ノウサギのチュウタ
みなさんは、冬至という言葉を知っていますか?
冬至とは、一年で一番夜が長い日のことです。
この日をさかいに、夜は少しずつ短くなり、春がやって来るのです。
お祭りする人も世界でもたくさんいて、日本でもカボチャを食べたり、柚子を入れたお風呂に入り、無病息災を祈るのです。
さて、この冬至の日を待ち遠しいと思うのは、人間だけではありません。
雪国の小さな森に住む、ノウサギ達も指折りかぞえて待っているのです。
冬至はノウサギ達の祭りの日なのです。
この日、ノウサギは踊り、歌い、この年の年うさぎを決めるのです。
年うさぎに選ばれると、冬至の初めの満月の夜、雪女と冬将軍のコートを作る栄誉を与えられます。
それはとても、凄いことで、年うさぎと雪女だけが、なかなか見ることの出来ない冬将軍にお会いできるのです。
冬将軍と聞いて、日本のお殿様を想像してはいませんか?
いえ、いえ、違います。
冬将軍とは、海を越えたロシアと言う国の妖精で、冬の満月のような金色の長い髪に、北極の氷河のような白く輝く肌、シベリアの冬の青空のような、冷たいなかにも柔さかさを含んだ優しい眼差しの美青年なのです。
あまりの美しさに、見とれた者は、あっという間に氷に変わってしまうのですが、雪女とコートを渡す年うさぎだけは、魔法のちからで、冬将軍のお顔を見ることが許されるのです。
小さな森の、ノウサギの末の弟、チュウタは今からワクワクしていました。
今年こそ、自分が年うさぎになろうと決めていたからです。
毎年、年うさぎに選ばれた兄さんや姉さんが、ため息をついて、
「なんて素敵なひとなんだろう。」
と、半分の月が真ん丸になるまで呟いているのですから、冬将軍は、本当に美しいに違いありません。チュウタはその姿が見たくて、見たくて、たまらなくなりました。
春からタンポポを相手にジャンプの練習をしたり、
夏には、川のせせらぎと歌の練習をしたり、
秋には、赤い落ち葉とダンスの練習をしました。
去年より、歌もジャンプもダンスだって、いっぱい上手になったはずです。
チュウタはノウサギですが、越後という国のノウサギなので、普通のうさぎと違って、
暖かい春から夏にかけては茶色い毛
寒くて雪の降りだす秋から冬にかけては、それは美しい白い毛に変身するのです。
それは、日本海と呼ばれる海のある寒い地域の、特別なノウサギだけの能力なのです。
「我々だけが、冬将軍をお迎えするために選れたあかしなんだ。」
チュウタのおじいさんは、そう言っていつも自慢をするのでした。