挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。
<R15> 15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

短編・考え中

異世界が先か神殺しが先か

作者:しゅん
連載にするか迷ったものの一話のつもりで書きました。
よければアドバイス下さい。
「あら、目が覚めた?」

定まらない焦点で見たのは暗闇だった。
何故か動かない手足も痺れた頭じゃ原因も考えられず、おまけに俺が右か左かどっちを見てるのかも分からない。
聞こえてくる低めの女声が痺れた頭にねっとりと絡みつくようで、足元からスルリスルリと蛇に絡まれるような不思議な感覚に見舞われた。

「そんなに蕩けちゃって、まだ寝惚けてるの?」
「ここ……どこ?」

姿の見えぬ声に答えを求めた。

「ここはあなたの知らない世界。あなたがいた世界とは別の、いうなれば異世界」
「体が動かない」
「そういう薬を飲ませたから」
「薬?」

かかっていた靄が少しずつ晴れるようにして意識もはっきりし始めた。それにつれて昨晩の出来事も思い出しつつあった。
そう、それは成人祝いに連れてってもらった居酒屋だ。

「思い出してきた?」
「あんた……鴉図先輩か?」
「正解」

鴉図燿。俺の通う大学の二つ年上の先輩。学年でいえば一つなのは彼女が一浪してるからだ。
そんな先輩を形容する言葉は主に三つ。
一つ目は濡鴉のような髪と雪女のような肌を持ち合わせた美貌から、美しい。
二つ目は妖艶な表情や豊満な胸、それとは大局的なウエスト。太ももはその道のプロを唸らせるほど。そこから来た、妖しい。
三つ目は俺と他数名しか持ち合わせてない印象。彼女が怪しくも美しいことこの上なさに恐怖を抱いたことから、恐ろしい。
彼女を説明するならこの三つで事足りる。文にするなら、美しくも妖しくそして何よりも恐ろしい、でまず決まりだ。

「問二、私はあなたにどんな薬を飲ませたでしょうか?」

体が動かない、と言うよりかは力が入らない。
そんな強力なのがあるかどうかは知らないが、俺の偏った知識じゃその程度の答えしか出せない。

「筋弛緩剤」
「ハズレ。じゃあ罰ゲーム」
「は?」

光が一切ない暗闇の中では何をされるのかもわからず、たとえ分かったとしても力を入れれば入れるほど力が抜ける体では抵抗なんて出来なかった。
感じたのはひんやりとした十本の指。俺の気道を塞ぐようにして首にそれられたその両手が何をするのか、考えるまでもなかった。

「この問題は羽色君にはちょっと難しかったかな。答えは、逆転薬」

何だそれは、そう問いただそうとした瞬間首を思い切り握りしめられ声を出すどころではなくなった。
苦しさのあまり意識はもがこうとしてるのに体はピクリともせず、それどころか力が無駄に入った分だけ抜ける始末。何も見えいくせに目の前が白黒し始めた頃、ようやく開放された。
噎せながら全力で新しい酸素を取り入れること以外何も出来なかった。

「この薬は異世界の薬だから羽色君は知らなくて当然だよ」
「ふざ……けんな」
「問三。ここは羽色君の知る世界じゃありません。魔法はあるし魔物もいる、ルールがまるで違う世界で羽色君どうすれば生きれるでしょうか?」
「そもそも異世界じゃない」
「ハズレ。証拠に痛みを再生する魔法をかけてあげる」

赤い光が彼女の指先に点った。微かに見えた顔はいつも通りの微笑んだ顔で、それがなおのこと彼女の狂気を際立たせるようだ。
赤い指先がゆっくりと俺の額に押し当てられる。その瞬間俺の鋭い痛みが俺の腹部を襲った。それだけに留まらず動かないはずの右手は押しつぶされるような、左足は炙られるような多種多様な痛みが身体中を組まなく駆け巡り、けれどやはり体は動かない。

「ハイおしまい、少しは信じる気になった?」

途端に消え去った痛み。さっきまで嘘のように何も無い。

「ちなみにさっきの答えは、私と一緒にいる、だよ。私なら羽色君を何からでも守ってあげられるから」
「なら解放しろよ」
「……問四。羽色君の恋人は誰?」

もう何となくわかっていた。
ここが異世界かどうとかは別にして、目の前のクソ女がやらんとしてる事もこの問いの答えもなんとなく察しがついていた。
腕を切られたり爪を剥がされたり歯を抜かれたり、全部感覚だけだけど同じ目にあいたくなかったら彼女の望んだ答えを言わないといけない。そんなことはすぐに察した。
それでも俺は答える気は無い。

「居ねぇよ」
「ハズレ」

普段の先輩がなぜ怖く感じたのか。目の奥に人の光が見えなかったからだ。それも俺が老若男女問わず誰かと親しげにしていると顕著に見れる。
その時の目と言い雰囲気と言い、それこそ睨んだだけで人を殺せそうなほど。
何というかまとわりついてくるんだ。殺意という殺る気と言うか、そういうもろに体の芯に来るようなのがまとわりついてきて気持ち悪くて、その上表情にはおくびも出さないから目だけが殺す気で怖い。
多分、今そんな目をしてるはずだ。

「賢いあなたなら答えは分かるでしょう?」
「居ない奴の名前なんて答えられない」
「そう……もう一度問うわ。それで間違ったら残念だけど変わってもらうわ」
「変わる?」
「人格をね。あなたの恋人は誰?」

今一度考えろ。まるでリターンのない二つの選択肢を突きつけられた時何が判断基準になるのか、そしてそれ間違いなくリスク。
リスクとリターンがいつでも釣り合ってる訳じゃない、むしろリスクばっかり重い時の方が多い。そん時はリスクの軽い方を、負けて負わされる何かがより軽い方を選ぶべきだ。
ならこの問の答えは分かりきっている。

「居ねぇよ」

こんな奴の恋人だと気持ち悪い言質を取られるくらいなら自分でなくなった方が何億倍もマシだ。

「そう……じゃあ仕方ないわね」
「は?」

そう言うと暗闇が晴れ、視界の先には満天の星空と鴉図先輩の姿が現れた。同時に動くようになった体を必死に使って後ずさるようにして逃げようとした矢先、今度はさっきまでとは違う、何方かと言えば金縛りにあったようにまた動かなくなった。
俺の入る草原に吹き付ける風がやけに爽やかで、先輩の髪を揺らす。真っ赤な瞳がこちらを見つめてくる。

「立ちなさい」

声と同時に抗えない何かの力が俺を立たせた。

「私ずっと考えてたのよ」
「何を……ですか?」
「多分言っても信じないだろうけど、私神様なの。それもそれなりに力のある」

すぐそこまで迫った先輩は、俺の首を絞めた手で俺の頬を撫でながら言ってきた。もう一方の手は俺の右手に絡みついて離してくれない。

「でも退屈でこの世界抜け出して君の世界に行ったの。そしたら妙に目付きが悪くて全然懐かない下等生物がいるからついちょっかい掛けたくなってね」
「いい迷惑です」
「私ね、控えめに言って羽色君を愛してるの」

耳元で囁かれたからなのか、それとも内容がそうさせたのか、ともかく背筋がゾクリとした。

「でも私とあなたじゃ寿命が違う。近いうちに別れ離れになるのもわかってた。じゃあどうしたらいつまでもあなたの記憶の中にいられるのか、答えは簡単だったわ」

どこか楽しげな声は間違っておらず、俺から数歩離れた彼女の顔は愉悦に歪んでいた。
美しくも妖しい、そして恐ろしい。彼女を形容する言葉をこれまでで最も体現してるように見えて、例えるなら計画完遂間近の悪役のような、そういう顔だ。

「あなたが私を殺せばいいのよ」

手渡されたナイフは錆だらけで到底何かが切れるとは思えない。刃毀れもしてるし。
そんな触りたくもないナイフを握りしめさせられた俺は、勝手に動く体を抑えることも出来ずに、彼女の思うがままにそのナイフで腹部を刺した。
想像していたよりもスっと手応えなく入っていく感触も然る事乍ら、とめどなく溢れ出る彼女の血で濡れた俺の手がどうしようも無くおぞましく思えた。
込み上げる吐き気は到底我慢できるものじゃないのに、不思議と吐くことはなく、二度三度と刺した。
その度に彼女が笑った顔で「痛い」と小さく唸る。血塗れの手は赤子を撫でるような慈愛に満ちた手つきで俺の頭を何度も撫でる。

「無理矢理……なのにね、申し訳なく思うんだ」

笑い半分、嗚咽半分、そんな囁き声が耳の中で何度も反響した。

「殺したのはあなたよ」

俺の異世界生活の始まりは神殺しからだった。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
― 感想を書く ―

1項目の入力から送信できます。
感想を書く場合の注意事項をご確認ください。

名前:

▼良い点
▼気になる点
▼一言
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ