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PV2000&ユニーク800突破!
一月はたくさん読んでいただけて、早くも2000を突破できました。
読んでいただけた方々、誠にありがとうございます。
皆さんのPV数やブックマーク数、評価などは、私の励みになります!
マーズマ本星への隕石衝突未遂事件からフラメル王国が連盟から脱退し在籍資格を失うまでの半年間、エマは銀河最高学府の《スクール》所属の学生であるという特権を使い尽くした。
在校生でしか閲覧できない貴重な資料、広大な銀河中から集められた最高峰の脳髄によって書かれた卒業論文集を特に読み漁った。
目的は、人材発掘だ。
珠玉の如き才能や卓越した能力を持っているとしても、必ずしもそれに見合った待遇や環境に全員がいるわけではない。連盟の血統主義によって冷遇された者もいれば、辺境出身の蛮族と嗤われている者もいるだろう。
フラメル王国にとって有益、エマの目的に適う才能・能力を持っている者達をリストアップし、王国の国家間の繋がり、貿易商として顔の広い次兄、圏外で人助けを行っているアカギなど、持ちうる全てのコネクションを駆使して弱小国の王女は、そんな斜陽の天才達と接触を図った。
半年という限りある時間の中、出来うる限り直接顔を突き合わせ彼等の話に真摯に耳を傾け、熱意を以って自分の意思を伝え、時には取引や懐柔なども用いてエマは交渉を行い天才達をスカウトしていった。
エマが交渉に赴いた時、嘗ては天才少年と呼ばれたヒャクシキ・ツハードは、手付かずの自然が幅を利かせる秘境の惑星の孤島にて、二十年間黙々と自身の研究を続けていた。
彼は、世間の評価など毛ほども気にしていなかった。富も名声も理解も求めず、世捨て人の賢者の様に隠棲し、ただ自分が決めたやるべきことを成し遂げようとしていた。
彼の卒業論文のタイトルは、『群像劇型世界群の実在性とその有効活用法』。
アカギと出会うまでエマが与太話と切って捨てていた異世界が実在するという可能性に、ヒャクシキは独自の観点から気付いていた。
越境能力者達が時折垣間見るという、本人は見知らず、されど頭の奥で明瞭に色付く景色。
そこら着想を得て、彼は地平面の向こうには、複数の宇宙が存在するのではと考えた。創世期に於ける多元宇宙論と似た考えであるが、相違点として宇宙と宇宙、世界と世界は互いに影響しあって相互補完の関係の上で成り立っているとする点。
物理法則を無視した能力、他の世界の法則を行使する越境者達がその生きた証拠であり、他の世界から影響を受けているのなら、その影響力を利用し有効に活用すれば人類社会に大きな発展を望むことができる、とういうのが論文の骨子だ。
扱っている内容が内容なだけに、越境能力者の存在を認めていない連盟内では珍説奇論扱いを受けるも、整合性の高さや矛盾の無さから表立って否定することもできず、ヒャクシキという稀有な才を利用したいという連盟の思惑も加わり《スクール》もその論文を認めざるを得なかった。
その論文を元にして生まれたのが、不幸を呼ぶと悪魔の船を渾名される船《ラプラス》であり、《ノイマン》は宇宙船としての性能を向上させ機能をブラッシュアップさせた後継機だ。
「―――以上の徹底的な見直しにより、《ノイマン》は《ラプラス》と比較して航行速度・航続距離共に1.5倍以上、制作費用も従来の半分以下に抑えられています」
画面越しに、ヒャクシキが朗々と新開発された宇宙船のスペックデータを述べていく。
役割上、高度な新技術や未発見の知識について見慣れている五帝であっても、二十年以上に渡って世間から距離を置いていた天才の頭脳には驚愕するしかなかった。
《ノイマン》の制作に使われている素材は、どれもこれもが圏外で一般に流通しているありふれたものであり入手、加工、制作のどれをとっても至極容易。エーテル・リフレクション・マテリアルに代表される特殊素材を一切使わずに、緻密な計算と素材一つ一つへの深い理解から生じる斬新な活用法を以って組み上げられた設計の妙とも言うべき芸術。
単純な航行性能もそうだが、特筆すべきはその制作コストだ。
これだけ低い費用での制作が可能ならば、今は個人での所有は富裕層に限られていた宇宙船を所得を問わず一家に一台の普及させることも可能。そこから生まれる旅行産業や観光業、サービスなどの新たな需要も見込め、費用対効果から見送っていた資源惑星の開拓などにも活用することが出来る。
《ノイマン》が将来的に生み出す計り知れない利益、圏外圏の更なる発展を計算し、コンウェイは素直な賞賛を送った。
「素晴らしい。二十歳を過ぎればただの人などと昔は言ったようですが、君に限っては当てはまらないようですね、ツハード氏」
「恐縮です、コンウェイさん」
ヒャクシキの能力を認めながらも、一転して五帝の纏め役は表情を険しくした。
「ですが、この《ノイマン》が《ラプラス》と同じ轍を踏まない保証がどこにありますか?特に、例の航行中に暴走を起こせば、二十年前の惨事の再来となりかねない」
トランス航行。
《ラプラス》が実現したエーテル航行に代わる新たなる航行法。
群像劇型世界群を提唱するヒャクシキの理論によれば、世界と世界の間には物質の行き来を封鎖している不干渉領域が存在している。唯一この領域へのアクセスを可能としているのが、トランス粒子と呼ばれる特殊粒子であり、これを用いて船体の『質量のみ』を一時的に領域内へ格納することで質量を0にし、慣性中立化現象を引き起こすのがトランス航行法の基本だ。
無慣性状態になった船体は、慣性の束縛から解き放たれエーテル航行に匹敵する超加速状態へと移行することが可能となる。移ろいやすい《惑星流》の変動を無視でき、希少なマテリアルも不要という、安全面とコスト面に於いてならばエーテル航行よりも遥かに勝る長所があり、当時はトランス航行法が作り出す産業の革新に、誰もが期待に胸を膨らませていた。
だが、残された設計図を元に作られた《ラプラス》達が事故を起こしたのは、殆どがトランス航行中であり、忌み名で呼ばれる船と同じくトランス航行もまた忌避される航法となってしまっていた。
「皆さんの端末に送信したデータの中には、王国側で収集した《ノイマン》の五か月分の稼働データや負荷耐久テストの結果。私が引き籠っていた際、個人的に行っていたトランス粒子干渉実験の二十年分の結果も添付してありますが、それらでは保証に足りえないと?」
「提供されたデータの信憑性を疑う気はありませんし、数字の上での保証になることは認めます。ですが、ビジネスは何よりも信用が第一。《ラプラス》が長年に渡り積み上げ続けた不信感は、よほどの後ろ盾が無ければ・・・・・・」
言葉を継ぎかけ、コンウェイは張り巡らされた意図に気づく。視線を投影された映像から逸らし、笑顔で立っている少女へと向ける。
「成程、遅まきながら理解できました。つまり、エマ王女が五帝の地位を欲するのは、この《ノイマン》を広く圏外に普及させる為、ですね」
「はい、御察しの通りです」
《ラプラス》が積み上げた信用の負債は、最早雪だるま式に膨れ上がっている。五帝の纏め役の推測通り、並大抵の事では個人も企業も後継である《ノイマン》を購入しようとは思わない。余程信用のある誰かが、その負債を肩代わりでもしない限り。
五帝の圏外圏でのネームバリューと信用度は絶大だ。その名の元に安心安全の値札を張り付けられた商品ならば、大抵の者が諸手を挙げて迎え入れるだろう。
「自国の保身、という目的がある事は否定しません。ですが、これから私達王国が属する圏外圏の発展を願う心にも嘘はありません。《ノイマン》を一日でも早く一台でも多く普及させる為に、私は五帝の地位・権限を欲しています」
毅然とした口調で応答するエマは、とは言えと付け加える。
「コンウェイ様のおっしゃる通り、ビジネスは信用が第一。五帝の名があれば、圏外圏の人々に対する信用は担保できますが、肝心の五帝の皆様方自身の信用を私は未だ得ていません」
友人兼主人のアイコンタクトで、レイホウは新しいウインドウを表示させる。
描画されたのは、地図。コロニー・ナタ近郊の宙域を示したものだった。
「皆様方の信用を買う為に、私は誠意と覚悟を示しましょう」
地図上、コロニー・ナタの上に明滅する点が穿たれる。点は線を描きながら動き、別星系にまで伸びると今度はUターンしてまた出発地点まで戻ってくる。
その動きの意味を先に気付いたのは当時実際に当事者の一人であった年配組。続いて、若手組にも徐々に理解の色が広がっていく。
「へえ、随分と肝の据わった王女様じゃないか」
好戦的な、あるいは興味深そうな笑みを分厚い唇で浮かべるのはエリザベス・スチュアート。半世紀前、その美貌で多くの男達を虜にした実績は伊達でなく、皺が刻まれ脂肪の張り付いた顔面でも、尚枯れぬ美しさが宿っていた。
「悪名を払拭するために、私達の目の前で性能テストをやろうってのかい」
「はい、クリア条件を二十年前の公開デモよりもシビアに設定し、《ノイマン》には私が乗り込みます」
新たに投影されたウインドウに、港区に停泊されている一隻の船が映り込む。事前に表示されていた構造物とほぼ同じ形をした船、王国側が持ち込んだ《ノイマン》の先行量産モデルである。
「コロニー・ナタ周辺で、《ノイマン》の24時間耐久性能テストを行う許可をください。私自らが悪名高き船の後継機のテストを完遂させることで、皆様方へ誠意と覚悟、そしてなによりも船の安全性を証明したいと思います」
堂々たる態度を以って弱小国の姫は、五帝達へ宣言する。
「その内容と結果を以って、私が五帝の座を売るに相応しい商談相手かどうか、圏外圏の未来を託すに値するかどうかを、他の誰もない皆様御自身が培ってきた目利きの業にて御判断ください」
エリザベスが枯れぬ花なら、エマのそれは未完の大輪とでも言おうか。未だ蕾、されど子漏れ出る芳醇な香りと内に秘めた瑞々しい花弁は、咲かずとも多くの者を惹きつけて止まない。
若い世代が見せた大器の片鱗に、ライコウは脂の乗った笑みで歯を見せた。
「儂等に商人としての資質を問うてくるか、中々にそそられる話じゃ。よかろう、ナタ周辺一帯は儂の縄張。性能テストに邪魔が入らぬよう取り計らおう」
独断専行気味なライコウの判断にも、誰も口を挟まない。
思惑は各々あれども、他四人も《ノイマン》が圏外圏の現状を打破する嚆矢となるか否かには強く関心があった。大会開催中にテストを行うとなれば、交通規制や過密スケジュールの再調整等で予定外の不利益も生じるが、その損失を呑み込んででもいち早く実行するべきだと判断する程に、価値を見出していた。
「それで、テストは何時から行うつもりじゃ?」
「お望みとあれば、今すぐにでも可能です。ですが、五帝の皆様の予定などもおありでしょう。都合の良い日時を指定していただければ、そのタイミングで行うつもりです」
纏め役という立場上、他の五帝のスケジュールもある程度把握しているコンウェイが端末を操作し各自の動きを確認し、その上で提案する。
「テストを行う為の交通規制の通知の徹底、試行内容を記録するための観測員など、色々と手配する時間も考慮し、二日後の9月18日04:00スタートではいかかでしょう?」
開始時刻が早朝なのは、宇宙船の往来が混雑するピークタイムを避けるため。開始と終了が早朝ならば、交通規制も行い易くなる。
異議を申し立てる者はその場におらず、また時間も押し迫っていた為、会談はそのまま終了となった。
コロニー・ナタ内でも最高級のリゾートホテル最上階、夜の街の輝きを窓から一望できるスイートルーム。厳密な管理の元に栽培、伐採され名のある職人が一つ一つ手仕事で削り出した薫り高い木材を惜しげもなく使用した湯船に、エマは裸身を沈めた。
「ん~、何とか五帝の興味を引く事は成功しましたね」
半年かけて行ってきた準備の甲斐もあり、エマ達は何とか五帝側に地位売却の可否を考えさせるところまで持っていくことに成功した。最悪話にならないと門前払いされる可能性もあったため、上々の滑り出しにエマは背伸びで身体をほぐした。
普段なら風呂設備の総額が幾らかを貧乏性の少女は計算してしまい休むどころ逆に気疲れしてしまいそうだが、幸か不幸かここ一週間心身を酷使するような場面が多発したこともあり、疲労から脳の演算能力が低下し気負いなく入浴を堪能できていた。
部屋に付属する風呂と言えども、最高級スイートともなれば浴槽は身体を大の字に広げても尚余裕がある。肌に触れる水の感触から拘って設計された浴場は正に極楽。湯の中に疲労が溶け出し、身も心も楽になっていく感覚にエマは上気した頬を緩めた。
「あ~、連盟上級国民共の贅沢趣味には反吐が出ると思っていましたけど、この風呂文化だけは否定できませんね~」
「フフ、こんなのは上層で威張り散らしている無能さん達からすれば贅沢でも何でもありませんよ、エマちゃん。これから先、相手方に歓待されることもあるはずですから、心まで篭絡されないように、これを機に道楽の感覚をしっかりと憶えて耐性を付けておいてくださいね」
蕩けかけているエマの横では、同じく湯船に浸りながらも余裕のあるレイホウが盆に載せた餡蜜を口に運んでいた。尚、風呂場であっても左目に眼帯は付けたままだ。
料金を払ったのはフラメル王国だが、数年先まで予約で満室の老舗ホテルに、王国全員分の部屋を用意させたのはレイホウのコネである。何年か前に、占いとアドバイスにより経営難に陥ったホテルがV字回復したことで、彼女はホテル側から様々な便宜を図られるお得意様となっていた。
長い息を吐きながら、心が完全に弛緩しきる前に気を引き締めたエマは手首の端末を操作する。
トランス航行を行える宇宙船《ノイマン》を餌に、五帝を交渉の場に引きずり出すことには成功したが、それはあくまでもギルドを乗っ取るという目的の第一歩に過ぎない。道を踏み違えれば、寄る辺の無い王国は広大な銀河の中で孤立し遠くない未来に崩壊する。
それを防ぐためにも、エマ達に油断は許されない。
先行量産型《ノイマン》の整備や管理については、開発者当人であるヒャクシキ率いる整備班が請け負っており、エマに介入する余地はない。当日には間違いなく最高のコンディションに仕上げてくれるだろう。
為政者たる者がすべきは、五帝への根回しだ。
売却の可否はテスト後に改めて決める事になっているが、それまでに本人達と接触し王国側に賛意すれば有益であること示せれば、決を採る際に俄然有利に働く。
「欲を言えば、五人全員と一対一で話をしたいところですが……」
五帝達の映像を一つ一つARで表示しながら、エマは唸る。
問題になってくるのは、時間だ。
ザイ・コンウェイも言っていたが、比喩や誇張なしで五帝は分単位の過密スケジュールで動いており、余裕はほぼ無い。ただでさえタイトなスケジュールに、エマの性能テストの観察と最終的な結論を出す為の会議の場が割り込みで挿入されているため、余裕はほぼ無いどころか皆無と断言できる。
ここでスケジュールを圧迫している原因であるエマが、個人的に話をしたいので時間を取ってくれと言ったところで寧ろ悪印象しか与えない。
また、エマの側にもあまり時間がない。テスト開始は二日後の18日午前四時。万が一のミスさえ発生させぬよう、あるいは不足事態が起きても冷静に対処出来るよう、体調を万全にするためにも食事や睡眠は十分にとっておく必要がある。
既に、コロニー内の日付は変更されようとしておりもう後数分で17日になる。様々な要因を考量して、テストまでに対談できるのは精々一人か二人が限界だろう。
「狙い目としては、コンウェイさんでしょうか?」
五帝の纏め役であり、若手組の筆頭。会議中の発言量からも分かるように、コンウェイ以外の二人の若手組は彼の傘下であり、上役の意見を可決に持っていければ後の二人も自動でついてくる。
「あるいは・・・・・・」
コンウェイの映像が一旦下がり、別の五帝の映像が少女の手元に引き寄せられた。
会談に臨む前、エマは五帝全員の出生から始まる経歴、動向、方針を調べ上げている。出版社から発行されている人物伝記に経営理念や人生観が綴られた著書。ニュースサイトの過去記事や、直接取引を行った商人達の印象。学生OJT制度を利用し連盟の最高評議会ビルを訪れた際は、《黒の王》の黒糸を使って政府メインサーバーから連盟側から観測した五帝の動きなど多くの情報を抜き取った。
その中で、エマは五帝のとある人物へのとても大きな交渉材料を手に入れている。
提示すれば、相手の心情を王国側へと傾ける事が出来る手札を。
「こちらとの交渉を優先すべきでしょうか?でも、接触する方法が・・・・・・」
思案顔のエマの視界に、横から新たなARビジョンが入り込む。レイホウが指で弾き、友人兼主人の傍へと寄越したものだ。
「エマちゃん、これな~んだ?」
それは、無差別争覇杯の観戦チケットだった。ただし、料金の桁が違う。圏外圏での平均年収を僅かな時間で吹き飛ばす貴賓室での観戦が可能になる、VIPチケットである。
「御爺様がスケジュールの再調整で招待ゲストとして出席できなくなって、代理として孫の私にお鉢が回ってきたんですよ。因みに、一名までなら随伴OKです」
チケットの添付情報は17日のスタジアム・Dの午後の部とあり、急いで自分の端末から大会運営委員会公式HPにアクセスしたエマは、ゲストして試合を観戦する予定の五帝の名前を確認した。
列挙された名前に目的の人物を見つけたエマは、嬉しさから思わず裸のまま友人に抱き着いた。
「レイホ~ウ!」
「はいはい、エマちゃんは甘えん坊さんですね~」
「やられた・・・・・・」
険しい表情で、アカギは端末から投影されたARビジョンを睨みつける。
大会ルールのオークションサイトを映している画面には、『星取り戦』のルールが暗転した状態で表示されその上から大きく売約済みの文字が重ねられていた。
事の起こりはほんの十分ほど前。
二回戦の対戦予定チーム、《グランドチャンピオンズ》とアカギはルールの競り合いを行っていた。一気に引き離し戦意を喪失させるために、アカギは最初から最低落札金額の10倍の値を提示したが、相手方は即座に20倍の値を返した。
前大会の準優勝チームであり、闘技場の覇者たるS級闘士マクシミリアン率いる優勝候補の一角だけあって資金力も潤沢。何度か大金を吹っ掛けてもみたが、即座にその上を行かれる。
泥沼になることを避ける為、アカギはオークション終了間際での入札を決める。
静かにその時を待ち、日付が変わる数分前に『戦士』が最後の入札をしようと端末を操作した時、予期せぬ通信障害が発生。突如サイトへのアクセスが不可能になる。
すぐさま運営委員会へ連絡を取るも返答内容は、状況を確認する為に暫くお待ちください、であった。何もできぬままに時間だけが過ぎ、結果『星取り戦』のルールは《グランドチャンピオンズ》に落札される。
競売結果確定後にきた運営からの返答は、そのような障害は一切発生していない、の一点張りでアカギの言い分をまるで認めようとしていなかった。
最早、競売のやり直しを求めたとしても、結果は覆らないだろう。
《担い手様、申し訳ございません!電子機器を支配できる私が付いていながら・・・・・・》
常日頃からエーテルを介しアカギの端末を乗っ取り操っている『カネツグ』だが、その距離には限界があり、介入する対象が遠距離にある場合手の出しようがない。不甲斐なさと自責の念で縮こまっている精霊を宥める為、アカギは努めて笑った。
「相棒にいつも頼っている俺が、尽くしてくれるお前の何を責められる。今回は、運営委員会の妨害を予想していながら、対処できなかった俺が間抜けだっただけの話だ」
語られたのは、偽らざるアカギの本音だ。見知らずの異世界で大きな不自由なく活動できているのは、様々な面で『カネツグ』の支えあってことだ。
「寧ろ、お前には感謝しかない。もしそれでもお前に過失があるというのなら、それは俺達の過失だ。後々二人で挽回すればいい」
《担い手様・・・・・・分かりました。齢五百にも満たない若輩の身なれども、背中を任せられた者として、微力を尽くします!》
意気高く奮起する精霊に苦笑しながらアカギは、しかしと呟き思考を切り替える。
「ここまであからさまな手で介入してくるか、余程俺達を勝ち上がらせたくないらしいな」
おそらく大会運営委員会が描きたい未来図は、決勝戦でぶつかり合う、王座奪還を目指す《グランドチャンピオンズ》と前大会優勝チーム《グレイヴバルチャー》の大一番。
一回戦、ネイキッド状態で五人抜きしたアカギを警戒し、数の不利を押し付け潰すために運営はこのような暴挙に出たのだろう。相手が出場枠を五人分購入していた場合、アカギとケビンだけでは、それぞれの試合でどれだけ圧勝しても出場枠の関係から三回の不戦敗が確定する。《ウェット・ファイターズ》の弱点を、運営は的確に突いてきた。
「『カネツグ』こうなってしまえば、アレを使うぞ。出来れば温存しておきたかったが、背に腹は代えられない」
《心得ました。どのチームが優勝するに相応しいか、運営委員会は誰に喧嘩を売ったのか、公衆の面前で詳らかに宣言してやりましょう》




