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リハビリを兼ねて、久しぶりに書き始めました
その日は、『戦士』にとって何ら変わらない日だった。
朝早くに起床。『戦士』に家族や血縁はない。眠る時と同じく、目覚める時も一人。
身支度もそこそこに、山奥の小屋から出ると、周囲の山々を軽く一周する。『戦士』にとっては、慣れた道だ。小屋を設置した当初は獣道でしかなかったが、『戦士』が踏みしめ続けた結果、今では馬車が通れる位の道幅になっていた。
帰宅後は、風呂で汗を流して朝食。そしていつもの様に、太陽が真上に登るまで愛用の剣で素振りを続ける。
食事、訓練、睡眠。
必要な行為を必要なだけ繰り返しながら、その中で常に己を鍛え磨き研ぎ澄ましてく。
『戦士』が小屋を設置してから、人であればたとえそれが長寿の種族であっても、心も体もとうに朽ち果てる年月が経過していた。
ただ、『戦士』は生まれ時から『戦士』であり、『使徒』である。寿命はない。
不死ではないが、不老。外的要因で身体を大きく損傷するか、条件が満たされるまでは、肉体は常に最盛期の十代後半から二十代前半の状態で保全される。
それが、『勇者』の権能・《使徒作成》によって誕生した『使徒』の性質だ。
嘗て、『戦士』は『勇者』に率いられ、世界を支配しようとする『魔王』打倒の為にエクセリア中を旅していた。山海は言うに及ばす、鏡面世界のワイストンや神々の領域までも渡り歩いた。
長い長い旅路の果て、『勇者』一行は遂『魔王』を退け世界に平和を取り戻した。
その後も、魔王城よりも過酷な無限回廊の深淵に隠れ潜む『虚空界座』さえも滅ぼし、世界中に散らばる数々の財宝や珍品を収集し続けた。
『勇者』が突然、姿を消すその日までは。
これまでも、ふらりといなくなり何食わぬ顔で数日後に戻ってくることは何度もあった。
だから、待っていれば『勇者』は必ず戻ってくると『戦士』は信じて疑わなかった。
一日。十日。百日。千日。一万日。十万日。
どれだけ待っても、『勇者』が帰ってくることは無かった。
その日は、『戦士』にとって何ら変わらない日だった。
だから、『戦士』は待つことを止め、一人で旅立つことを決意した。




