第034話 メインヒロイン力
それから装備屋を回り、僕、ミスティ、ハザマの装備も一新。様々な追加効果が付与されて、序盤にしては優秀な装備たちをここで一挙公開・解説していく。
安藤影次
『写し身の閃剣』
鏡面のような輝きを持つ剣。光属性。
『ブロンズアーマー』
青銅を皮で繋いだ防具一式。魔法防御力が高い。
まずは僕。剣は光属性を選択。これは後々の戦闘を想定したものだ。光属性を弱点とする敵がいるので、そこを突く。
防具は魔法攻撃に強いもの。理由は簡単で、物理攻撃はある程度避けられるからだ。アビリティ【英雄の眼】の穴である範囲攻撃、つまり魔法系のダメージを減らす装備を選択。
ハザマ・アルゴノート
『紅蓮剣』
燃えるような緋色の刀身を持つ。火属性。
『紅甲冑・壱式』
獣の骨を加工して作られた装備。
【属性強化Lv.1:火】:火の属性値を小強化。
ご覧の通りの火属性特化。『三斬火』の溜め攻撃威力は基本属性値が高いほどよく伸びるので、この形に。
また紅甲冑は物理攻撃に強いタイプ。前線で耐えるハザマにはこの装備が最適解と考えた。
ミスティ
『疾双刃』
非常に軽い金属で作られた一対のダガー。素早さが向上する。
『蒼碧の旅装』
鮮やかな蒼と碧で織られた布で作られた軽装。描かれた魔法陣が魔力を底上げする。
ミスティの場合、明確に弱点があるためまずはそこを補う必要があった。すなわち魔力上限の不足だ。
大技が撃てる反面、連発ができない問題は先のルインフォード戦でもネックとなっていた。逆に言えばここを補えればさらに回転数が上がる、というわけでこの装備。もともとの強みである身軽さも引き出しつつ、大技を撃ってもらえるような組み合わせを構築。
アトラ・ファン・エストランティア
『星詠の長杖』
先端に星空を映したような美しい玉がはめ込まれた杖。会心率が高い。
【ラッキーブースト】ごく稀に超会心が発生する。超会心はダメージが3倍になる。
『夢見の羽織』
夜空のような深い紺色に染め上げられたローブ。魔法攻撃の速度が上がる。
【星の夢】装備アビリティ。夢詠シリーズを揃えると発動。会心攻撃の次に発動する魔法の消費MPを半減する。
さすがは魔法使いの街、魔法使い用の装備は優秀なものが揃っている。装備アビリティとは、決められた武器と防具の組み合わせによって発動するアビリティで、効果は強力なものが多い。【星の夢】もその例に漏れず、会心攻撃を得意とするキャラクターならば一気に回転力を高められる。
アトラの扱う雷系の魔法は会心率が高く、相性がいい。この世界で会心率──つまりクリティカルヒットの扱いがどうなっているのかは分からない。単純に「敵の急所を突きやすい攻撃」という扱いになるのか?
とにかく、装備の更新はこれにて終了。歩き通しで疲れたと嘆くメンバー(主にミスティだが)を慮って、日が落ちる前に宿屋へ向かった。
部屋もいくらか上等になった。狭い部屋に四人で肩寄せ合って作戦会議をしたあの日も忘れられない思い出だが、さすがにこう、男女混合一つ屋根の下は青少年的に色々と良くない感じがあるので、今回は二部屋借りた。
ハザマは部屋ですぐに爆睡し始めた。彼も何だかんだ、ルルーエンティから来て僕らに会って以降、気を休める時間がなかったはずだ。疲れは当然溜まっているだろうし、今は休ませてやりたい。
対する僕は、そのまま眠らずに再び街へと繰り出した。
夕刻。陽は落ちたが谷底の街は明るい。魔力灯がそこかしこで輝き、人々の生活を照らしている。
僕が訪れたのは坂を上った場所にあるアクセサリーショップだった。アクセサリー系装備は高価なので、メンバー全員に持たせるならばこの街を基点にもう少しお金を稼がなければならないが……一人分ならば買える余裕はあるだろう。
ということで、僕は店内を物色する。現実世界では見たことないような色の宝石が使われており、どれも華やかで美しいものばかりだ。僕の美的感覚が優れているかどうかは怪しいが、どれもアトラに似合いそうなものばかりだ。
──そう。僕がここに来たのは、アトラにプレゼントを贈るため。
安直だがそれくらいしか思いつかなかった。
品揃えを見る。じーっと眺めて、アトラが付けている姿を想像する。
「……」
分からない。どれも似合うような気がする。結局のところアトラはお姫様なので、滲み出る高貴さでどんなアクセサリーともマッチしてしまう。と思う。
「……」
分からない。いっそ性能で選ぶか? いや、僕はさっき、それで失敗したんじゃないか。ちゃんと彼女の気持ちを、アトラのことを考えて選ばなければ……。
「そんな梅干しみたいな難しい顔して、どうしたんですか?」
そこに現れたのは。
「ミスティ!? なんでここに?」
買ったばかりの蒼と碧の旅装を纏った少女が、そこに立っていた。
ニヤニヤと意地の悪そうな笑みで寄ってくるミスティ。目的は……僕をからかうことか。
「早速プレゼントでご機嫌取り、ってところですか」
「悪いかよ! それくらいしか思いつかなかったんだ!」
「いや、効果的だと思いますよ。女の子は誰だって、アクセサリーをプレゼントされたら嬉しいものです」
「そういうもんなのか」
「そういうもんなのです」
「……」
「……」
「そんなにじっと見られると選びにくいんだが」
「お気になさらずー。私は何を選ぶのか興味があるだけなのでー」
僕が品定めをしている間、ジロジロニヤニヤと様子を伺ってくる銀髪の少女。邪魔で仕方ない。しかも、僕が商品を手に取るたびに「ほぉん?」「へえ~」だの言ってくる。
「何か言いたいことがあるんなら直接言ってくれないか……」
「いいえぇ~? 私はエイジさんが何を選ぶのか注目してるだけですよぉ」
このちょいウザ銀髪ロリ神様、戦闘では頼りになるのだがこういうシーンではひたすらに邪魔なだけである。
「ええい、これにするぞ僕は!」
そんな横槍にもめげずに、僕は一つのアクセサリーを選び取った。
「それにするんですか?」
「何か文句あるか!」
「……」
先ほどまで意地の悪い笑みを浮かべていたミスティだったが、語気を荒げた僕を見てポカン、とする。やがて一度目を伏せると、再びニヤリと笑った。しかしその笑みは先ほどまでとは少し違い、素直さを持っていた。
「いいんじゃないですか? まあ、合格点としましょう」
「お前は何のポジションなんだよ」
「ええ? 監視役に決まってるじゃないですか。あなたがアトラさんに変なプレゼントをしないようにね」
「随分と信用がないな!」
「ありませんよそりゃ。何度も執拗にビキニアーマーを着せようとする男なんて」
「何度もってほどじゃないだろ」
「いえ、エイジさんは自分が思ってるよりもしつこい男ですよ」
「そ、そうかな……」
「なので、ちゃんと彼女のご機嫌を取ってくださいね」
「分かった分かった。ちゃんと渡すよ。気に入ってくれるといいけど……」
僕が選んだプレゼント。それは、花の髪飾りだ。
ピンクゴールドの鮮やかな色彩はきっとアトラの美しい金髪に映えるだろうし、花は彼女も好きなデザインのはずなのでこれに決めてみた。
「それで」
だが、ミスティはまだ何か言いたいことがあるようで。
どうせロクでもないことだろうと思いつつ耳を貸すと、
「私へのプレゼントはないんですか?」
「あるわけないだろ」
「そんなあ!」
「だいたいほぼ全ての移動を僕におんぶされて過ごした君に何か報酬が出るわけがなくないか?」
「エイジさんの背中はあったかいので好きです」
「じゃ、僕は行くから」
「待って! なんでそんな非情!? アトラさんの時との温度差!」
「僕の背中の温もりが何よりの報酬」
「ちょっと気持ち悪いですね」
「お前が言い始めたんだろ!」
ミスティと喋っていると会話の主導権を握られるような感覚があって非常にやりにくい。全部手のひらの上のような。
「うう、所詮私とあなたは背中だけの関係だったんですね……」
「大げさだな……」
ふざけたやり取りを繰り返しながらも、僕はプレゼントを購入し帰路につく。
「……」
──去り際に見えたミスティの横顔が、ほんの少しだけ寂しげに見えたのは気のせいだろうか。
僕が振り返った時には既に、彼女はいつものように何を考えているのかよく分からないニヤニヤ顔に戻っていて、その真意を知ることはできなかった。
『女の子は誰だって、アクセサリーをプレゼントされたら嬉しいものです』
プレゼントがもらえないのがそんなに悲しかったのだろうか? ほんの少しだけ罪悪感があった。
僕だって女の子が悲しい顔をしているのは見たくない。でも、彼女がこんな顔をするとは思わなかった。
……いや、それとも僕の見間違いか? そう思ってしまうほどに、彼女らしくない表情だったような気がする。
「どうしました?」
小首を傾げるミスティはしかし、何食わぬ顔でいる。そこに今さっきの面影はない。
「いや、なんでもない。一緒に帰ろう」
「私は他にも街を見て回りたいので、ここで」
「……そっか。じゃあな。暗くなる前に宿に戻ってくるんだぞ」
「もー! 子供扱いしないでくださいーっ!」
べーっと舌を出すその仕草はまさに子供のようだったが、突っ込めばまた何か言われるだろうと思い、あえて何も言わずに僕らはそこで別れた。
結局僕は、あの表情の真偽を知ることはなかった。きっと見間違いだろう。能天気なミスティに限ってあんな表情、するはずがない。忘れよう。
僕はアトラになんと言ってプレゼントを渡すか考えながら、宿への道を歩き始めた。
☆★☆
「すぅーっ、はぁー……」
深呼吸。
コンコン、と女性陣の泊まる部屋の扉をノックする。
「はーい」
中からアトラの返事。僕は一言、「エイジだ。ちょっといいかな?」と尋ねるが、それを聞いたアトラはなぜかものすごく慌て始めた。
「え!? あれ、ミスティじゃない!? ちちちちちょっと待ってって!」
『待ってって』って何だ? いや、可愛いので何でもいい。
「ご、ごめん。おまたせ」
しばらく経ってからおずおずと開いたドア。その向こうにはもちろんアトラがいたのだが……。
「あ、もしかして……」
髪はほんのりと湿り気を帯びており、頬は赤く上気している。上は薄手のキャミソール、下はホットパンツという、強烈にラフな格好。一目瞭然だが、アトラはお風呂上がりのようだった。慌てて着たらしく、少し肩紐がズレているのが……ものすごく背徳的だ。
「ほ、本当にお風呂が好きなんだね」
僕はその格好に当然の如くドギマギして、言葉も震える。なんとか間を繋ごうという僕の試みに、若干気まずそうなアトラも乗ってくる。
「ほ、ほら。外だとずっとローブにフードじゃない。蒸しちゃって、気持ち悪いの。でも、ここの宿はいいわね。ちょっと高かったけど、個室にお風呂が付いてるなんて」
この宿は現実世界のホテル顔負けの設備を備えている。ちなみに『エストランティア・サーガ』の技術レベルはどうなってるんだ、という疑問への回答としては「中世よりは遥かに高い」が正しい。科学が遅れている分、魔法技術の発展で技術レベルを底上げしている。とはいえ、現代日本クラスの設備があるのはマルギットくらいだろうが。
とにかく、アトラはそんな文明の産物たるお風呂を全力で楽しんでいたようであった。
「これからの宿探しも『お風呂付き』が絶対条件になりそうだな……」
「もちろん。三日以上お湯に浸かれなかったら私土になるから」
「それくらいお風呂が大切ってことだよね!?」
「そういうこと~」
先ほどのようなイレギュラーを除けば、アトラともスムーズな日常会話ができるようになってきた気がする。話し下手な僕だが、それなりの時間を一緒に過ごせば多少は前進するということらしい。
「それで、どうしたの?」
「あ、ああ。ええっと……」
「入って」と、部屋に招き入れてくれるアトラに従って、僕は足を踏み入れる。まだ仄かにシャンプーの香りが漂う室内に、ちょっとだけ頬が熱くなった。
「アトラ」
「ん?」
僕はかしこまって、後ろ手に隠していたその包みを差し出した。
「これは?」
「あ、開けてみて」
小さな包装を解いていくアトラの様子を固唾を飲んで見守る。どんな反応が来るか。心臓が破裂しそうだ。
だが、そんな心配は杞憂だったようで。
「わあ……!」
花の髪飾りを取り出したアトラは顔を綻ばせた。
「これ、どうしたの?」
「ええと、あの、そ、そう! これは『幸結いの花飾り』って言って、装備じゃなかなか上げづらい能力値を伸ばす効果があって! アクセサリー系は全体的に希少な効果を持ってるものが多いんだけど、これは特に有用なステの──」
「何言ってるか全然分かんないわ!」
「あ……」
そうだ。こんなことをアトラに解説しても仕方ない。もっと言うべきことがあるだろ、僕。これを買ったのは何のためだ。この髪飾りを選んだのはなぜだ。
「……君に、似合うと思って」
ぼそりと、僕が呟いた言葉に。
アトラはほんのちょっとだけ頬を染めて、
「……えへへ。嬉しい」
とだけ返した。
「よ、良かった……」
安心感で胸が満たされて、後ろへ倒れそうになる体を必死に支える。いや、本当に良かった。これで男としての筋は通した……か。
「でも、何で突然?」
「いやほら、昼間に変なこと言っただろ? そのお詫びというか……」
「ああ、なんだ。そんなこと。全然気にしなくていいのに! 私も気にしてないし!」
「ええ!? だってめちゃくちゃ怒って──」
「……私があの程度で根に持つほど狭量だと思われてることの方が怒れるんだけど?」
「せ、聖母……」
「もう、なにそれ」
ため息混じりの笑い話に昇華せしめた彼女は、やはり聖母という他ない。これは間違いなく全オタクが惚れた。
よく考えると、プレイヤーの誰もが恋をした『アトラ・ファン・エストランティア』と僕だけが実際に会話できるというのは、ものすごい優越感だ。醜い感情を隠さずいうのならば独占欲が満たされる、というか……。
そう思えば思うほど、目の前のアトラという少女が愛おしく思えてしまう。彼女と共にあれるということに、喜びを感じる。
「ねえ、付けてみていい?」
はやる気持ちを抑えきれないといった様子のアトラに、僕はもちろん頷く。
「んしょ……」
包装から髪飾りを取り出したアトラは、備え付けの椅子にちょこんと座って髪をいじる。早速付けてみるが、
「……あ、ちょっと曲がってる」
僕が指摘するが、自分ではよく分からないらしく困っている様子だ。
するとアトラは目を閉じてこちらを向く。いきなり何か、と僕は硬直してしまう。
「ん」
それだけ。引き続き硬直していると、片目を開けて再び、
「ん!」
「え、あ……」
どうやらその「ん!」は、「ん!(私じゃよく見えないから、あなたの手で直して!)」ということらしかった。わずかに顎を上げてこちらへ顔を差し出すアトラ。すごく無防備、というか──この顔いわゆるキス待ちの顔とも取れるのでは!?
「~~~~~~!」
そう思った瞬間、顔面が『三斬火』溜め3を食らったかのように熱くなった。
きめ細やかな肌、艶めく唇、長いまつ毛、すっと通った鼻梁……仔細に観察できてしまう。その表情に吸い込まれていく──
(うわあああああああああああああああああ!?)
本当の役目を忘れてヤバい世界にトリップしてしまうところだった。僕はぶるぶると顔を振って気を引き締め、震える手をアトラの髪に伸ばした。
「ぁ……」
さらり、と肌触りのいい髪が揺れる。きちんとお風呂で手入れされたのであろう、わずかに濡れたその髪が艶を放つ。
「……」
金色。セミショートに切り揃えられた金糸が、室内の明かりを宝石のように反射する。
それは、言葉を失うほどに美しかった。まるで、一本一本が意味を持って配置された美術品のように輝いている。
息を飲むとは、このことだった。
「ふぅ…………」
ただ髪飾りの位置を直すだけなのに、僕はようやくの思いでその任務を全うした。心臓はもう破裂寸前だ。
「……よ、よく似合ってる、と思う」
「ん、ありがと♪」
全く気にしていない、というか意識していない風なアトラに、僕は複雑な感情を乗せたため息を零さざるを得なかった。
「じ、じゃあ僕はこれで!」
僕にできるのは、急いでこの気まずさから逃れることだった。ギギギ、とロボットのような動きをしながら、僕は慌てて部屋を後にする。
……ダメだ。アトラとの会話も慣れてきたかと思ったが、ふとした瞬間に見せる『ヒロイン性』とでも言うべき力に触れると、僕はすぐに参ってしまう。
「……ずるいなぁ、メインヒロインは……」
僕は負け惜しみのようにそう呟いて、男部屋へと逃げ去った。
☆★☆
『幸結いの花飾り』
幸運が5上がる。
TIPS 魔法について①
ここでの魔法は一般的に言うところの超常現象全体を指す魔法であり、エストランティア・サーガ内における『技』三種(魔法、魔技、術技)の一種である『魔法』とは括りが異なる(ゲーム内の魔法は制作サイドが勝手に決めた名称であるため、円環大陸における『魔法』とは関係がない)。
円環大陸には魔法が広く浸透している。魔法は程度の低いものであれば、特に訓練をすることもなく庶民にでも扱うことができる。人々は魔法を使ってさまざまな技術を生み出し、生活を豊かにしている。
その仕組みは、体内を巡る血液の循環(私たちの世界で言うところの『気』に近いもの)を円と捉え、円の持つ無限性からエネルギー(魔力)を取り出し、超常現象を現実に再現するというもの。
魔法行使の際、使用者から溢れ出た余剰魔力は光円を描き、独特の文様(魔法陣)となる。
もしくは体外に存在する円(自然、人口を問わない)を触媒とし、接触を用いて魔力を送り込み、超常現象を現実に再現する。
人々が使う魔法による魔法陣は基本的にその場で消失してしまうが、現物としてこの世界に刻み込めば、効力を世界に留めることができる。
例えば、『小さな爆発を起こす』という魔法を編み出したとする。それをそのまま行使すると、その場で爆発が起きて終わってしまう。しかしそれを魔法陣に記すことで、条件を付与して爆発のタイミングをコントロールしたりすることができる。『この魔法陣を誰かが踏んだ時』『小さな爆発を起こす』などといった形で、魔法そのものが持つ効果に条件を付与することができる。簡単に言えば、その魔法をトラップ化できるということである。
プログラミングについて簡単な知識がある方ならば、魔法陣を描くことはつまり『if文を記述する』ということだと言えばさらに分かりやすいかもしれない。
円環大陸では、人々の生活を豊かにするために様々な場面で魔法が利用されている。
例えばマルギットの街にも点在する街灯。現在円環大陸で広く普及している汎用型魔力灯は、魔法陣によるトラップ化の応用で、魔法が込められた球体を光らせる方式である。その球体には『日中得た光を溜め込み、辺りが一定の暗さになった段階で放出せよ』という命令が組み込まれている。魔法陣としてそれを球体に刻み込むことで、日の差す場所であれば理論上永久に光り続ける街灯となるのである。
もちろん、無から有を生み出すことはできない。こういった装置を作る場合、魔法によって行えるのは『命令』のみである点に留意しなければならない。エネルギー自体は別途用意する必要がある。魔力灯の場合は自然の力、つまり太陽光を利用する形でエネルギーを賄っている。
魔法についてはまだ語っていない部分も多く存在する。エイジたちが一つ深い次元の情報に触れたとき、再びこの場で魔法について解説する。




