表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/75

19


 人の(かたち)をした大輪の華のように、その精霊は艶やかだった。

 霊力で以って、編み上げたであろう鮮やかな黄色が映えるドレス。春に芽吹いた深緑の豊かさを思わせる緑の瞳。

 花の精霊という言葉がしっくりくる。

《初にお目にかかります、『戦士』アカギ様。私は、大精霊のハリオン。世界(システム)側に属する精霊です。以後お見知りおきを》

 それは、一切澱みの無い見事なカーテンシーであった。スカートの裾を摘まみ上げる指先から美しく、品格と礼節をごく自然に体現していた。

 礼儀作法とは、社会秩序を維持するための行動様式だ。それに通じているということは、ハリオンなる精霊は人間の文化や文明に関する知識を多少なりとも有することを指し示していた。

《本日はクエストに関して少々お話があり、参った次第。歓談の最中、不躾とは存じますが、お時間よろしいでしょうか?》

「構わない」

 座していた貨物ブロックからMRVの脚へと軽快に飛び移り、アカギはハリオンの前に着地した。親指を立て、それを背後の少女へ向ける。

「ただし、エマも一緒にだ。今回の騒動の渦中にいたんだ、彼女にも話を聞く権利はある」

《はい、勿論了承いたします》

 精霊が頷くのを確認するとアカギは、操縦席から顔を出し眼を細めて精霊がいる方向を凝視するエマに声を掛けた。

「エマ、見えているか?」

「えっと・・・・・・多分、状況から察するに、いる(・・)んですよね、そこに。何となくいることまでは分かるんですけど、殆ど見えないです」

 レベルアップ現象で《霊核基幹》が成長したとは言え、エマの感応能力は未だ発展途上。隕石の精霊のような極星に限りなく近い極大精霊級なら観測できても、大精霊級はまだ霊視できない。

《全く、しょうがない小娘だ。汝の端末にリアルタイムで相手精霊の座標と、姿、声を疑似的にデータで再現したものを送る。網膜投影で確認しろ》

「流石『カネツグ』さん、いい仕事してます!」

 喜びの声と共に、エマは座席から飛び降り、『戦士』の横へ並んだ。

 いつの間にか親密さが増した二人を優しい眼差しで見つめると、アカギは精霊へ首肯した。準備が整ったこと確認したハリオンは、口を開く。

《ではまず最初に・・・・・・アカギ様、クエスト:『故郷への帰還』の達成おめでとうございます!》

 空気が、祝福の音を奏でだす。

 大精霊の指示で極小精霊達が、音楽団の様に空気を振動させて短いファンファーレを響かせる。

 数百年ぶりに聞いたその音は、アカギの嘗ての旅路でもクエストを達成する度に流れていた定番の曲だった。

「この祝い方は、エクセリアと同じなんだな」

《はい、様式美のようなものなので。続いて、成功報酬をお渡しします》

 ハリオンがアカギの手を上品な仕草で取ると、掌を軽く撫でる。すると、いつの間にかそこにはアイテムが出現していた。

 《しんぴのおうけん》。

 形状的には鍵。水晶から削り出したかのように透明で、内部にはある種の一定の法則に従った回路が幾つも走っていた。

 《さいごのぎんけん》という鍵型のアイテムをアカギは既に所持してるため、おそらくは鍵かそれに類するものであるとアタリは付けていた。

 ただ、アカギの鑑定眼では解析不能。鍛冶師としての勘から、武器や防具など戦いに関するものでないことは分かるが、逆にそれ以上は読み取れない。

「これは、何に使うアイテムなんだ?」

 率直に、アカギは目の前にいる精霊へ尋ねると、ハリオンは申し訳なさそうに頭を下げた。

《すいません、私は世界からそれをお渡しするよう仰せつかっただけでして、その効果や使い方までは存じておりません。ただ、決してアカギ様を害する類のものでは無い事だけは保障いたします》

「分かった。それだけ聞ければ十分だ。後は、自分で調べてみる」

 アカギは、新たに手に入れたアイテムを《オロチぶくろ》に収納すると、改めてハリオンへと視線を向けた。

「幾つか、聞きたいことがある」

《はい、世界(システム)側からも信頼関係の構築の為にも、極力質問には答えるようにと、仰せつかっております。私の裁量の及ぶ範囲でしたら、何なりとお答えしましょう》

 アカギが最初に投げかけたのは、今後のクエストに対する方針を決める上でも、避けては通れない最も重要な事項であった。

「俺が依頼を受けたクエスト、その目的はエマを殺す事。相違はあるか?」

《肯定します》

 精霊が、言葉を紡ぐ。

《既にご存じかとは思いますが、エマ様は魔王に覚醒する因子をお持ちでした。故郷の壊滅、家族の死を知った場合、因子を暴走させ秩序の安定に悪影響を及ぼすことは明らか。よって、世界はアカギ様にクエストを出しました》

 その内容は、隕石がマーズマを直撃するまでにエマをそこへ送り届ける事。

 このクエスト、実のところ成功しても失敗しても、世界側からすれば問題を解決することに繋がる。

 成功すれば、マーズマ本星ごとエマを葬り去ることができる。失敗しても護衛対象として指定した以上、暴走状態のエマの近くにはアカギがいる可能性の高い。黒の支配へ対抗手段を持つ『戦士』ならば、魔王化し暴走した少女を止める為に討伐する。そういった筋書きであった。

 自身の殺害計画の詳細を知っても、少女の心は酷く冷めていた。

「最大多数の最大幸福。1人を犠牲(コスト)に99人の幸福を実現する、社会機構。この場合、世界機構って呼んだ方がいいんでしょうか」

《言い訳はいたしません。今のエマ様ならば、精霊であろうとも殺す事が可能です。私が役目を終えた後ならば、片棒を担いだ者の一人として、この命、献上いたします》

「そんなものいりません。勘違いしないでください」

 軽く息を吐くと、エマは冷ややかに回答する。

「アカギさんの介入がなければ、私はそれこそ暴走以外に道はなかったでしょう。世界側がクエストを依頼したことで、私は可能性を得たと考えることもできます。それでチャラです。ですので、今回の件に関しては、私から言うことは何もありません」

《寛大な対応、ありがとうございます》

「でも、忘れないでください」

 黒が、溢れ出す。

 エマの意思を表現するように、その場に溢れていた生命の息吹を丸ごと飲み込み、範囲内にいた動植物達の生命活動が一時的に停止する。しかも、アカギだけはその対象から除外されており、能力を完全に使いこなしていた。

「もしも・・・・・・もしも、今後世界が私の大切なモノに手を出すなら、私は99を犠牲にしてでも、1でしかない私の護りたいモノを護り抜きます。99の犠牲には、世界側も含まれているので、お忘れなく」

《・・・・・・いいでしょう、世界にも報告しておきます》

 精霊には、発汗などの新陳代謝機能はない。ただ、ハリオンは人間社会や人間の性質に関する情報を知り得ており、知識に引きずられる形で自身の額から冷や汗が流れ出る錯覚を覚えた。

 意思表明を終えると、エマはあっさりと支配権を手放し、場を開放する。

「エマ、もういいのか?」

「問題ありません。向こうがやる気ならこちらもそれ相応の対応をするまでです。それに、何時までも過去に拘っていては未来は望めません。折角、珍しい能力を得たんです、これをどう有効活用するかを考えた方が、有意義です」

「成程、君らしい答えだ」

 アカギは、エマの頭に手をやろうとして、止める。仮にも、覚悟を決めて前に進みだした少女を子供扱いしては、流石に失礼ではないかという思いが、定位置に置こうとした手を動かなくしていた。

「いいんですよ」

 エマは、アカギの手を愛おし気に取ると自らの頭に載せた。

「私、アカギさんに頭を撫でてもらうの、嫌いじゃないです。それに、今はお子様扱いや単なる庇護対象でも、3年以内にその認識は塗り替えられますから」

「は、ははは、随分と具体的だな。――――3年後、俺はどうなっているんだ」

 目標を述べるのではなく、確定事項として語る少女に、頼もしさと恐ろしさ、その他様々な感情を抱きながらアカギは、エマの頭を撫で乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

 頭を振って気持ちを切り替えながら、『戦士』は続けて花の精霊に問いかけを行う。

「次の質問だ。俺をこの世界に呼び寄せたのは、世界側の手配か?」

《否定します。アカギ様にクエストが依頼されたのは、あくまでも、クエストを受信できる権能を持ち尚且つ達成に必要な能力を備え、エマ様と接触可能な距離にいたのが、偶々アカギ様だったからに過ぎません》

 それは、あまりにも出来すぎた話だった。作為的すぎる程に。

「……随分と、俺は都合のいい人材だったんだな」

《そう思われても仕方のない状況ですが、誓って世界側は、転移に関与していません。エマ様の状況に関して、もうどうしようもない段階になって、突然現れたアカギ様にお力添え頂いたまで。ですので・・・・・・》

「俺を、元の世界に還すことは出来ない、と?」

《肯定します》

「分かった。元々、こちらの世界で『勇者』を探すつもりだったからな、しばらくは俺も帰るつもりはない。方法は、自分で探す」

 アカギが精霊からの会談を受けようと思ったのは、エマに心の区切りを付けさせるためだ。

 報酬や、帰還に関する方法は余禄でしかない。

《アカギ様、こちらからも提案がございます》

 ハリオンは、アカギ側の質問が終わったのを察すると、深く腰を折り新たな議題を提示した。

《今後も、どうか世界側から依頼されるクエストを達成しては、もらえないでしょうか?》

 その声に、アカギは怒気を(みなぎ)らせた。

「断る」

 仮にクエストを達成できず、エマが暴虐の化身へと堕ちた時、元に戻す方法がないなら世界の予測通りアカギはきっとその『魔王』を討伐していただろう。世界の安寧、人々が安心して生きていくために、それを乱す存在を討たねばならないという考えは、アカギにも分かる。『勇者』達との旅も、始まりは『魔王』を討伐すること目的だった。

 だが、エマは、家族や故郷の為に懸命な少女でしかなった。

 将来的な不安要素は考慮し、対策は必要だろう。

 しかし、可能性があるというだけでその命を無下に刈り取るこの世界のやり方を、『戦士』は決して認めない。

「俺は、お前達が信用できない。この件に関してこれ以上言及するなら、この場で実体化できないレベルにまで刻む」

 黒の力など、必要ない。その視線、その言葉、その姿勢だけで、アカギは花の精霊を威圧する。不可視の力に押されながらも、ハリオンは己の使命を胸に声を絞り出した。

《……まずは、報酬をお聞きください。それから判断しても、遅くはないかと考えます》

 宣言通り、アカギは刃を閃かせる。

 『カネツグ』七変化が三、《スコール・ファング》。精霊殺しの剣。

 響いたのは、金属音。

 ハリオンの手に握られた一振りの剣。力強く勇ましい龍の意匠を持つ剣が、『カネツグ』の刃を受け止めていた。

 『戦士』の技量ならば、武器ごと精霊を断つことなど造作もないこと。それでも、その剣を前に、アカギは手を止めざるを得なかった

「何故だっ・・・・・・」

 内心の動揺を隠そうともせず、少年は叫んだ。

「何故、お前が・・・・・・《勇者の剣》を持っている!?」

 ハリオンが握る剣こそ、アカギが命を賭して鍛え上げた至上の一振り。

 オリハルコンなど二度と手に入らぬ希少な素材を惜しみなく投じ、鍛冶師としての心血全てを注ぎ込むことでようやく完成した、史上最強の剣。

 『勇者』共に姿を消し、数百年間行方不明だった武器が異世界にてその姿を現していた。

《生憎ですが、その問いに関して回答することは、許可されておりません》

 ドレスを翻し、ハリオンが鍔迫り合い状態から身体ごとアカギへ突進する。普段ならば、力一辺倒の業無き技など如何様にも『戦士』は捌ける。心技体が、揃った状態ならば。

 両足が宙へ浮く。力を殺しきれず、アカギは猛烈な体当たりに突き飛ばされた。

 人外ならざるアカギが人外と真っ向から競り合えるもの、三位一体が成立してこそ。ハリオンの単純な膂力は隕石の精霊以下であろうが、千々(ちぢ)に乱れた心ではそれさえ対応することができない。

 アカギは、地面に叩きつけられた身体を無理矢理起こすと、腹の底から叫んだ。

「いいから答えろ!その剣を、何処で手に入れた!」

 精霊は、その必死の呼びかけも黙殺し、努めて冷淡に告げた。

《五つです。今回のクエストも含め、五つのクエストを達成していただけたならば、報酬として……》

 その言葉は、アカギを大きく揺れ動かした。



《アカギ様を――――『勇者』に会わせることを、お約束します》



 その名を聞いて回顧したのは、屈託のない笑顔。

 いつも仲間達の先頭に立ち、冒険の先導者だった。その背中を追って、アカギはここまで歩いてきた。

 『戦士』アカギの原点にして、目指したもの。

 それが、『勇者』だ。

《この世界に不慣れなアカギ様を利用し、エマ様を殺させるよう仕向けた事に関しては、謝罪し、こちらの落ち度とします。誠意として、今後の発注するクエストは、無知なる者を危険性のみで判断し、意図的に殺害させる内容でないことを約束しましょう》

 去り際もまた、花の精霊はカーテンシーで礼を行う。

 益々のご活躍を祈念いたします、そう言い残しその姿は消え去った。




 太陽が南中し日差しが陰り帯びてきても、アカギはただぼんやりと空を見上げていた。激昂していた先程とは違い、静かな凪。

 激情を腹へ消化する(すべ)は、加齢と共に学んできたはずだが、我を忘れ衝動のままに行動した己を、アカギは恥じた。

 胸の内で渦巻く感情を、呼吸と共に吐き出す。

 思考を明瞭にし、アカギはエマへと振り返った。

「すまない、醜態を見せたな」

 少年の背後で、何故か少女は顔を朱に染めながら両の手をくの字に曲げ、指先をワキワキと痙攣させていた。見ようによっては、それは抱き着く前の準備動作ともとれる、不格好な体勢であった。

 アカギと眼があった瞬間、エマは恥ずかしそうに両手を後ろへ隠した。

「い、いや、これはその、セクハラとかそういった意図ではなく、アカギさんがお辛そうだったので、どうすれば良いかと考えた結果、昔、母上がしてくれた様に抱擁でその心を少しでも癒せるならばと行動に移そうとした次第でありまして・・・・・・」

「ありがとう、エマ」

 自然と頭へ置かれた分厚い手に、エマはまたも赤面する。

 アカギは、真剣な眼差しで少女の瞳を覗き込む。

「こんな色気もないような場面で申し訳ないが、君の告白に対する俺の回答を聞いてくれ」

「は、はい!」

 少女は、嘘偽らざる覚悟を見せた。

 だからこそ、少年も、同等のものを返す義務がある。

「すまない。君の気持は嬉しいが、俺は応えることができない」

「それは・・・・・・『勇者』さんの事があるからですか?」

「ああ、そうだ」

 ここ一週間考え続け、先程の会談を経た事で嫌と言う程に理解させられた事実を、アカギは口にする。

「俺という存在は、『勇者』から始まった。行動や思考の起点には、いつも『勇者』がいる。だから、そのことを放置したままでは、俺は後にも先にも進めない」

 アカギという存在を構成する要素で、『勇者』の存在は非常に大きい。人間は、大なり小なり互いに影響し合って生きている。誰かの生き方や、考え方に影響され学ぶことは、誰しもが当たり前に行っている。

 ただ、アカギの場合、対象が造物主であっためその比率があまりにも肥大化しすぎた。もはや、人生の全てと言い換えても過言ではない程に。

「俺は、『勇者』にもう一度会う。ただし、それは依存し盲従するためでなく、俺の人生にケジメを付けるためだ。そうして初めて、俺は自分の人生を歩める」

「アカギさん・・・・・・」

 頼もしい厚みのある手が、少女の頭から滑り落ちる。

 『戦士』は、エマに背を向けた。

「ここまでだ。俺は、君の隣を歩けない。ここから先は、君自身の道を行くんだ。大丈夫だ、クエストに打ち勝った君は強い子だ。周りには君を愛してくれている家族もいる」

 振り返ることなく、アカギは未練を断つように言葉を漏らした。

「不謹慎かもしれないが、君との冒険は本当に楽しかった。・・・・・・ありがとう」

 決意を胸に、アカギは前へ進む。

 『勇者』と再会する鍵は、間違いなく世界が握っている。世界と関わるにはクエストを達成していく必要がある。理不尽な理由で命を奪われかけたのだ、もうこれ以上エマはクエストに関わるべきではない。

 アカギの個人的な問題に、少女を巻き込むわけにはいかない。

 そして、『戦士』は腰から回された細腕に拘束された。

「は?」

「――――――――逃がさないって、言いましたよね?」

 少年の背筋を走り抜けたのは、驚愕か恐怖か。あるいは、両方。

 暗殺者もかくやと言う程の静音動作で忍び寄り、エマはアカギの腰に両手を回していた。

 そこに、力は込められていない。少女の細腕を振り解くなど、造作もないことのはずだが、何故か『戦士』は全身を鎖で縛られ、心臓を鷲掴みされている感覚を得た。

 思い出したのは、昔誰かが言っていた言葉。

 大魔王からは、逃げられない。

「アカギさんが、『勇者』さんに会えなければ先に進めないとおっしゃるなら、私はそれを全力でサポートします。欲しいと思ったものを簡単に諦める程、私の欲望(おもい)は小さくないです。ケジメを付けて、その上でもう一度答えを聞かせてください!」

 その切なる叫びは、独りの道を進もうとしていた『戦士』の(もう)(ひら)かせた。星々が夜の大地を照らし、道は一つではないことを教えるように。

 諦観、安堵、不安、懐旧、様々な感情を綯交(ないま)ぜにした苦笑で、アカギはエマに振り返った。

「……分かった。協力してくれ、エマ」

「はい!」

 その笑顔は、夜空のどんな星よりも輝いていた。




 数日後。

 宇宙へと旅立つ《シルバー・セブン》を、フラメル王国の王族や王宮に勤めている者達は総出で宇宙港の展望デッキから見送っていた。隕石を止めたのがアカギとエマであることは内密にされ、少年の活躍を知る者は少ない。それでも、せめて感謝だけは伝えようと、多くの者が巨大な旗を何本も振りかざし、その旅路の安寧を祈っていた。

 エマは、マーズマに残った。

 何も、ずっと一緒にいるだけが仲間でない。

 離れていようとも、繋がっている。

 胸の内に宿った感覚は、物理的な距離なども物ともしない。

 エマにはエマで、彼女にしかできないことがある。

 それを成す為に、少女は進んで残留を選んだ。

「父上」

 白銀の剣を静かに見つめるオーギュスト王に、エマは声を掛けた。

「聞いていただきたい話があります」

「ああ、分かっている」

 鷹揚に頷く父に、娘も応じる。

「連盟からの、脱退についてです」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ