套(ヴァリアブルコート)を纏い、立ち居振る舞いにまで冗長性が無いため、まだ売店などによく設置されている顧客対応用の自動販売ロボットでも配置しておいた方がいい仕事をしたに違いない。

 歓声や禿鷹の名を冠する傭兵団の功績を称える声に一切応える事をせず、他のメンバーが手を振る、手持ちの武器を構えポーズを付けるなどしている中でも黙して語らず腕組みのまま反応らしい反応を返さないラファエルにコンウェイは目頭を押さえた。

 『偶像が必要なら顔のいい役者でも雇え』と、イベント前のショーの演出を打診したコンウェイにラファエルに堂々と宣言した。仮にも雇い主に吐き出す言葉ではないが、両者の契約はあくまでも立場が対等であるという前提条件の元に成り立っている。

 仮に、コンウェイが立場を利用して見世物になる事を強制すればラファエルは躊躇なく大会を降りて本業に戻るだろう。

 G.V.のリーダーラファエルは、肉体は無論のことその精神性も鋼の如き男だ。

 その日その日の(かて)や即物的な快楽さえ得られれば周囲や明日のことなど考えもしない傭兵の中に在って、確固たる倫理観と政治的観点を持っており必要以上の殺戮や破壊活動を伴う依頼は、どれだけ大金を積み上げられても決して受諾しない。

 本人の判断基準でそれが必要な行為であると認識されれば如何なる汚れ仕事も厭わないが、逆にそうでない場合ラファエルの意思を曲げさせるのは非常に骨の折れる行為だ。

 あの手この手で説得を行い、最終的に貧乏だった若造時代の細々とした貸し借りを持ち出して執拗に責め立てることでコンウェイは何とか一切のパフォーマンスを行わないことを条件に公式の場に頑固な傭兵を引っ張り出す事に成功する。

 G.V.の掛け値なしの最大戦力であり旗印(シンボル)でもあるラファエルが、大会を利用した代理戦争でのコンウェイ陣営代表であることを観衆に強く印象付けるには、エキシビジョンマッチへの参加は必要不可欠なのだ。

 一仕事を無事に終えたコンウェイは、横目でちらりと六席の左端に立つエマに視線を向ける。

(さて、王国側がどう言った手で魅せてくるのか……お手並み拝見ですね)

 場合によっては保有戦力を敵陣営に公開することにもなるため、イベント全体の大まかな流れは把握していても、登場演出などの細部に於いては両陣営は打合せなどの情報共有を行っていない。

 エマはたった今展開されたG.V.の登場や魅せ方を知り得ておらず、コンウェイもこれから《ウェット・ファイターズ》がどうアプローチしていくのかを知らない。

 事前に決められたシナリオに於ける悪役を自ら買って出たのは王国陣営自身だ。

 エキシビジョンでのスピーチでの時間は限られている。

 公約などの未来への展望を語ったところ実績のないエマの口から出るのでは、観衆にとっては虚言妄言の類に過ぎない。多くの見ず知らず人間の記憶に自身をごく短時間で強烈に刻みたいのならば、挑発・暴言などで誘発しやすい悪感情を煽るのは悪い手ではない。

 上に立つ者にとって、大衆の無関心こそが一番の敵なのだ。

 ただ、人々を煽るだけ煽って終わりではただの悪役の枠を出ない。圏外を牛耳ろうとしているフラメル王国の今後を考えるのならば、後一手、大言壮語だけでない何かを示さなければならない。

 会場にはまだW.F.は登場していない。エマ・フラメルが仕掛けるとすれば、そこ。

 派手な演出で大々的に陣営の代表チームを見せつけ、一気に観衆の心を掴み、自己主張を行う。この方法ならば、勢いに呑まれた観衆に対し強いアピールが出来る。

 機先を制する先手として、コンウェイはG.V.に無理を言って切り札である『鬼』を登場と同時に出現させた。

 人間の自己認識は視覚と聴覚から得られた情報が大きなウェイトを占めている。

 会場の何処からでも目に付く黒光りする鋼の巨体、意表を突く空中からの出現に加えて落下時のリング破砕音。

 単純ではあるが、だからこそ鼓膜を震わせる音と見上げる程の巨体の相乗効果は観衆を惹きつけ強烈なインパクトを残す。G.V.登場前のスピーチと合わさって、会場の声はコンウェイ陣営一色に染まりつつある。

(さあ、この状況をどう返しますか?)

 逆境をひっくり返された会議での前例があるため、最早コンウェイはエマを只の小国の王女などとは思っていない。

 絶対に何かを仕掛けてくる。

 劣勢の盤面さえも利用して、誰も思いもよらぬ一手を打ってくる。

 その一手を(つぶさ)に観察・分析することでコンウェイは本番である決勝への布石としようとしていた。

 脳髄を高速で稼働させ神経を集中させる若手筆頭がまず最初に感じ取ったのは、空気の変化であった。

 抽象的な意味でない。現実に起こっている現象として会場を行き交う空気の流れが湿り気を帯び始めていた。握った手に平がほんの僅かに空気中の水分で濡れ、衣服の密着度と重みが増す。

 天井が空いた吹き抜け構造、空の一部を切り取った天蓋からは暗雲が顔を覗かせ始めていた。

 妙だ、とコンウェイは零す。

 コロニー内の天候を含めた全ての環境はナタ運行管理局ビルで完全に管理されている。

 気温、湿度、紫外線量、酸素濃度、全ての環境ステータスは人間が生きる上で最適とされる値に設定されており、天候もまた何時からが『晴れ』で何時からが『曇り』かは事前に分単位で決まっている。

 コロニー・ナタにいる者ならば、誰であっても中央管理システムにアクセスすることで簡単に向こう一年先の天気まで容易に知ることが出来る。

 大規模な興行イベントの真っ最中であることもあり、ここ数日の天候設定は『晴れ』の一択。

(そう何か……例えば、気象を利用したイベントでもなければ………っ!)

 コンウェイの脳髄が予想を弾き出した瞬間、それは来た。

 眼を灼く閃光、そして身体を芯から震わせる轟音。

 暗雲より空を裂いて降臨したその光は、文明の快適さ慣れ切り享楽に溺れる観客達の遺伝子の奥底に眠る極めて原始的な畏怖を引きずり出した。

 危険性の高さから、敢えて気象管理システムでは再現されない天候がある。

 高高度の雲の内部では、空気中の水分が冷却され(あられ)と成り、更に上昇気流に煽られ高速でぶつかり合う事で電荷が蓄積されていく。上空と地上の電位差により、空気の限界絶縁値を超えた時に発生する、大気を持つ惑星であれば起こり得る自然現象。

 即ち、(かみなり)である。

 人類が宇宙に進出してから正確な期間が不明の暗黒期を含めて約数千年以上が経過していると言われている。されど、人類の誕生からの時間という尺度で見れば、数千年の時間とて全体の一%を超えるかどうか。

 群れを成し獣同然に地を這い、仰ぎ見た天に超常の存在を見出し信仰していた時間の方が、圧倒的に長いのだ。

 徹底的に管理されたの無菌室のようなコロニーでの暮らしが長ければ長い程、尚更に己の内側から生じる原始的な恐れの感情に対し耐性が無く、容易く飲み込まれる。

 知識として知り得ていても、どれだけ高度な理屈を並べ立てたとしても、人類は未だに『神鳴』とも称される自然現象への畏怖を捨てきれていない。

 足が竦み上がりまともに立つ事が出来ない者、顎が痙攣し奥歯が鳴らす音が止まらぬ者、頭を抱え背を丸めて縮こまる者。

 十人十色の反応でありながら、共通して誰もが心に原初の怖れを抱いていた。

「あ、おい、アレは………人か?」

 観客の一人から、震える声が漏れた。

 落雷が直撃し、光が収まったリングの中央に立つ者達がいた。

 肩に雷光を纏う大剣を載せた赤毛の男を筆頭に、高熱で焦げ付き今尚稲光が音を立てている惨状を物ともせず、堂々たる雄姿を見せつける者達。

 《ウェット・ファイターズ》。

 圏外最強と謳われる《グレイブバルチャー》に挑まんとする、傲岸不遜な破壊者達。

「皆様方、少しは目が覚めましたか?」

 閃光と共に現れ出でる者達と言うまるで神話の一幕のような光景に、理屈を超越したナニカを幻視していた観客達は、集音装置を通して発せられたエマの声で正気を取り戻す。

「彼等こそが………そう、彼等《ウェット・ファイターズ》こそが私が王国の命運を託した圏外最強を超えるチームです」

 誇らしげにまるで自慢の宝物を見せびらかす子供の様に手を掲げるエマの姿がARの大画面で描画される。

 この会場にいる誰もが、W.F.の今大会での活躍を知っている。下馬評と言う下馬評の悉くをひっくり返し、試合では常に前人未到の記録を打ち立て、既存の定石や常識を粉砕してW.F.はここに立っているのだ。

 最早偶然などの不確定要素が介入する余地はほぼ無く、その実力は疑いようがない。

 しかしそれでも、頭では納得していても心情的に自分達を家畜と罵倒したエマが推挙するチームに対し歓声や声援を上げることに抵抗感を持っていた観客の一人が、先程まで震えていた矮小な自分を掻き消すべく何か粗は無いかとW.F.を凝視し、それに気付いた。

「なんだよ、大口叩く割に四人しかいねえじゃねえかよ!」

 登場の派手さと勢いで多くの観客達が見落としていた明確にW.F.が見劣りする点、それはメンバーの少なさ。

 今、リングの上にいるのはアカギ、ケビン、ハクア、(マシラ)の四名のみだった。

 ルール上は最大参加可能人数の五名を満たさずに決勝を戦おうともなんら問題はないが、既に二回戦の時点で『カナツグ』がメンバーの一人として公式の場に姿を現している。

 状況を短絡的に解釈した観客は、叫んだ。

「勝ち目がないと分かって、逃げ出したんじゃないのか!?最強を超えるってのは、逃げ足の速さのことだったのかよ!?」」

 一人が進めば、確固たる行動方針を持たぬ人間の多くはそれに追従する。元々、エマにいい感情を抱いていなかった者達が、一斉に粗探しを始めた。

「五人すら満足に集めれなくて、よくここに来られたな!」

「よく見りゃ、《ヴィンセントヴァルキリーズ》のハクアがいるじゃねえか!どうせあと一人も他からの寄せ集めだろうが、他チームの強いメンバー引き抜いて、お前らにプライドは無いみたいだなぁ!?」

「今日昨日で集まった烏合の衆が勝てる程、無差別争覇杯の決勝は甘くねえんだよ!目障りだ、さっさと消えやがれ!」

 ルールに一切抵触するか否かは、エマに対して反感を持つ者達にとっては至極どうでもいい事柄。

 要は、ただ単に腹の立った相手に避難や罵声を浴びせ、安全圏から一方的に石を投げつけて嗜虐心を満たし留飲を下げたいだけなのだ。

 澄ました少女の顔が怒りや不快感で歪むの期待して空中のARモニターを見上げた観客達は、酷く呆れた表情で肩をすくめるエマを見た。

「ふぅ、どうやら……皆様方の状況把握能力の欠如は、私の想定以上の御様子」

 一歩、エマが前に出る。

「では、誰の眼にも分かる形でお見せしましょう」

 飛び交う罵詈雑言の嵐の中、更に一歩前へ。

 その足は前へ前へと進み、遂には貴賓室の外縁の端、手摺(てすり)によって仕切られた境にまで辿り着いた。

「W.F.の五人目は――――――――既にこの場にいます」

 手摺に手を掛け、エマは一気にその身を宙へと投げ出した。

 装飾の施された式典外套などの衣装、ダークブロンドの髪を大きく揺らしながら少女の身体は地上へと吸い込まれていく。

 貴賓室から地上までは50m超。転落死には十分すぎる高さ。

 しかも、エマは背中を下にした仰向け状態で落下している。これでは激突のタイミングが把握できないため、咄嗟の受け身を取る事も出来ない。

 数万人の人間がその光景を目の当たりにしながら、突然の事態に反応出来た者はいなかった。

 ただ一人を除いて。

 落下地点へと、雷光が走った。

 稲妻を引きずりながら高速で何かが駆け抜けかと思うと、激突寸前の少女は無傷で受け止められていた。

 鞘に納めて尚も放電する大剣により僅かに逆立った赤毛。大樹の枝葉の如く太く逞しい四肢により力強くも柔らかに全身でエマを受け止め惨事を未然に防いでみせたのは、W.F.のアカギであった。

 両手から感じる確かな重みと体温に安堵の表情を浮かべた『戦士』は、溜息交じりの苦笑をした。

「全く、君はいつも無茶をする」

「アカギさん程じゃありません。それに、信じていましたから」

 仮に事前に打ち合わせをしていたとしても、背中から、しかも命を失いかねない高所からの飛び降りとなると余程の信頼関係が構築されていなければ不可能な芸当。

 エマとアカギの間に強固なる信頼が築かれているのは明白。少なくとも、会場にいた多くの観客達の眼にはそう映った。

 連想し、続けざまに思ってしまう。

 常に試合でも公式の場でも傲岸不遜な態度を崩さなかった破壊者(アカギ)が見せた子供を見守る父のような温かな眼差しが、決し誰にも靡かず媚びず圏外を真っ二つに割り嘗てない大騒乱を引き起こした首謀者(エマ)が見せた頬を染めた乙女のような表情が、その取るに足らない思いつきを加速させる。

 もしや両者は最初から結託していたのではないかと、冷や汗をかきながら想像してしまう。

 W.F.の大会参加、フラメル王国と五帝の会談、決勝を使用した代理戦争。

 一連の流れの何もかもが計算尽く。

 そして、その五帝さえも気づかぬうちに絡めとられた大きな絵図を描いたのは。

「改めて名乗りましょう」

 再び表情を引き締め、いつの間にか罵声の止んだ会場の中、自らの足で立ったエマは左胸にある外套の留め具を引き千切り投げ捨てた。

 式典用の(よそお)いの下から現れたのは、漆黒の可変式外套。

 左肩口にフラメル王家の家紋、太陽と翠の杯のエンブレム。

 右肩口に大きく縁どられたWとFの文字。

 最新の戦装束に身を包んだ旧き国の王女は宣言する。

「私の名はエマ・フラメル。フラメル王国第一王女にして王権代行者。そして―――――――私こそが、W.F.最後の一人です!」

 国家予算クラスの兵器が湯水如く消費され、歴戦の猛者でさえ容易く死する決勝に飛び込むと言う命知らずの選択に、観客達は息を呑む。それは五帝の若手筆頭ザイ・コンウェイが選択することの出来ない、エマだからこそ選び取る事の出来る大衆に対する自己主張。

 絶句する会場に、寧ろこれを好機と捉えた司会進行のロビンソンは声を張り上げた。

「誰がこの光景を予想出来た!?誰がこの未来を予見出来た!?完全なる無名から、無理無茶無謀と嗤った全てを打ち砕き、ついに破壊者達は決勝まで登り詰めた!その旅路(ロード)は、銀河に羽ばたく禿鷹さえも超えていくのか!?新時代の幕開けだ!チーム、《ウェット・ファイターズ》!」

 圏外とは、銀河連盟の枠組みから外れたハグレ者達が集った場所。

 力なき者は淘汰され、力を持つ者が生き残る無法の荒野。

 綺麗事は通用せず、気高い理想など毛ほどの価値も無い。

 だがだからこそ、懸命に生き足掻き泥に塗れ這ってでも前に進もうとする者を、圏外に住まう者達は賞賛するのだ。

「……随分と吐くじゃねえか」

 それは小さな呟きの様な声だった。

 雑踏の中に掻き消える僅かな音。

 しかし、響き連なった。

「そういや俺、二回戦で、間違えてW.F.に賭けたら大勝ちしちまってよ。決勝も賭ければもしかして凄い事になるんじゃないのか?」

「W.F.ってオモシレーチームだよな。見てて飽きないつーか、もしかしてイカしてんじゃねの?」

「ここ数年、ずっと圏外は五帝支配が続くある種の小康状態だったからな。理由はなんであれ、風穴が空くのは歓迎すべき、か」

 その声の殆どが自分本位なもの。自己の利益や一時の感情によって左右された、道徳も倫理もへったくれも無い、しかし人間の(さが)が色濃く反映された生きた声だ。

 連鎖していく呟きは、やがて唱和し始め、大きなうねりと成った。

「―――――――――――――――――――――――――っっっ!」

 歓声。応援。激励。

 無数のエールが、会場を席巻していく。

 広がっていく欲望(いし)の奔流を前に、エマは高らかに謳いあげる。

「さあ皆様方、その眼で、その脳で、その魂で、存分に御覧(ごろう)じてください!圏外最強を超える、私達の戦いを!」

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