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皆様、一週間遅れですが新年あけましておめでとうございます。
お陰様で、PV10000&ユニーク3300を突破することができました。
特にPV数一万越えは、書き始めた当初からの一つの目標だったので非常に嬉しい限りです。
これまで読んでいただけた方々、誠にありがとうございます。
そして、こらからもよろしくお願い致します。
皆さんのPV数やブックマーク数、評価などが私の励みです。
黎明歴425年9月20日。
傭兵団所有の屋台船内の一回り大きく豪奢な一室にて、団員達に指示を出し武芸者ホウセン・ミツルは会場設営の陣頭指揮を執っていた。
普段は軽食や各種サービスを提供している冥途喫茶ヴァルハラではあるが、その奥には要人との折衝用の所謂迎賓室も存在している。
「盗聴器の類に関する検査は必ず二人以上での二重チェックを徹底してください。後、調度品に関しては配色を――――」
傭兵団《ヴィンセントヴァルキリーズ》は、国家や企業の要人警護を請け負う事も多い。戦闘用義体、光学兵器などの持ち込みが厳しく制限される交渉などに赴かねばならない要人達にとって、その鍛え上げた生身の肉体が最大の武器である武芸者は重宝される。
組織の代表者同士が集う会談の現場では、有事の際の即応力は当然必要だが、国家や企業に対する深い知識も求められる。
ところ変われば品変わると故事にもあるように、とある国に礼儀作法の一部が別の国では無作法に当たるなどよくある話だ。惑星間交流の途絶えた暗黒期を経たことで銀河の星々ではそれぞれ独自の文化・風習が根付いており、立ち居振る舞いや服装の配色や装飾、ちょっとした仕草から行き違いが発生し戦争にまで発展した事例さえある。
ホスト側とゲスト側の立ち位置や力関係が変わる事で同期して変化するその場その場での公式礼装を見極め選定する見識を養っていなければ、要人警護の依頼をこなすことは難しい。
純粋な戦闘能力ではハクアに一歩及ばずながらミツルが序列二位の席次に座し今回の設営を担っているのは、部隊の指揮能力のみならず団でも数少ない多数の文化・風習に精通した幅広い見識を持ちえた文武両道の武芸者であるからだ。
ハクアのような武の天賦を持たず名門に生まれながらも際立った才覚のない己にとって、勤勉さで身に着けた知識こそは脳髄に貯蔵される幾千幾万の武器であるとミツルは自負している。
ただ、今回ばかりはその無形の刃とて通じる相手か疑問が残る。団員達に指示を出し自身も忙しなく動きながらも、ホウセン・ミツルは緊張から己の動作が僅かに鈍っていることを感じずにはいられない。
V.V.が準備を行いホスト側として迎え入れようとしている相手とは、今回の騒動の発端となったフラメル王国陣営であった。
無差別争覇杯大会運営委員会からの緊急告知が発表されてより一刻と間を空けず、互いの目的を達するには可及的速やかなる情報・意識共有が必須と見た《ウェット・ファイターズ》とフラメル王国勢の両陣営は、最低限の遣り取りのみをネットワーク上で行い内容をより詰めるために直接顔を合わせる会談の場を設けた。
場所は、《ヴィンセントヴァルキリーズ》所有の屋台船。
W.F.の関係者全員、雇用契約を結び共闘関係となったV.V.のほぼ全員が揃っており、盗聴・盗撮などによる間諜対策も整っているとなると、態々他の場所を選ぶ理由がない。
また、フラメル王国勢からすれば敵地とまではいかずとも自拠点の外である別陣営に代表者である王女エマ・フラメル自らが出向く事により、W.F.側へ『誠意』を示す事が出来る。
フラメル王国勢の行動により無差別争覇杯の準決勝、決勝が統合され四チームによる『無差別戦』のバトルロイヤルに変更されたことで、W.F.は一気に不利な状況へと追い込まれていた。
形式上、五人一組の四チームが互いに競い合い優勝を目指す構図になっているが、その実情は大きく違っている。五帝コンウェイと専属契約を結んでいる《グレイブバルチャー》、他二チームのスポンサーもコンウェイ代表のOOE社の子会社であり、つまりはW.F以外のチーム全てが同一の陣営。
優勝の為にG.V.を含めた三チームが結託することは、火を見るよりも明らか。寧ろ積極的に密接な戦術的連携を行い、W.F.を潰しに来るだろう。決勝戦、アカギ達は五対十五の数的不利を背負って戦わなければならない。
更に、続報として発表された『無差別戦』バトルロイヤルのルールが、W.F.の首を絞めている。細かいレギュレーションを除いた大まかなルールを纏めると以下の通りだ。
・決勝戦は、大会運営委員会所有の無人惑星全てを戦場として行われる。
・基本の試合形式は制限時間付の総戦力バトルロイヤル。
・全チームはありとあらゆる兵器・武装の使用が許可され、修理・補給用の物資、拠点構築用の資材の持ち込みも認められる。
・戦闘不能あるいは死亡した選手は失格となる。
・最後まで生き残ったチームが優勝の栄誉を得る。ただし、制限時間内に決着が付かなければ、失格になっていない選手の数の多いチームを優勝とする。
武術の名門ホウセン家に生を受け幼少の頃より一族全員から徹底した武の英才教育を施され、継承した業をより磨くためV.V.にその身一つで入団、若くとも数多くの強者を眼にしてきたミツルの見立てでは、W.Fのリーダーであるアカギは間違いなく強い。
心技体のどれをとっても超一流、圏外最強と謳われるG.V.団長のラファエル・レーヴィトにも比肩しうる底知れぬ実力を持っていることは疑いようもない。準決勝、決勝が『勝ち抜き戦』ならば、たった一人で大剣片手に十人の猛者を切り伏せ優勝を掻っ攫う事さえ可能だろう。
だが、それはあくまでも大会が個人と個人の戦闘のみで決着がつくことを前提とした場合の話。
大会名の由来ともなった『無差別戦』は、試合というよりも寧ろ戦争に近い。
他の試合形式では、ルールを購入すれば光学兵器などの持ち込みも認められたが、それは個人が携行できるレベルの規格に限ってであり、持ち運びができない大型兵器などは原則使用が禁止されている。
ところが、ありとあらゆる兵器・武装が使用可能な『無差別戦』では、資金に折り合いがつくならば超弩級戦艦ですら投入してもなんら問題はない。圏外経済の一部を掌握する五帝コンウェイならば、まず間違いなく超大型兵器を出してくる。
如何に個人戦闘能力が傑出していようとも、一撃で地形さえも変える大量破壊兵器と正面からぶつかって勝てる人間はいない。
札束での殴り合い。旧時代の古い言い回しで、『無差別戦』をそう表する者もいる。
W.F.も一億クレジットの大金を惜しげもなく払えるだけの資金力を有してはいるが、その土俵で勝負するには経済を担う五帝は相手が悪すぎる。
戦力の視点を大から小、個々人のものへと移しても不安要素は多い。
確かに、アカギの戦闘能力は凄まじいの一言だが、他のメンバーとなると話は変わる。
『カネツグ』は情報が少なく過ぎるため未知数な部分が多々あるが、少なくとも天賦の才覚を秘めようともケビン・リーは若くそして未熟だ。二回戦でマッドマックスを倒せたのは、チャンピオンのファイトスタイルとケビンの能力的な相性が奇跡的噛み合っていたためであり、勝利のためにありとあらゆる手段を講じる戦巧手であるG.V.の団員が相手では、荷が勝ちすぎている。
仮に、追加メンバーとしてハクアかミツル自身の何れかが加入し戦ったとしても、個々の実力、団員同士の連携共に歴戦のG.V.の団員達が勝る。
決勝での想定される敵陣営の戦術の一つとしては、まずは装備の質、数の多さを利用して二チームでアカギとそれ以外のメンバーを分断、残りの一チームは戦闘区域から即座に離脱し距離を取って姿を隠す。二チームは戦力的に劣るW.F.の四名の内、二人か三人を戦闘不能に追い込んだ後は、ひたすら制限時間一杯まで防御と足止めに徹する。
このように行動すれば敵陣営にも損害は出るだろうが、W.F.と事構える二チームが全滅したとしても、早々に離脱したことで無傷の一チームが残っているため、優勝するのはザイ・コンウェイ陣営。
寡兵を以って大軍に勝利すると言えば聞こえはいいが、戦いは兵力・兵站を揃えられず寡戦を強いられた時点で勝ち目は限りなく薄くなる。
幾つか列挙しただけでもコンウェイ陣営には様々なアドバンテージがあり、W.F.の状況は最早頓死寸前。
総括すればフラメル王国陣営の行動は、無名弱小の最底辺から不断の努力と実績を積み重ね優勝の頂にまで手を届かせかけていたW.F.を再び地の底へと蹴落としたに等しい。
V.V.の団員達の少なくない数が、口には出さずともフラメル王国に対して憤慨していた。
優勝時の特別ボーナスが遠のいたこともあるが、団員の中には光学兵器や義体が隆盛の現代で、時代遅れと揶揄される武器を手に磨き抜いた業と鍛え抜いた肉体で戦い抜くW.F.に同族意識に似た共感を抱いている者も多い。
そんな彼らの努力を無にするが如きフラメル王国の所業は、看過できないものがあった。彼女達も傭兵である以上仕事に私情を挟み手を抜くような真似はけっしてしないが、時折その表情には不承不承といった不満が見え隠れしていた。
「各自、見えない箇所にこそ心を砕いてください。不出来な仕事は、V.V.の看板のみならずW.F.や各流派の御歴々の顔にも泥を塗ると心得るように!」
「っ………はい、団長代行!了解しました!」
指示を飛ばすミツルの内にも僅かながら近似の感情はあるが、個人的な好悪の感情よりも序列二位の団長代行としてフラメル王国には警戒心と畏怖が際立っている。
かの国には、何かがある。
傭兵として、仕事の有無や生存率に関わる世界情勢の情報収集は必須事項だ。
隕石衝突未遂事件。約半年前に世間を騒がせたニュースで、ミツルはフラメル王国の事を知った。連盟の設置している防衛衛星の有効性が問われる点が話題になっていたが、事の顛末としては連盟の杜撰で横暴な対応に耐えかねた加盟国がまた一つ脱退を表明すると言う至極ありふれたもの。
国が滅びかけた当事者にとっては未曽有の大苦難であろうが、それ以外の者達にとってはよくある話で、ミツルも当時は大して気にしていなかった。
二度目にその名を聞いたのは、四カ月前だ。
V.V.が懇意にしていたジャンク屋が突然廃業すると言い出し、理由を尋ねてみればスカウトを受けたからだと言う。その勧誘してきた組織こそがフラメル王国であった。
ジャンク屋は、元々は連盟の《スクール》出身で一級品の腕を持つ技術士官だったが、職人気質な性格が災いし元居た軍の上官を殴り倒し自主退役。流れ流れ圏外に辿り着くと、気ままに気に入った者だけを相手に細々とした商売を行っていた。
その腕前から何度かギルドや他組織からのスカウトも当然あったはずだが、全て断り数十年単位で頑固一徹を貫いてきた堅物である。そんな頑固者を如何にして、フラメル王国は取り込んだのか。
『夢や情熱なんて青臭いものとうの昔に捨てたと思ってたんだが、心のどっかに燻ってるもんが残ってたみたいでな。あの嬢ちゃんに、火ぃ着けられちまったよ』
そう言いながら語るジャンク屋の顔は、晴れ晴れとしていた。
気になったミツルが調べてみれば、フラメル王国の第一王女自らが足を運び様々な人材をスカウトして回っていることが分かった。各自の専門分野は様々だが、引き抜かれた人材の多くは、腕は一流だが性格や素行に難あり曲者が選ばれている。
ここまでの事柄ならミツルも特に問題視はしなかった。
連盟との関係悪化で、今後国家を存続させるため性格などに眼を瞑り有能な人材を広く募っていると考えれば筋が通るし、外交を担う王族である第一王女が人をその気にさせる話術や交渉術を習得していたとしても不思議はない。
だが、今回の騒動で動いたのは五帝である。
圏外に無数にいる魑魅魍魎たる商人達の頂点に立つ大妖怪達、なのである。
全員が多忙を極め分刻みのスケジュールで動いているため、直接交渉する機会すら稀。五帝からの直接仕事を受けたというだけで、傭兵界隈では一種の箔が付く。
その五帝全員と交渉する場を用意しただけでも驚嘆ものだが、勢力を二分割し潰し合いをさせるよう合意を取らせるのに如何なる交渉を展開したのか、豊富な知識を持つミツルにも見当がまるでつかない。
しかも、無差別争覇杯運営委員会の緊急発表から大会内容の変更は急遽決まったものと分かる。つまりは、五帝側とフラメル王国側の交渉は直近のごく短期間の内に行われ、下手をすればギルドそのものを崩壊させかねない決断を第一王女は五帝達に即決させたのだ。
ミツルは、エマ・フラメルが稀有な系統の越境能力者ではないかと疑っている。
越境能力には大別して六つの系統があるが、その中で二番目に能力者の数が少ない系統に精神干渉系というものがある。
直接的な殺傷能力という意味では全系統でも最低であるが、唯一人間の精神に直接の干渉が可能な越境能力。有りもしない物を幻覚として見せる、強制的に感情の一部を暴走させる、果ては対象の自己認識を改変し人間を精神的に殺し死体に変えてしまう能力者も過去にはいたとミツルの知識にはある。
数々の難物揃いの商人達を相手取ってきた五帝ならば当然精神干渉系の越境能力者への対策も講じてはいるだろうが、何分精神干渉系能力者は絶対数自体が極端に少ない。
もしエマ・フラメルが既存の能力者とはかけ離れたタイプの能力者であった場合、対策の網目を抜けて五帝へ何らかの精神干渉を行い、ギルドの力を削ぐべく今回の騒動を誘発させた可能性もある。
考えれば考える程にミツルには、エマ・フラメルが越境能力を悪用し圏外の覇権を握ろうとする野心に満ちた狡猾な奸雄に見えて仕方がない。
無論、今までの考え全てがミツルの杞憂である可能性もあるが、半年前まで連盟の旗下の一小国に過ぎなかったフラメル王国がここまでの影響力を持つようになるのは真っ当な理由だけでは説明がつかない。
ミツルは、自らの考えと憂慮を伝えフラメル王国との会談を考え直すようアカギに進言したが、その意見が聞き届けられることはなかった。
苦笑しながらアカギは、親が子にそうするようにミツルの頭に手を置いた。
『まあ、仲間が心配なのは分かるが、ここは俺に任せてくれないか?なに、決して悪いようにはならない』
一度契約を結んだ以上、傭兵としても武芸者としても雇用主の言葉に逆らう事は出来ない。故に、ミツルはフラメル王国が会談で一体何を仕掛けてくるのかという不安と緊張を押し殺しながら定刻まで仕事に徹し続け得た。
いざという時には、この身を盾とする覚悟を胸に秘めながら。
「本当にっ!申し訳ございませんでしたっ!」
開幕一番、V.V.の団員に迎賓室にまで案内され席に着いたエマ・フラメルは、王族としての威厳も体裁も何もかもを投げ捨てて額を目の前の机に全力で叩きつけた。
机を挟んだ対面に座るアカギやケビンは一瞬呆気にとられ、その背後に給仕や記録係として控えていたV.V.の団員達も大きく目を剥いた。
その物理的衝撃たるや、エマがレベルアップ現象で身体を強化されていることもあり、金属製の頑強な机には幾つもの亀裂が走っていた。
「王族を含めたフラメル王国に住まう全ての民を救っていただいたアカギさんに、恩を仇で返す不義理をしてしまい、面目次第もありません!」
二度目の五帝達との会談。
張り巡らされた従属を強いる罠を、盤面にアカギという鬼札を出現した事を好機として逆に利用し、エマはコンウェイを伸るか反るかの大勝負の場に立たせることに成功した。
だが、相手は五帝の中でも若手筆頭と名高い俊英。転んでもただでは起きず、無差別争覇杯の準決勝、決勝を『無差別戦』のバトルロイヤルに変更した上で、自陣営が有利になるような幾つものルールを交渉の手練手管により他の五帝にも認めさせた。
結果、エマ達の行動がW.F.の優勝を阻害するという事態を招いてしまった。
フラメル王国の全員が、アカギには返しきれない程の多大な恩義がある。
精霊などの余りにも現代社会の常識からは外れた存在が関与しているため、半年前の事件の詳細は国民全員に公表することは出来ず表立ってその功績を称える事も出来ない。であればこそ、真実を知り得る立場にある王族は皆、恩人に報いる義務がある。
ましてや、フラメル王国がアカギの何らかの不利益を被らせるなど本来はあってはならない。
出会ってから半年と言う時間は短いが、生死を共にするという濃密な時間を共有したエマは、アカギの人柄を知っている。
赤毛の『戦士』は、フラメル王家にそんな義務があるなどとは毛ほども思っていない。
今回の件も、心から謝罪すれば『大丈夫だ』と、『大した事じゃない。この程度の逆境、慣れている』と笑いながら窮地に向かっていくだろう。
きっとその背中は何とも頼もしく、しかしだからこそ縋っていては駄目だとエマは強く思う。
既に一度、フラメル王国はほぼ無関係のアカギに命運の全てを背負わせている。
もう一度、『戦士』の強さを頼りに助けてくれと嘆願するのか。弱さを免罪符に安全圏にいるのが国を率いる王族のやるべき事か。
否である。断じて否だ。
確かに、フラメル王国は大多数の銀河の国々からすれば砂粒のように小さい存在だ。
だが、決して無力ではない。弱くともやれることがある。ここでまたアカギに全てを背負わせるのは、王族としての責務の放棄に他ならない。
そしてそれは、アカギの隣に立ち共に歩いて行ける存在を目指しているエマ個人としても唾棄すべきものだ。
ここで退けば、一生庇護対象のままだ。
額から血を流しながら、エマは顔をあげて告げる。
「厚顔無恥は百も承知で言います。アカギさん、この苦境を乗り越える一助として私を決勝戦に参加させてください!」
熱い意気そのものを瞳に宿して滾らせるように気炎を吐くエマに対し、アカギは困った顔で後頭部をかいた。すると、後方へ控えていた武芸者の一人が一歩前に出る。
「少々出過ぎた真似だと個人的にも思いますが、これもサポートの一環として口を挟ませてください。私は、エマ王女の参加に反対です」
眼鏡の奥から冷たい視線をエマに向けるのは、V.V.団長代行のホウセン・ミツルであった。
「理由を聞いてもいいか?」
視線を向けるアカギに、ミツルは冷静に答えた。
「単純に、王女殿下では戦力にはならないからです。見たところ戦闘訓練を受けた経験はあるようですが、精々うちの下位の序列メンバー程度。畑違いの人間に戦場に出てこられても、足を引っ張られるだけで百害あって一利なしです」
言外に政治屋は引っ込んでいろと言われても、エマは退かなかった。投げつけられた言葉はプロの傭兵という立場からすれば至極当然の意見なのでそのまま首肯する。
「ええ、認めます。私は、多分この場にいる誰よりも弱い。ですが、決勝戦の試合形式は『無差別戦』のバトルロイヤル、試合ではなく戦争という条件下でならば私は―――」
力強く落ち着いた声色で、エマは告げた。
「この場にいる誰よりも、悪辣に戦場を支配することができます」
その言葉には、実感があった。ブラフやハッタリ、ましてや自分を大きく見せたいだけの強がりなどではなく、確かな自信が。
「もう一度言います、私を決勝に参加させてください」
息を吸い込み、エマは再び声を張り上げる。
「この私、フラメル王国第一王女エマ・フラメルが、―――自ら決勝の舞台に立ち勝利を呼び込んで見せます!」




