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RE/INCARNATER  作者: クロウ
第三幕 泥だらけの直感勇者
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第074話 突破口

 かつてハザマは、ルナから一つの技を教わった。

 月華流剣術・秋ノ型八番『覇付はづき』。それは、得意属性の魔力を身に纏い、留まらせるというもの。

 ハザマはこれを習得し、自分のものにしていた。しかし、一つの懸念があったのだ。

 人から教わった技を使っているだけで、自分は『世界一の剣士』になれるのか?

 多少強くなったところで、あのルナ・アストレアには勝てないのではないだろうか?

 ハザマ・アルゴノートが目指すのは頂点だ。それは、ルナ・アストレアを超えることすら例外ではない。

 いずれ、『師匠』を超えるため。教わっているだけじゃ駄目なのだ。

 自ら考え、教えられる以上に成長する。

 それくらい当たり前のようにやって見せないと、きっと頂点には立てない。


 そしてハザマは、太陽へと手を伸ばして。


「――『炎纏化バーニングソウル


 一度。

 轟、と空気が揺れた。


『おおっと、これは……ハザマ選手の技でしょうか!? リングが、ハザマ選手を中心に赤熱し始めましたッ!!』

『自分の魔力を広範囲に広げて炎化させているんだろうな。……てか、おいおい、ものすごい速度で気温が上がってないか? ただでさえユースティア自治領は暑いってのに!』

『ご来場の皆さんはご安心ください! 炎はリングを取り囲む魔導防壁によって守られていますー! あ、でも気温の上昇は防げませんね。耐えてくださーい!』


炎纏化バーニングソウル』。これまでの『覇付はづき』とは違い、ハザマの周囲五メートル程度まで範囲を拡張したオリジナル技。

 燃える世界は魂の具現化。顕現せし灼熱空間は、際限なくその温度を高めていく。


「──滾るぜ」


 そして、開戦。


『ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ――――ッッ!!!! ハザマ選手の大剣が暴れ狂う!! 炎を纏い、鮮やかなオレンジ色に染まった刀身が残光を引く! まさに燃える流星! 赤き閃光! 怒涛の攻撃が始まったァ────ッ!』


 無数に飛び交う竜狼の刀を回避しながら、あえて本体を狙う。爆熱の方向をコントロールすることで加速を得て、途絶えさせることなく攻撃を連結していく。

 しかし──


『いや、阻まれてる。ありゃおそらく「風」だな? ルインフォード選手の周囲に暴風が吹いていて、剣を全て弾いている。――やべぇな、これ直接攻撃は効かないんじゃないか?』


 解説の言葉通り。猛ラッシュは、ルインフォードが誇る完全無欠の乱気流型【風界】の前に全てシャットアウトされる。


「――ハッ」


 ()()()()()()()()()()()

 分かった上で、ハザマは剣を振るのだ。


「……無意味な」


 ルインフォードはその虚しい努力を斬って捨てた。

 努力でどうにかなるのなら、今頃外大陸は救われている。

 気持ちでどうにかなるのなら、誰もが神に祈りを捧げる。

 ルインフォードから見れば、今のハザマは抗いようのない天災に翻弄される外大陸の住人と同じだった。


 技術、知恵、力。勝負を決するのは感情論ではなく、事実に基づく『勝算』だ。力なき人間は敗北あるのみ。

 ルインフォードが見据えるのはもっと大きなもの(アンドウ・エイジ)。このような一般人に構っている暇はないのだ、と。


「この世に『完全無欠』は存在しねえ」


 ──されど、男は一人独白する。

 傾き続ける勝敗という名の天秤の上で、それでもその男は舞台から降りることだけはしなかった。


「どんなに強いヤツだろうと、必ず隙はある。150連敗しようと、次の一回はあっけなく勝てるかもしれない。完全無欠だと思った奴に訳の分からない攻撃をしたら、あっさり通っちまうかもしれない。そんな意外な弱みを抱えてるかもしれない」


 ハザマはそういう奴を知っているから。


「ああ、一割でも勝てるってんなら僥倖だ。確率は限りなく低いかもしれねえな。だが、勝率がゼロになるのは俺が諦めた時──それ以外存在しない」


 それが。


「――それこそが『喧嘩』ってもんだ」


 四本の刀がハザマを削る。身体のあちこちから血が吹き出し、時折ぐらりと体が揺れる。


「喧嘩? 笑止。そんな低俗なものと一緒にするなよ、人間。己はもっと崇高な目的を持ってここにいる」

「それは御大層なこった! だが俺はやめねえ! お前が低俗と笑う『喧嘩』でお前を倒してやるッ!」


 何度立ち向かおうと【風界】は消えない。ただそこにあるだけで意志をへし折る高い壁。

 それでも一向に戦う素振りをやめないハザマ。そんな暑苦しい敵に、ルインフォードは厄介な羽虫にまとわりつかれたような苛立ちが募っていく。

 何が目的なのか? そんな攻撃をしていても【風界】は解除されない。向こうもそれは分かっているはずだ。

 ではなぜやめない? ただ「諦めない」というだけでは説明がつかない気迫だ。まるで何か、『別の目的』が達成されるのを信じているかのような……。

 

「ぐ、ごはァっ……」


 奴はこうして何度も地に転がっている。早くも肩で息をしているし、このままやっていても埒が明かないのは明白だ。


「……はは、は」


 それでも奴は、笑っている。

 笑っているのだ。


☆★☆


「なあ、あいつ大丈夫か? 全然攻撃当たってねえぞ」

「ルインフォードとかいうやつが強すぎて、手も足も出てないって感じだよな」

「おーい! そろそろ決めてやれよ竜人の兄ちゃん!」

「まったくだぜ。見てるこっちが可哀想になってきた」


 観客たちは、口々にそう唱えた。

 強い者が一方的に蹂躙する試合は見ていても楽しくない。結果が分かりきった試合ほどつまらないものはないからだ。


「ハザマ……」


 会場のムードは既にハザマの敗色濃厚。当事者でない観客たちからしても、火を見るより明らかな戦況だった。

 それは…………旅団の僕らから見ても同じで。


「っ、悪い空気だな……」


 僕は思わず呟いた。

 会場全体がルインフォードの勝利に傾いている。この状況では勝てるものも勝てない。なんとか断ち切らねばならないが――果たして。


「策は無いのか、ハザマ……ッ!」


 この戦いは、もはや単なる武闘大会一回戦ではない。相手は『理想郷委員会エル・ドラド』。この国を脅かす敵だ。ただ負けて、残念でしたで終えることはできない。それくらいの意味を持つ戦いだ。


 その重大さを知っているのは数名。別行動中だが、この会場のどこかにジンとユリス、そしてユリスの両親もいるはずだ。彼らに報告をしに行きたいところだが……。


(今、奴らの動向から目を離すのも怖いんだよな……)


 今は大人しくしていても、次の瞬間には暴れ始めるかもしれない。そうなればこの場にいる数万人の観客の命が危ぶまれる。

 もしそんなことになったら、真っ先に飛び出さなければならないのが僕たちだ。最大限の警戒をしてもまだ足りないくらいの気持ちでいなければならない。

 だから、僕らはここを動けない。

 今この状況をどうにかできるのは、あの場にいるハザマとメイだけなのだ。


「……頼む、ハザマ。勝ってくれ……っ!」


 逆境。今は彼らを信じることしかできない。

 しかし、そんな歯軋りしたくなるような空気の中。

 それでも真っ直ぐに彼らを見据える少女がいた。


「──逆に言えば、どれだけ周りが無理だと嘆いても、私たちだけは信じてあげることができる」


 アトラは、そう言って手すりから乗り出して。


「頑張れええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっっ!!!!」


 声を張り上げた。


「あ、アトラっ!?」


 突然のことに、僕は面食らってビクッと跳ねてしまう。


「あなたも知ってるでしょう? ──いや、あなたはきっと私よりも詳しく知っているはずよ。ハザマ・アルゴノートは、誰よりも諦めが悪くて……そして、世界一の剣士になる男だってことを!」


 アトラはニコリと笑って、僕の手を取る。


「さっ、応援しましょう! きっとそれが、私たちにできる唯一のことで、でもそれこそが何よりも大きな力になるはずだから」


 そして、そのままグイッと引っ張って僕を立たせた。


「…………」


 僕は改めて思い知らされる。

 自分だってあれやこれやと悩みを抱えている──でもそんなことは今は関係ないと。そうやって笑えるのがアトラ・ファン・エストランティアの『強さ』なのだと。

 曇りなき瞳に吸い込まれそうになる。僕は一瞬、その美術品のような美しさに飲まれてしまった。


「あ、あれ? 私、おかしなこと言ったかな?」


 冷静になったからか、アトラが軽く頬を紅潮させ、手で押さえている。

 強気な彼女と、年相応な彼女。そのギャップがとても魅力的な少女だ。ずっと眺めていられる。


「な、何か言ってよ! 恥ずかしいじゃない!」

「ごめんごめん。……アトラの言う通りだ。僕らが誰よりも彼らのことを信じてあげなきゃいけない。それが『仲間』だよね」

「うん! 信じましょう──あの二人を! あの時は撃退も四人がかりだったけど、私たちだって成長してる! それを見せつけてもらいましょうよ!」


 僕らは頷き合う。

 何と声をかけるか。僕は数秒悩んで、決めた。


「ハザマァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」


 僕の心の軸。常に中心にあるもの。

 折れそうになった時、支えてくれたのは何だったか。

 それを考えた時、自ずと答えは一つに絞られた。


 ──ならばこそ。


 今回は、ハザマと実際に旅をした画面の向こうの彼に(ことば)を借りようか。




「僕が! いや()が保証するッ! お前は、世界一の剣士になる男だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!!!!!!」




 そうだよな、ブライト。




☆★☆












 ──ああ。全くその通りだぜ、エイジ。












☆★☆


 突然の声援に、会場もどよめく。それに、発した二人がエイジとアトラとくればなおさらだ。


『観客席から一際大きな声援が送られましたっ! あれは──すでに二回戦進出を決めているアンドウ・エイジ選手と、エストランティア皇国より武者修行中のアトラ・ファン・エストランティア選手でしょうか! こちらで入手した情報によると、ハザマ組のお二人と彼らはお仲間同士で、現在エストランティア復興のために各地を回っているのだそうです!』

『仲間同士の熱き友情! いいなぁ、青春だ! 20歳以下の部ってのはこういうのか見れるから最高なんだ! ──そうだろ、みんな!』


 解説レオの煽りに、会場の空気も少しずつ変わっていく。


「……そうだ。そうだよ、あいつはまだ諦めてねぇ。きっと何か策があるんだ」

「本当かよ。もうヤケクソになって剣振ってるだけじゃねえのか?」

「あの気迫を見てまだそんなこと言えるのかよ! ちったぁ信頼してやれや! あの赤髪の兄ちゃんがかわいそうだぜ!」


『旗色悪し』から『半信半疑』程度まで持ち直したか。しかしそれでも──それでもまだ足りない。人々を信じさせるには、それに足るだけの()()が要る。何か、強烈に輝く()()が要る。

 それはある意味で、この世界の縮図だ。絶望という大きな壁を打ち砕くには、どれだけ小さくても希望が必要なのだ。人々にそれを見せられるのは──中心にいる彼だけ。


 さあ、ここから先はハザマの戦いだ。

 観客は万を超え、歓声は割れんばかり。舞台(おぜんだて)は整った。

 決める時は劇的に。それこそが目立ちたがり屋の流儀。

 故に──力を示せ、魂燃やす若人よ。

 皆が『逆転(そのとき)』を待っている。


「──ンなこと、言われ、なくても……分かってんだよ。そんなに……信用できねえか?」


 観客席で待つ仲間からの言葉に、ハザマは口元の血を拭いながら反駁する。そして──


「ズベコベ言わず黙って見とけ。これが俺の──『突破口』だ」


 ハザマがひとりごちた、その瞬間だった。


「…………ッ」


 ルインフォードの【風界】が、解除された。


「「「なっ──!?」」」


 会場全体がどよめきに揺れる。

 なぜ、なぜ、なぜ──そんな声があちこちから飛んでくる。

 ハザマは、ルインフォードに一切のダメージを与えられていなかった。それに、解除したタイミングでは彼我の距離およそ五メートル。ハザマが直接何かをしたわけではないのに、ルインフォードの【風界】は消えてしまった。

 否。まるでそれは、自発的に消したかのようだった。だからこその疑問、だからこその違和感。


「時間はかかっちまったが──これで、ようやくまともにやり合えるってわけだ」


 ハザマはニヤリと笑う。まるでその出来事を予見していたかのように。


 一体何が起きたのか。

 それは、観客席からでは分からない──この舞台にのみ起きていた『変化』が原因だった。


☆★☆


 時は少し遡る。『炎纏化バーニングソウル』の発動に際してだ。

 あの技を使うことを提案したのは、インカムから響く声──すなわちメイだった。


『ハザマ様。提案がございます』


 そんな枕詞とともに、メイは一つの作戦を示した。


『地面の砂埃および大気の流れから、【風界】が起こす乱気流の構造を九割がた把握致しました。長くなりますので、どうにか時間を稼いでください。戦いながら聞いてくださいませ』


 分断されてまともに力を振るえない──そう思われていたメイにも、できることがあった。それこそがこの『情報収集と解析』だ。


『まず一つ。あの乱気流は、ルインフォードの全身を完全に包み込む形で展開される球形の「回転」です。方向自体は不規則ですが、通るルートは常に一定。必ずルインフォードを中心とする「球の外面」を這うように風は吹いています』

「それに一体何の意味が……?」

『あの乱気流、以前は上昇気流だったものを改良したとのことですが。残念、まだ「抜け道(バグ)」が残っていたようでございます。いいですかハザマ様、()()()()()()()()()()()()()


 メイの考えはこうだった。

 あの風には出口がない。上昇気流のように、外から取り入れた風をどこかに放出するのではなく、風の流れが一つの球として完結している。

 一方向を向いた矢印がかつての【風界】だとすれば、今の【風界】は矢印の先頭と尻尾がつながっている状態だ。風はそこをグルグルと回っている。


『──そこで、ハザマ様の「炎纏化バーニングソウル」です。常に滞留している風を、ひたすら外側から熱するのです。出口がない以上、熱は放出できない。常に蓄積されていくと思われます。もしそれに気づいた敵が熱をどこかに放出しようとしたのなら、私が合図するのでそこで叩いてください。かつての上昇気流型が持つ弱点の通りに』


 つまり、メイは乱気流型【風界】をハザマの『炎纏化バーニングソウル』で熱し続けることで、【風界】の内側を灼熱のサウナ状態にしようと考えたのである。

 進化を経たことで、【風界】は確かに以前よりも壁としての役割を果たすようになった。その代わりに浮き彫りとなった問題点が、今回の攻略法だった。


 例えば、パソコンには通気口がある。パソコンは、様々な処理を行うほど内部の熱は高まっていく。特にCPUやハードディスクドライブといった部品はデリケートだ。だからこそ排熱のための通気口があり、空気を循環させるファンがある。

 しかし、埃やゴミが溜まって通気口を塞いだり、経年劣化でファンの動きが鈍くなっていたりすれば、内部に熱が滞留する。そうすればパソコンは次第に調子を狂わせていき、やがて──故障するだろう。

 メイの作戦とはすなわち、これと同じことを起こすということだ。

 逃げ道を失った熱が【風界】の内側に滞留し、際限なく温度が上昇していく。いくら敵が人間を超越した肉体を持っていようが、灼熱のサウナに入りながら戦うことはできないだろう。


『もちろん、生半可な火力では意味がありません。あの男が耐えられないほどの──限界を超えた火力が必要です。いかがですか、ハザマ様』

「……ハッ、それ以外に方法が思いつかねえんだ。やるしかねえだろ」

『それでこそハザマ様です』


 ハザマは口角を上げた。

 そして、数十メートル離れた場所で、メイは一つ頷いた。

 二週間に及ぶ訓練が互いの理解を深めた。故に導き出された『光明』であり、これこそが彼らの『勝算』だった。


『……この程度のことしかお力添えが叶わず、申し訳ございません』

「気にすんなって! そっちの女を足止めしてくれているだけでも大助かりなんだ。その上作戦立案までこなしてくれるんだ。──これ以上ない、『仲間』だよ」

『そう言っていただけると救われます。ですが、私個人としてはここでは終われません。なので――』


 メイはハザマに一つの作戦を提示した。それにハザマは一つ頷き、各々の戦闘へと戻っていく。


 ──そして、時は冒頭に戻る。ハザマは『炎纏化バーニングソウル』を発動、限界まで熱を高めて()()()()()()。時には自分の心情を語る、なんて時間稼ぎすらも利用しながら。


 ルインフォード自身に【風界】を解除させる。この思考は、おそらくエイジにはなかったものだ。

 最近は減少傾向にあるが、それでもエイジはゲーム知識をベースに考えてしまう癖が抜けきらない。やり込んだプレイヤーであるほど、「ゲームのキャラクターは一定の思考ルーチン以外の行動は取ることができない」という前提条件を捨てさせるのは難しくなる。

 それに加えて、『風界は残存体力70%を切らなければ解除することはできない』という事前情報、あるいは固定観念が邪魔をしてしまい、体力を無視して敵に解除してもらうなんて考えは出てこないだろう。


 すなわちこれは、現地人だからこそ生まれた攻略法──アンドウ・エイジにはできない戦い方だ。


☆★☆


 流れが、勢いが来ている。

 誰もがそう思った。実況も、観客も、旅団の仲間たちも、そして当人たちですら。


 では、竜狼は。

 ルインフォード・ヴァナルガンドは、何を思ったのか。


「──鬱陶しい」


 対するルインフォードは、口ではそう言うものの、至って冷静だった。

 自分が【風界】を()()()()()()()()()を理解している。そして、改良した自らの守りはそれでも完全でなかったことを受け入れている。

【風界】は無敵の盾ではない。あの力なき人間が解除してみせるほどなのだ。いくら改良を加えたからといって、破られることがないなんて微塵も思っていなかった。

 つまり、ここまでは想定済み。どんなに弱い人間だろうと、()()()()()()()()()()()()()()()()()と考えた予想圏内(マージン)だ。

 ルインフォードは、人類の評価を上方修正した。故に焦る要素もなければ、困惑する理由にもならない。これくらいの芸当、アンドウ・エイジだってやってくる。


 だから冷静に。


 あくまで冷徹に。


 大海のように凪いだ心で冷酷に。


()()()()()()


 一言、告げて。


 未だ腰に収められたままだった五つ目と六つ目の刀を抜き放った。


 その刀は、たった一手自分の思い通りにいったからとつけ上がる猿を叩き斬るためのもの。

 そして、こんなくだらない『余興』はさっさと終わらせるという、ルインフォードの意思表示に他ならなかった。






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