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WEB(巣)

安心できる草むらを見つけて、ゴローは今日の寝床を決めました。


最近は、木の実の多い所に住むルミちゃんに合わせて昼の行動をしていたので、この時間は起きているのですが、昨夜は移動をしたので直ぐに眠くなりました。

眠るゴローの近くの一番高い木の上にカオリは巣を張ることに決めました。


と、言っても、朝ごはんの為ではありません。


異界の生き物でもあるカオリは、巣を張ることで情報を集める事が出来るのです。


高い木の上から、巣の縦糸を命綱(いのちづな)に尻から出しながら、すぐ隣の木に飛びうつり、次の縦糸を張ってゆきます。

しばらくすると、見事な蜘蛛の巣が出来上がりました。


カオリは巣の仕上がり具合に満足し、少し離れた日影の部分に逃げ込みました。


お日様は少しづつ空を登り、紫外線が見えるカオリの目には、ユリの谷が深い青赤い霧に煙ぶるようにみえました。


「やはり、私も呼ばれたのかね…。」

カオリは、何も考えず気持ち良さそうに眠るゴローを見ながら呟きました。


広げた巣は、情報を集めだします。


少しすると、今年はとても変わった一年だとわかりました。


もうすぐ、月神様の夏至の御渡りだというのに、入道達の奉納相撲が無いのです。


夏至の少し前、いつもなら、北の入道と南の入道が、その年の気を集めて、どちらが強いか争うのです。


奉納相撲は、猛々しく、入道たちがぶつかると、空気が裂け、雷がおち、激しい雨が山々を人里を満たして行くのです。


しかし、今年は、北の入道がこの大地に座り込んで相撲をとろうとしないのです。


南の大蛇が、この暑さで沢山の卵を産み、とぐろを巻いた一つ目のチビ蛇たちが、お腹を空かせて、この森や人里に来ようとしていました。


北の入道は、それらを嫌い座り込んだまま、相撲をとろうとせず、その為に日照り神が世界で舞い躍り、土も木々も人たちも暑さで疲れきっていました。


「確かに、主さんのご先祖様は、日照り神を退治したらしいけれど、役にたつのかねぇ…。」

カオリは気持ち良さそうに眠るゴローを見ながら不安な気持ちになりました。


月神様の御渡りの前に、奉納相撲をつつがなく終わらせないといけません。


その為に、役にたちそうな月の従者は全て駆り出されているようです。


カオリもまた、死者の国にすむ、月神様の従者です。


そうとは知らずに、このユリの谷にゴローを案内する役目をもらっていたのかもしれません。


古代の儀式をはじめるとして、何も知らないゴローの役割としたら、


カオリは嫌な予感がしました。


昔の神様は、力を使うために生け贄を要求するのです。


カオリは、ゴローの行く末が少し心配になってきました。


沢山の情報を集めなければ!


カオリは、自分の巣に張り付いて行く情報を、前足で探りました。


この一晩で、カオリはゴローの事が好きになっていたのです。


不気味な姿の彼女は、とかく、嫌われものでしたが、ゴローは怖がりはしても、カオリを嫌うことはしなかったからです。


それに、雄熊の作る「男のビーズ」にもちょっぴり興味がありました。


生け贄なんて、絶対に阻止しなければ。


カオリは、用心深く巣を見回して、意外なものを見つけました。


カオリの妹に当たるマナの情報でした。


マナは、最近生まれた、末の妹で、アラクネ属では珍しい光の属性を持つ妖怪でした。


WWWという、電子の糸で、大きな巣を世界に広げる巨大な雌蜘蛛なのです。


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