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ピース

作者: 玄米茶


ボヤァ。パチ。目が覚めた。

ザァー。ポツポツ。今日は雨か。

チラ。今はまだ、朝の4時。


早く起きすぎた。だけどもう寝られない。9時から学校だから8時半には家を出る。8時には準備を始める。それまであと4時間。雨だから散歩は行けない。釣りも行けないな。

ふと思いついた。誕生日に母からもらったジグゾーパズル。こんな歳にもなってジグゾーパズルか、と思ったが、こんな時のためのものだったか。400ピースのパズルで、完成すると大きな一本の桜の木になるようだ。全てのピースを机に出す。角や側面になるピースから合うものを見つけ、枠組みを作っていく。徐々に中を埋めるように枠を太くしていく。

時間は知らないうちに流れる。すでに朝6時半。ピースはあと3分の1程度になった。ここまでくればあとは簡単だ。黙々と作業を続ける。朝7時半。ピースは残りわずか。パチ、パチ、パチ。手を止めることなくピンズをはめていく。

残りのピース、あと3つ。あれ、おかしい。1つ足りない。残りの3つのピースをはめる。やっぱり。桜の根元のピースが1つない。これではパズルが完成しない。あたりを探し回るが見つからない。服のポケットも布団の中もベッドの下も机の下も棚の中まで全て探す。だが、ない。

ジリリリリ ジリリリリ。目覚まし時計が鳴る。しょうがない。諦めて学校へ行く準備をしよう。

服を着替えて洗面所に行き、顔を洗って髪を整える。リビングに行くと、母の作った朝食がテーブルの上に置いてある。メモも一緒だ。

《朝ごはん、温めて食べてね。

お母さんは仕事行ってきます。

帰りも遅くなると思う。ごめんね。

学校、行ってらっしゃい

母より》

白米と焼き鮭を温め、味噌汁を器によそう。テレビを付けて天気予報を見ながら朝食を食べる。今日は午後からは晴れる予報だ。

食べ終えた食器をシンクに持っていき、軽く流してから食洗機に入れる。洗剤も入れてボタンを押す。洗面所で歯をみがき、鏡で全身をチェックする。黒のスキニーにカーキのTシャツ。今日も至ってシンプルだ。黒のリュックサックを背負って家を出る。 学校に着くとそのまま教室に向かう。友達と合流し、授業を受ける。

いつも通りの1日が過ぎ、時間はもう16時。早起きしたせいでかなり眠い。目薬を出そうとリュックサックのポケットに手を入れる。あれ、これは、まさか。手に角張った薄いものの感触が伝わる。目薬のことを忘れ、それを出す。焦げ茶色のピースが1つ。朝探していたものだ。じわじわと驚きと喜びがこみ上げる。ハッとする。パズルの最後の1ピースを全く諦められていなかった自分がおかしい。くつくつと笑いがこみ上げる。遠くにいた友達が変な目でこっちを見ながら寄ってくる。

「何1人で笑ってんだ。珍しいな。そういえば今日あいつらと焼肉行くけどお前も行くだろ」

家に帰ってもひとりきり。普段なら滅多に断らない誘いだ。でも、今日は違う。

「悪い、大事な用事思い出したから今日はやめとく」

さぁ、早く帰ろう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 白米と焼き鮭を温め、味噌汁を器によそう。 [一言] 玄米茶は、けっこう、飲んでます。
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